2009.12.22

『スペース1999』

地球の衛星軌道を外れた月!
そこに残された人々の運命は!?

1974年から2シーズン放送されたイギリス生まれのSF特撮ドラマ『スペース1999。 当時、放送されていた期間は短いけれど、“月が地球とおさらばし、宇宙を彷徨っちゃう”という突飛で発想力豊かな舞台設定、リアリティがありそう(!?)に見せることに長けた緻密なメカデザインなどが、当時の子どもたちの心をキャッチ。
日本で放送された1977年、映像を見た子どもたちに「つ、月が地球から離れて行く~!?これは一大事だ!」っと、椅子から落ちんばかりのインパクトを与えたのはいうまでもありません(ほんとか!?)。でも、この番組を見た晩は、空を眺めて月はちゃんとあるかなーって確認しちゃった人、きっといるはず。この番組の独特の世界観は、今でも“伝説”としてに根強く語り継がれているんだから!


では、ここで簡単にストーリーを紹介しちゃいましょう。タイトルからわかるように、舞台は1999年の“月”。すでに人類は月面に“ムーンベース・アルファ”なる基地を作るまでに進化。基地は、高い自給自足能力を兼ね備え、300人以上のクルーが勤務している。一方で、核廃棄物の貯蔵も行われていたが、それが突然爆発! 基地自体は無事だったものの、その勢いで月は地球の周回軌道を外れてしまい、宇宙を彷徨うという事態になってしまう。そして、“ムーンベース・アルファ”に残されたクルーたちは、新たな安住の地を求めるべく未知の宇宙の旅を始める…。
そんなハチャメチャな運命に立ち向かうクルーたちを仕切るのは、マーティン・ランドー演じるコーニッグ指揮官。リーダーシップにあふれた頼れるリーダーだけれど、基地に就任した途端に月もろとも宇宙に放り出されるハメに…。ある意味、可哀想な人です。
そんな彼に常に寄り添うのは、ブロンド熟女バーバラ・ベイン演じる医療担当ラッセル博士。2人は互いに惹かれ合うのだけれど…ん? この2人、どこかで見たような…。そうそう!あの『スパイ大作戦』でも共演してる! 実は、私生活でも夫婦だしね(後年離婚しているけど)。だから2人の演技には妙にリアリティがあり、イチャイチャするシーンを見せられた日には、あんなにドキドキさせられたのね~と、今思えば納得するわけで。
そして、そんな彼らを支える科学者バーグマン教授の存在も忘れちゃいけません! 眼光鋭いこの教授、地球一の科学者らしいんだけど、とにかく心臓が弱い…。未知の生物とか宇宙の電磁波とか何とかで、しょっちゅう心臓が苦しくなっちゃうんだから、見ている方まで胸が苦しくなる気がしたもの…。そんなクレームがあったのかなかったのか、シーズン1しか登場してませんねえ。ちなみに、そんなバーグマン教授を演じているのはバリー・モース。最近また放送され始めた懐かしのドラマ『逃亡者』のジェラード警部役の俳優です。モノクロからカラーに変わったせいか、当時は気付かなかった人も多かったかも(そんなことないか)。

そして、このドラマの魅力は、突飛な設定、個性的なキャラだけじゃない! 注目してほしいのはズバリ“特撮”です。もしかして、“イギリスのSF特撮”と聞いてピピッときました? それは、鋭い。そう、『スペース1999』は、あの『サンダーバード』を手がけたイギリス人プロデューサー、ジェリー・アンダーソンが手がけた作品なんです! 
コンテナを持ち運んで交換することで色々な用途に応用できる『スペース1999』の宇宙船、この感じ(特に運転席あたり)はサンダーバード2号と一緒!? どことなくデザインも似ているし…。
とにかく月面基地や宇宙船などのデザインは洗練されていてカッコイイ! たくみにリアリティを演出したそのクールな趣は、子どもから見ればまさに“オトナの魅力”。今にしてみれば、色数が少ないから落ち着いて見えていただけかも…、という気もしないでもないけど。

そんな魅力たっぷりの『スペース1999』、実は残念ながら(?)優れた独特の世界観はシーズン2で見事に崩されることになります。シーズン1以上にアメリカ市場を意識したせいか、登場人物の服装や全体的な雰囲気が派手になり、これまでの登場人物がいつの間にかいなくなり(バーグマン教授はどこに!?)、やけに戦闘シーンは激しくなり…。あまりの変化にガッカリさせられた視聴者も多かったのではないかというのが正直な感想。これではシーズン2で終わってしまうのも仕方ないかも…。残念!
けれども、そんなシーズン2にも1つうれしい誤算が。それは、どんなものにも変身できる科学部門クルーで異星人の女性マヤの存在! 怪獣みたいな異星人に変身するときは、「今晩はお風呂やめとこうかな…」と子どもを怖がらせたものの、子ども(特に男子)の胸をときめかせたことも事実。異星人役特有のキテレツなメイクだったけれど、“奇麗”なものは“綺麗”だものね。

最後に、日本版独自のエンディングテーマにも触れておきましょう。「ムーンベース・アルファは~♪」と歌う、ちょっと、いやだいぶ違和感があるこの曲、歌っているのは何を隠そう、金八先生で社会科の先生役でおなじみ、髭面の上条恒彦! それにしても、昔は海外モノを日本で放送するとき、独自の曲や歌詞を付けたテーマ曲が作られていたことがよくあったなぁ。どれもこれも、ちょっと無理っぽい感じがしたけれど、いまだに思い出すってことは、意外と名曲揃いだったのかもしれないと思う今日この頃です。


『スペース1999 [8枚組] コレクターズボックス1stシーズン -デジタルニューマスター版-』DVD発売中!
【発売・販売元】東北新社
【価格】\ 39,900(税込
(C)ITC 1975. All rights reserved. Licensed by Granada International Media ltd.

<CAST>
マーチン・ランドー(『マジェスティック』・『エド・ウッド』)
バーバラ・ベイン(『スパイ大作戦』)
バリー・モース、ニック・テイト、プレンティス・ハンコック、ジーニア・メルトンほか

<STAFF>
製作: ジェリー&シルヴィア・アンダーソン
撮影: フランク・ワッツ
音楽: バリー・グレイ
特殊効果:ブライアン・ジョンソン、ニック・アルダー

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2009.11.30

『アボンリーへの道』

『赤毛のアン』のアボンリー再び!
セーラとアボンリーの子どもたちに元気をもらおう!

舞台はカナダのプリンスエドワード島。とくれば、だれもが『赤毛のアン』シリーズを思い浮かべるはず。そう、このドラマは『赤毛のアン』の作者、ルーシー・モード・モンゴメリの『ストーリー・ガール』といった作品をもとにした『赤毛のアン』後のアボンリーを描いたTVドラマ!なのだ。

カナダのCBCで1989年から1995年のシーズン7にわたって放送された『アボンリーへの道』は、世界140カ国で放送され、日本でもNHKで放送されていたので記憶にある人も多いことだろう。
主人公は、セーラ・スタンリー。11歳のセーラは、カナダのモントリオールで父親とともに裕福な生活を送っていたが、ある日、父親が濡れ衣をかぶせられて投獄されることに。というわけで、セーラが幼いときに亡くなった母親ルースの故郷、プリンスエドワード島のアボンリーに住んでいる親戚の家に引き取られることになる。

ここからが本編。アボンリーに待ち構えているのは、セーラの母ルースの姉、へティ・キング、末の妹のオリビア・キング、そして弟のアレック・キング一家。キング家の対面を保ち、独身を貫くへティ・キングは、セーラの父親ブレア・スタンリーのことを妹ルースを死なせた男として毛嫌いしている偏屈者。『アボンリーへの道』は、その偏屈おばさんの住むローズ・コテージに引き取られることになってしまったセーラ・スタンリーの成長記録でもある。
といってもドラマの主役はアボンリーの人々であることが多く、こういうファミリードラマでは珍しい一話完結のプロセジュアル・ドラマだったりもする。登場人物も『赤毛のアン』でおなじみのマリラ・カスバートやレイチェル・リンド夫人、ステーシー先生までもが登場。なにより、セーラの従兄弟たちや小学校の子どもたち、村の人々がたくさんでてくるので、アボンリーのイメージがより描きやすいという、小説『赤毛のアン』シリーズファンにとっては、垂涎のドラマでもあるのだ。

では、主な登場人物を紹介しよう。
まずは子どもたちから。
モントリオールで父親、乳母に甘やかされていた生活から一転、厳しいへティおばさんたちと共に新しい生活を始めたセーラ・スタンリー。見た目は、そう『大草原の小さな家』のいじわるネリーってところだけど、ところがどっこい性格は大違い。誰に似たのかお節介焼きでアボンリーの人々の役に立とうと要らぬお世話をしてしまうことしばしば。そのすべてがセーラの善意でなりたっているので、アボンリーの人々もセーラにはついつい微笑んでしまったり。いや、見た目が小生意気なお嬢様風ってだいぶ損してると思うけどそれは最初だけだったりする。演じるのは、カナダ育ちのサラ・ポーリー。
そんなセーラ・スタンリーにライバル意識を燃やしているのが、セーラよりも2、3年上の従姉のフェリシティ・キング。セーラの伯父アレック・キングの長女であり、責任感が強い。そのため、しょっちゅう弟のフェリックス・キング、従妹のセーラとぶつかりあうけれど、基本、よい子。セーラへの嫉妬を隠さず、反省しあうあたり、フェリシティのよい子度がはかりしれるというもの。
その弟、フェリックス・キングは、“男の子”だねーとしかいえない男の子。いたずらからいじめまで、やることなすこと、“男の子”なのだから。このドラマは、セーラよりもフェリックスが主役だよね、といいたいくらい、いい味をだしている、セーラの従弟。
フェリシティとフェリックスには、セシリー・キングとダニエルという妹と弟がいる。そう、アレック・キングファミリーは子ども4人の大家族なんですね。シーズン2で生まれたばかりのダニエルはともかく、この従兄妹たち、いろんなことをやらかします。この子ども“チーム”の成長は、このドラマの「売り」でもあります。

そして、大人たち。
なんといってもヘティおばさんことヘティ・キング。教師で独身。厳格でありながら、ちょっとお間抜けなところが。自分の気に喰わないことには必ず「へん!」「ふん!」「はっ!」という擬音(吹き替えだけど)が入るのがおかしい。セーラにとって、母親のような存在で、「今年の母親」に選ばれたことも。
ヘティのローズ・コテージの隣に住むのがキング家の長男アレック・キング。姉のヘティには頭が上がらないため、たまに妻のジャネットが不満をもらすことも。子どもは、フェリシティ、フェリックス、セシリーにダニエル。キング農場を経営し、アボンリーでは一目置かれる存在。
ヘティと暮らしている叔母のオリビア・キングは、セーラの姉のような存在。ヘティに遠慮していたけれど、セーラの影響?を受け、新聞社の記者、そして経営に携わるように。これまたセーラのおかげで引っ込み思案だけど天才肌のジャスパー・デールと結婚にいたる。いや、これも心温まるいいエピソードなのでお見逃しなく。
もうひとり、注目したいのが、ガス・パイク。
缶詰工場や養豚場で働く無教養な労働少年だったのが、教師ヘティおばさんのおかげで見る間に好青年に成長! もともと頭がよかったんだよね。バイオリンもうまいし。ガスは、セーラたち子どもチームと大人の間をつなぐような役割といえるかな。このガスとフェリシティのドラマは、最後まで見届けてほしい…。

ま、これらの登場人物以外にアボンリー村人総出演(注:アボンリーは架空の村)なドラマなので、ベストセラー小説『赤毛のアン』シリーズよりも、アボンリーってこんな村なんだっていう発見がたーくさんあること間違いなし!

それだけではない、これまでモンゴメリーファンが抱いていたプリンスエドワード島、カーモディ、シャーロットタウンなどの風景が次々にでてくるのだから、たまらない。もちろん、生活スタイルだって原作どおり、19世紀末から20世紀初頭のもの。
お嬢様だったセーラも、アボンリーではアイロンがけや洗濯、食事の用意などなんでもできる女の子になったんだからたいしたもの。細部の小物にまで手を抜かない演出が心憎いのです。

こんなファン感涙のドラマを製作したのは、カナダのサリバンフィルムズ(現在はサリバン・エンターテインメントに社名変更)。『アボンリーへの道』以前には、ミニシリーズのTVドラマ『赤毛のアン』を製作していたこともあり、アボンリーを描く“実績”がある。また、『赤毛のアン』と同じキャストがこの『アボンリーへの道』にも出演しているというからチェックしてみては。

もうひとつ、注目はゲスト・スター。
けっこう渋い面々が登場しているので、要チェック。
たとえば、映画『三銃士』のマイケル・ヨーク。ガス・パイクを支える灯台守(元船長)の役を好演している。そしてクリストファー・ロイド(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)にクリストファー・リーブ(映画『スーパーマン』)。そしてピーター・コヨーテ(『4400 未知からの生還者』)、マデリン・カーン(映画『ペーパー・ムーン』)。意外な役で出演しているので、細かくチェックしてほしいところ。

そうそう、この『アボンリーへの道』がやっとDVD化されたんです! 
最近こういうちょっと前の名作ドラマが次々とDVD化されている傾向、海外ドラマファンにとってはうれしいことこのうえない! しかも当時の吹き替えあり。個人的には、江角英明さんのアレックに感動。
はやくシーズン7までDVDで一挙に見たいもの。子どもチームの成長に、きっとみなさん、驚かれるはず!
さあ、休日は『アボンリーへの道』のDVD鑑賞でぜひともなごみましょう!

 

>>関連記事:【コラム/タイムマシンde海外ドラマ】 『大草原の小さな家』

>>関連記事:【コラム/海外ドラマを100倍楽しもう】『リ・ジェネシス』『ブラッド・タイズ』…ひと味違うカナダ発ドラマたち

 

『アボンリーへの道 SEASONⅠ』DVD-BOX 2009年9月25日(金)発売!
【価格】 \19,740-(税込)
【収録内容】4枚組(第1話~第13話収録/計約582分)
【発売元】NHKエンタープライズ

(C) Sullivan Entertainment International INC

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2009.10.29

『アメリカン・ヒーロー』

UFOと遭遇した高校教師が 特殊能力を持つスーツに身を包み大活躍!

1981年から3シーズン放送され人気を博したSFドラマ。物語は、平凡な高校教師の主人公ラルフ・ヒンクリーが、ある日UFOと遭遇するところから始まる。そこで、地球を救えと特殊能力を持つスーツを受け取るのだが…。単に悪を懲らしめるスーパーマン!みたいなアメコミ・ヒーローものじゃありまへん! どこか“ビミョー”な雰囲気が充満した、何ともゆる~い等身大・ヒーローものなのだ!

このドラマでは、とにかくラルフが着込むスーツに注目したい。いや、注目せざるを得ない! 真っ赤な色でマントも付いてて飛べそうだなぁ~ってところじゃないよ! 観る人すべてを釘付け状態にする、漢字の「中」に似た胸のマーク! とにかくインパクト大で、ヒーローものにこんなのあり?と思いたくなるデザインなのだ。何か意味があるのかと妄想も広がるというもの。しかし、実際は不可思議なイメージを与えたかっただけで、制作側としては特に意味はなかったらしい。それを聞いたとき、え?そんなもの?とガッカリ…。とにかく! そんな微妙なデザインにも注目したい。

このスーツ、実は取扱説明書付(ヒーローのスーツなのに!)。UFOと遭遇した際、一緒に受け取ったのだが、混乱し焦ったラルフは取扱説明書を無くしてしまう。本当は、空を飛べたり、透明になったり、火を出したり、その他にも色々と凄いことができるスーツなんです。説明書を読めば…。
だけど、読む前に無くしちゃったから、どんな能力を持ったスーツかわからない。わからないんだけど、とにかく事件現場に急行し、何とか解決しようとするラルフなのであります。それで何とかなるところがすごい…。

回を重ねるごとに、何かの拍子にスーツの能力を発見していくのだが、発見したとしても、何となく中途半端で、そうじゃないだろう…と、突っ込みを入れたくなることも多々…。
たとえば、空を飛ぶ能力。詳しい使い方がわからないから、凧の紐が切れた状態みたく、中途半端にフラつきながら飛ぶ。見るほうは、テレビに向かって大丈夫?と心配になってしまうのだが、このドラマの魅力の一つは、こうしてラルフと一緒に、ヒーローの能力を発見していく過程にある。まるでゲームのように、一緒に経験値を上げていく感覚…。だから、感情移入しちゃうんだろうなぁ…とシミジミ。

そしてこのドラマ、実は「UFO時代のときめき飛行」というサブタイトルがあった。これだけ読むと、意味不明でよくわからない。「UFO時代って何じゃい?!」とか「ときめき飛行って、何にときめくんじゃい!?」と、突っ込みを入れたくなる…。当時は意味不明に思ったが! 最近ようやく、80年代の空気をよく表現し、ドラマが持つ奇妙だけど、どこか“さわやか”な雰囲気を表現した良くできたタイトルだ…と思うようになった! 今だからこそだけど。

何が“さわやか”って、主人公ラルフ役が知る人ぞ知る、知らない人は知らない(?)ウィリアム・カットなのだ。あの70年代のサーフィン映画の名作「ビッグ・ウェンズデー」に出演しているカットは、見るからにさわやか。見るからにさわやかな人ってうらやましい…。
それは置いといて、ホラー映画『キャリー』でも、主人公キャリーとプロムに参加するナイスガイぶり爆発(最後が涙だが…)。あぁ、それなのに何故人気が爆発しなかったのか不思議だ。しかし、近年の水谷豊がそうであるように、ウィリアム・カットも、今後何かのドラマで再ブレイク!ってこともあるかも…と祈りつつ…。 

おっと、重大・重要なキャラを紹介し忘れるところ…。そんなさわやかラルフと偶然UFOに遭遇しちゃったFBI捜査官ビル・マクスウェルだ。スーツの秘密を共有し、事件解決に挑む役どころでドラマを盛り上げる重要な役。名前のとおり(?)真面目そうだけど、おやつ代わりにドッグフードを食べちゃったり、ときにラルフをからかい、よくドジったりと、見た目静かで渋いルックスからはちょっと意外に思う行動しばしば。その実、根は非常に真面目で正義を愛する熱血漢。彼のお陰で、手探り状態ながらもスーツの能力を解明していけるのだ。ひらめきや言葉等から少しずつ…。
演じるロバート・カルプは、その昔はドラマに多数出演する名脇役だった人。『刑事コロンボ』など当時のドラマを見ていれば、何かしら登場している名バイプレーヤー。どこかで観たような…と海外ドラマファンなら、誰しもが思う俳優である。最近では(そうでもないか)、映画『ペリカン文書』で大統領を演じた人…といえば膝を叩いてくれる…はず?

もう1人忘れちゃいけないのは、ラルフの恋人で弁護士でもあるパム・デビッドソン。実はラルフ、子どももいて離婚調停中の身なのであった…。そんなラルフの側にいて…そのままラブラブになってしまう2人…という関係。見ているほうも、そわそわしちゃう2人の行く末が気になって、気になって…。彼女、派手さはあまり感じられず、ハリウッド的な女優さんオーラがあまりないけれど、そこが良いのであります! 普通のお嬢さんって雰囲気が逆に日本男子のハートをくすぐったに違いない。ハッピーエンドになってほしいと思いつつ見ていた人間が少なくともここに1名…。

“スーパーマン”物語なのに、そんな登場人物の絶妙なバランスで展開するラブ・コメディでもあるドラマ、それが『アメリカン・ヒーロー』。なぜ、ドップリと楽しめたんだろうと当時を振り返ると…。思うに、富山敬さんや戸田恵子さんらの声優さんたちの吹き替えがピッタリとハマっているからこそ、楽しめた! 
最近の海外ドラマって、昨今のお笑い芸人やタレントが突然声優やってみました的なことが多く、ドラマを見る前にも~やめて~!と叫びたくなることが多々。合わない声でガッカリしちゃう。おすぎ風に言えば「もぉ~つねっちゃうから!」か? 違うか!?
とにかく、注目させるためには仕方がないのかもしれないが、そういうことをすればするほど、長い目で見れば海外ドラマの魅力が薄れ、むしろ離れていく気がするのだが…。という話をここでしても仕方があるまい…。 

閑話休題…。
最後に、ジョーイ・スキャベリー(Joey Scarbury)が歌う主題歌「アメリカン・ヒーローのテーマ~Theme From“Greatest American Hero”(Believe It Or Not)」を是非聴くべし! いわゆる一発屋的な人だけど、冒頭の静かに流れるピアノ、覚えやすい歌詞・メロディ、胸キュンもののサビの盛り上がり等々、AORが好きならきっと気に入ってくれる80年代を代表する隠れた名曲。しかも、さわやかだ!(もう、このドラマののコピーは“さわやかでいこう”で決まりだ!?) カーステでこの曲を聴きながらドライブデートにもってこい!そんな曲なのだ。 ついでにトリビア的?ミニ情報。この曲、マイケル・ムーア監督の『華氏911』で、ブッシュ大統領が登場するところに使われているとか。アメリカン・ヒーローのブッシュ…、好きです。いえいえ、ブッシュが好きなんじゃなくて、そんなムーア監督の皮肉、好きです。

さあ、あなたも“さわやか”80年代ドラマ、『アメリカン・ヒーロー』の世界にはまってみては?


■『アメリカン・ヒーローDVD-BOX』PART.1~5好評発売中!

発売・販売元:タキ・コーポレーション
(c) 1987 Stephen J. Cannell Productions, Inc.

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2009.09.30

『ジェシカおばさんの事件簿』

ジェシカおばさんの“ヤバイ”ほどのバイタリティがその理由!?
アメリカで長―く愛された本格ミステリー

1984年にアメリカでスタートしてから1996年にファイナルシーズンを迎えるまでの12年間、一度も休まずに駆け抜けた超人気ミステリードラマが『ジェシカおばさんの事件簿』。主人公はジェシカ・フレッチャー。だれもが親しみを込めて「ジェシカおばさん」とよぶ女流ミステリー作家が殺人事件を解決していく本格ミステリードラマだ。
舞台となるのは人口4000人にも満たない海沿いの小さな田舎町、メイン州カボット・コーヴ。カナダにほど近いこの港町は東海岸上部に位置し、住人はお互いに顔見知りで、誰かの家を訪問するときは、パイやスープなどの手料理を持っていくのが習慣という、平和を絵に描いたような町だ。しかもジェシカは最初から作家だったわけではない。夫であったフランク亡き後、そのさびしさを紛らそうとして書いたミステリー「死体は夜踊る」が出版社の目にとまったのがきっかけでデビュー。以来、彼女は行く先々で巻き起こる殺人事件をめざとく見つけては物見遊山な好奇心に背中を押されつつ自ら巻き込まれにゆき、きめ細かな観察眼と持ち前の論理的な思考で難事件を解決に導いていく

登場人物は、ミステリー作家のジェシカとその友人たち。ジェシカは作家としてデビューする前からこの港町に住んでおり、時折頼まれる高校での代理教師を努めながら友人たちとの暮らしを楽しんでいた。ところがミステリー作家になってから町の保安官から殺人事件についての相談を受けるようになり、いつのまにか町ではもちろん、旅先でもさまざまな事件に関わるようになっていくのだ。
そんな彼女を友人として支えているのが漁師のイーサン・クラーク。殺人事件の解決には特に役に立たないけど、その好人物っぷりはのどかなカボット・コーヴを代表するといっても過言ではない。朝には朝食のパイをごちそうになり、嵐の晩にはジェシカの安否を気遣って家を訪ねる。休日になると家の修繕を手伝うなど、日々の暮らしを助け合う良き友人だ。
ジェシカが親友と慕うもう一人の友人がセス・ハズリット医師。やや無愛想なところがあるけれど、カボット・コーヴで一番の名医。ジェシカを手伝って事件解決のアドバイスをすることも。
そしてジェシカたちの共通の友人であり、この町の保安官を務めるのがエイモス・タッパー保安官。平和な町の保安官らしく殺人事件にはとんと疎く、実際の捜査にも行き詰まってばかり。ジェシカに助言を求めることもたびたびだけど、表だってそんなことを聞きやしない。でも、ジェシカもその辺はお手の物で、安直な解決策や根拠のない直感に流れがちな保安官に対して、彼の機嫌とプライドを損ねぬようにさりげなくアドバイスをしつつ、事件解決へと導いていく

このドラマの人気の秘訣は、なんといってもジェシカおばさんの人柄! 彼女の溢れんばかりの好奇心と行動力が見る者をぐいぐいと作品世界に引き込んでいく。しかも彼女の好奇心は、関係者に煙たがられても、警察から邪険にされても消えない。しかも、警察の捜査方針に何かと口を出すジェシカに対し、警察当局は現実の事件はミステリー小説とは違うと変な意地を張るのだけど、複雑に入り組んだ事件の全体像を紐解き、最終的に殺人犯を特定していくのはジェシカ。その小気味良さは、わかっていてもついつい見入ってしまうほど。しかも事件解決に対して変に気負ったりもせず、のんびり眺めていられるからお茶の間サスペンスのお茶請けにもぴったり。

そんなジェシカおばさんだけど、事件に向き合う姿勢は他のどのドラマとも似ておらず、独特にしてユニーク。探偵ドラマのようなストイックさもなければ、刑事ドラマのように日々のルーチンワークと向き合う葛藤も描かない。もちろんアクションシーンもなければお色気もほとんどなし。本作が描くのは普通の人々、警察でもなければ探偵でもない単に殺人事件に巻き込まれた人々の立場だ。とりわけ真犯人に意図的に巻き込まれ、犯人に祭り上げられてしまった無実の人の立場から事件を描くことが多い。実際、論より証拠とばかりに、わかりやすい動機とおあつらえ向きな状況証拠をセットにして犯人を特定する警察に対し、現実がそんなにわかりやすいはずがないと思っているジェシカおばさんが横やりを入れるという構図でストーリーが展開することが多い。
日々の生活にはいろんなことが詰め込まれており、絶妙なバランスでかろうじて成り立っているのだ。人は怒れば声を荒げるし、「殺してやる!」と罵倒することもある。しかし、だからといって殺人を犯すとも限らないのが普通の生活者の感覚だ。そもそも普通の生活者は自分が犯人に疑われるかもなんてことを日常生活の中で想像する機会などない。だからこそ「殺してやる!」と叫ぶのだ。そんな日常を生きる普通の生活者の立場から殺人事件を描いているのがこの『ジェシカおばさんの事件簿』のユニークさの秘訣であるし、他にはない魅力だろう。

ちなみに、警察でも探偵でもない普通の人が世間話に花を咲かせながらあちこちで集めた情報を寄せ集めて事件を解決するタイプのミステリーをコージー・ミステリーとよぶらしいのだけど(アガサ・クリスティの『ミス・マーブル』シリーズとか)、『ジェシカおばさんの事件簿』もこのタイプ。素人探偵物ともいわれるが、全体的にのんびりしていて、武勇伝のような押しつけがましさもなければ、シリアスで辛辣な結果にもならないのが特徴だ。

さて、豪華なゲスト俳優も『ジェシカおばさんの事件簿』の特長の1つ。たとえば、『裸のガンを持つ男』でコミカルなエージェントを演じたレスリー・ニールセンが責任感に溢れた豪華客船の船長役で登場。他にも『スタートレック』のスポック役を断って『スパイ大作戦』で変装のプロフェッショナル、ローラン・ハンド役を手にしたとされるマーティン・ランドーがナイトクラブのボスで役者をこき使う悪者役を演じたり、高校在学中に『エクソシスト』の少女リーガン役のオーディションに参加して600人の中から見事に役を勝ち取ったリンダ・ブレアも登場するなど、見逃せない。
おっといけない、ジェシカおばさんを演ずるアンジェラ・ブリジット・ランズベリーについても。
『ジェシカおばさんの事件簿』が始まった当時、彼女は59歳。もちろん(というか、当たり前だけど)、第12シーズンが終わったときは71歳。実に頑張り屋さんです。しかも、その後も舞台活動を続け、この2009年6月には第63回トニー賞演劇助演女優賞を受賞しています。受賞当時は83歳。しかも、5度目のトニー賞受賞は、ジュリー・ハリスと並んで歴代タイ記録のおまけ付き。まだまだこれからが楽しみな女優さんなのです。

そうそう、『ジェシカおばさんの事件簿』はアメリカで12年続いた長寿番組だったことは先に紹介したけれど、シーズン終了後もその人気は衰えておらず、その後4本のTVムービーが作られています。ジェシカ役を演ずるのはもちろん、我らがアンジェラおばさん。
一方、日本の放映状況はといえば、ちょっとさびしいかぎり。NHKが吹替版を第3シーズンまで、その後、LaLa TVが字幕版で第4シーズンを放映したのが最後…。オトナ?な事情はともかく、続きが見たいと思っているヒトも多いはずなのに…。関係者の方々には猛省を促したい!?
なお、本国アメリカではといえば、コンプリートDVDボックスが順調に発売されており、2009年7月に第10シーズンが発売されたばかり(UK版は同年8月)。全12シーズン264エピソードが出揃うのももう間近。ついでにいえば、ジェシカが関わってきた殺人事件は全部で286件(殺されかけたが一命を取り留めた殺人未遂事件1件を含む)。気になる人はカウントしてみよう!?
ついでのトリビアだけど、本ドラマの企画・制作は『刑事コロンボ』でお馴染みのリチャード・レビンソンとウィリアム・リンクのコンビ。そして日本語版の翻訳担当も『刑事コロンボ』で「うちのカミさんが」の名調子を生み出した額田やえ子。この日米双方の『刑事コロンボ』スタッフの参加が本作に与えた影響は計り知れず、それも魅力の1つ。しかも、吹替版ではジェシカ・フレッチャー役に国民栄誉賞を受賞した女優の森光子さんを起用。吹替作品への俳優起用に疑問の声が投げかけられている今日このごろ?だけど、さすがは森光子さん。海外ドラマの吹き替えは初体験とのことだけど、なかなかどーして、“得も言われぬすばらしさ”のお手本を見て(聞いて)いるかのよう。

さてさて、そうこうしているうちに、勝手に猛省を促したかい!?もあったか、日本でも待望のDVDが発売されました。さすが!!でござる! NHKが放送した第1シーズンから第3シーズンまでの全56話に国内未放送のパイロット版「シャーロックホームズ殺人事件」(英語音声・字幕のみ)を収録。このパーフェクトDVD-BOXが2009年8月に発売(シーズン1、2、3の各DVD-BOX同時発売)! ようやく懐かしいジェシカおばさんと再会が…。森光子さんの“名”吹き替えもあわせてお楽しみあれ!
さあ、こうなったら、第4シーズン以後もすぐに見ることができるかも???


「ジェシカおばさんの事件簿」の公式HP

■ジェシカおばさんの事件簿 DVDシーズン1~3、全巻セット 好評発売中
【全巻セット】(シーズン1~3)DVD-BOX ¥59,850(税込)
【シーズン1】 DVD-BOX ¥17,640(税込)
【シーズン2】 DVD-BOX ¥26,040(税込)
【シーズン3】 DVD-BOX ¥26,040(税込)

(c)2009 UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED

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2009.08.26

『刑事ナッシュ・ブリッジス』

時にシリアスに、時にユーモアを満載する
痛快アクション刑事ドラマの決定版!

サンフランシスコを舞台に凶悪犯罪と立ち向かうサンフランシスコ市警察(S.F.P.D.)の特別捜査班(S.I.U.)の活躍を描いたポリスアクションドラマが『刑事ナッシュ・ブリッジス』だ。主役のナッシュを演じるのはドン・ジョンソン。彼の出世作でもある特捜刑事マイアミ・バイス』で高級スーツをバリッと着こなし、フェラーリを駆るセクシーな二枚目刑事ジェームズ・“ソニー”・クロケットをクールに演じた彼だが、本作ではそのイメージを一新。どこか憎めない人好きする中年オヤジとしてナッシュを演じ、新境地の開拓に成功した。

タイトルに「ナッシュ・ブリッジス」と個人名を冠する刑事ドラマだが、このドラマは彼ひとりのヒーロー物語ではない。彼が属する特別捜査班(S.I.U.)の個性豊かな捜査官たちとナッシュとの関係を北米最大の都市サンフランシスコで多発する凶悪犯罪の捜査を通して描く群像劇だ。しかもナッシュは一匹狼タイプの刑事ではない。彼は他の誰よりもちょっとだけ勇気があって、少しだけ優しい隣のお兄さん的なヒーローだ。

では、ナッシュとその仲間たちを紹介しよう。

ナッシュ・ブリッジスは、ポリスアカデミーを卒業してからずっと徹底した現場主義を貫くS.F.P.D随一の敏腕刑事だ。現場へのこだわりが過ぎ、出世のための昇進試験を受けずにいるほど。ずば抜けた記憶力と黒帯クラスの武術の腕前でスマートに難事件を解決するかと思えば、ルール無視の荒技を繰り出すこともあるなど、目的のためには手段を選ばないところがナッシュの流儀。そんな彼の破天荒なスタイルは、部下たちにとってはあこがれであり、上司からは信頼に足る頼もしい部下として見られているのだろう。また、手先の器用さも彼の特徴で、特技はマジック。相手に気付かせずに手錠をかけてしまう小技やちょっとしたカードマジックで相手の気をそいだりするなど、犯人を翻弄させる小道具としてその腕前を披露することも
そんなナッシュだが、多くの敏腕刑事がそうであるようにプライベートについては良き家庭人ではなかったようだ。一人目の妻リサからは「仕事一筋で他のことは頭にないから困るのよ」となじられ、二人目の妻のケリーとも上手くいかず、第1話からいきなり離婚届にサインしている。そんな仕事中毒が板に付いてしまったナッシュだが、家族に無関心というわけではない。リサとの間に生まれた一人娘のキャシディへの溺愛ぶりでかなりの親ばかを発揮しているし、痴呆症気味の父ニックの面倒を見るために奔走する姿も家族を守る大黒柱そのもの。しかし、いざ事件が起きるとそれら全てを忘れてしまい、その後始末に奔走することもたびたび…。

そんなナッシュの相棒にして良き理解者が、ジョー・ドミンゲス。
ナッシュとは20年来のつきあいがある彼だが、警察を辞めて私立探偵をしていたところをS.I.U.に非常勤で再雇用、ナッシュとのパートナーシップが復活。当初は自由な身分の外部スタッフとして参加するはずだったが、警察年金を受け取るにはわずかに勤務期間が足りなかったことが判明。その不足分を補うためにナッシュの上司A.J.シマムラの計らいで職場復帰することになるのだ。なので刑事になった今でも副業は私立探偵だ。また、うますぎる儲け話をめざとく探してきては、自分だけは大丈夫と信じてそのたび裏切られている悪癖(?)も。
刑事としての仕事ぶりはそこそこ。決め手に欠けるというか、詰めの甘さが目立つのはご愛敬。ラテン系の陽気な性格の持ち主で場の空気を和ませることにかけては天下一品。ことの顛末を面白おかしく説明する狂言回し的な役回りを進んで担当しており、ナッシュとの掛け合いはあたかも漫才を見ているかのよう。
家族はスウェーデン人の妻インガーと息子のJJ、シーズン途中で生まれたルシアの4人。実はかなりの恐妻家で、かつ過激なまでの親ばか。特に遅くに生まれたルシアへの溺愛ぶりはナッシュでさえ遠く及ばない。

そして、いつでもベレー帽をかぶり、ジャケットの上からベストを羽織るといった風変わりなスタイルで登場するのがナッシュの同僚ハーベイ・リーク。常にマイペースなベテラン警官だ。コンピュータ犯罪にめっぽう強く、化学の知識も豊富で爆弾処理にも精通しており、爆発物処理班の代わりにかり出されることもしばしば。
できる刑事の宿命なのかナッシュ同様、ワーカホリックの傾向が強い。仕事にかまけて家庭をおろそかにする始末でプライベートはひどくがたがた。趣味は80年代の音楽グレイトフル・デッドの大ファンでジェリー・ガルシアを追悼する腕章を外したことがないなど、こだわるところは徹底的にこだわるいわゆる変人。ナッシュについて『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』に登場する人を食い尽くす口のでかい怪獣「サンド・クリーチャー」よりも恐ろしい存在と評したことも。

そんなハーベイが教育係になって仕込んでいるのが新人刑事エバン・コルテス。
後先考えない直情的な性格で捜査を混乱させてしまうこともしばしば。付け加えると無類の女好き。そのトンデモな性格をして周囲からは「若い頃のナッシュのよう」といわれているのだが、なぜか本人はそれをして「ナッシュのようにできる男」と解釈しているお気楽極楽なお天気野郎。特に女性には声をかけることが礼儀と思っているらしく、ナッシュの元妻リサを自宅に誘ったり、ナッシュに隠れて彼が溺愛する一人娘キャシディと交際するなど筋金入りの女好き。教育係のハーベイはそのどちらも気付いていたけど、ナッシュを恐れるあまりに見て見ぬふり。キャシディとは結婚を誓い合う仲にまで発展していくのだが、果たしてナッシュの心境やいかに!

『刑事ナッシュ・ブリッジス』の醍醐味は、なんといってもS.I.U.の捜査官が中心となって凶悪事件を解決していくポリスアクションストーリーではあるけれど、このドラマの魅力をそれだけに絞ってしまうのはもったいない。というのも、捜査官たちが家族や恋人と織りなす日々を描くサブストーリーが本編に負けずとも劣らず面白いからだ。
たとえば、ナッシュとリサ、とりわけ離婚後も一人娘のキャシディを交えて親愛な関係を続ける姿を描く一連のサブストーリーは仕事に没頭してしまいがちなナッシュの性格を理解するヒントにもなっている。また、ナッシュの父であり痴呆症を患うニックに向き合う彼の真摯な姿は家族間のみならず、人間関係での相互的信頼関係を大切にするナッシュの心情を垣間見せている。他にも、キャシディを溺愛するナッシュをジョーが笑い、ジョーの愛娘ルシア(生後9カ月)の幼稚園入園面接にかけるジョーの意気込みにナッシュが呆れるナッシュ&ジョーの親ばか物語もなかなか興味深い。そんな個性豊かな登場人物たちのサブストーリーを追いかけるだけでもちょっとしたホームドラマより面白いこと間違いなし。中でもおすすめなのがエバン。彼の成長っぷりは意外な顛末を含め、見逃せない。

さて、『刑事ナッシュ・ブリッジス』の魅力は登場人物だけに留まらない。彼らが日々捜査に使っている車もレアもの揃い。
ナッシュの愛車にして、このドラマを象徴する黄色いオープンカーが1971年型のクーダ・コンパーチブル。コークボトルラインとも呼ばれる流線型のボディが美しいこの車、実は世界に14台しか実在しない稀少車だ。その稀少さにも関わらず、無造作に、というか下駄代わりに使い倒しているあたりは流石アメリカ流。大きなトラブルに見舞われぬようにナッシュなりに気を遣っているけど、銃撃戦に巻き込まれたり、屋上から投身自殺を図った犯人に墜落されたりと、災難続き。撮影用にレプリカを含めて4台用意し、ドン個人も1台所有していたとのこと。撮影が終わった時に、その全てをオークションに流したとのことだが、今はどこで何をしていることやら。
他にもS.I.U.には車にこだわる捜査官も多く、ハーベイは青春時代の思い出が詰まった70年代前半のフォード・ランチェロを使い続けていたし、第4シーズンから登場する元C.I.Aエージェントのケイトリン・クロスの愛車はゼブラのZロードスターという電気自動車だ。お約束というか、充電を忘れて動けなくなったエピソードもあったりして、マニアにはたまらないものがあるとかないとか…。いつも明るくノリノリなジョーの愛車は意外に地味でBMWの5シリーズ。その後、捜査中に車を壊され、証拠品として保存されていた7シリーズと秘密裏に交換してもらった、なんてこともありました。

また、ドラマの舞台でもあるサンフランシスコはアメリカでも有数の地震多発地帯で、放送開始当時は1989年10月に発生したロマ・プリータ大地震の記憶も生々しく、そのためS.I.U.のオフィスもこの地震の被害を受けたという設定で開始。庁舎を直すまで市内で改修工事中のビルを間借りすることになるのだが、実際には吹き抜けのホールに机を並べただけというおよそ刑事部屋とは思えない場所で、フロアの移動は工事用のエレベータを使う始末。その後、オフィスを移転することになるのだが、次なるオフィスは港に停泊していた大型フェリー「ユーリカ号」。その後も元クラブだった場所をオフィスにするなど、サンフランシスコのベイエリアを転々とし、庁舎の改修が完了する前にシーズンが終了。ちなみに、ユーリカ号は現在観光船として一般公開されているとかいないとか。ナッシュになりきって後部甲板でコーヒーなど飲んでみたいもの…。
そうそう、ナッシュが住むアパートもまた地震の被害を受けており、壁に巨大な穴が開く始末だ。ちなみに、アパートへの出入りは工事用のエレベータを使い、地震の時にできた巨大な穴が玄関代わり。地震の影響のせいか耐震強度が極端に低くなっており、それもあって格安の値段で借りることができている。屋上にはジャクジー付きの露天風呂が付いているが、こちらはどうもキャシディ専用みたい。

登場人物に確かな存在感を与えるサブストーリー細部にまで気配りされた隙のない物語世界を持つ本編、多彩なゲストスターと、本作の魅力はいろいろだが、その中心にいるのが制作総指揮にして主役を演じているドン・ジョンソンだ。実は自身の出世作であり、社会現象にまでなった『マイアミ・バイス』では彼自身が幾度か監督を務めており、ドラマの制作スタッフとして実際に手を動かしてきた経験もあるのだ。彼のそうした実績と熱意の甲斐もあってか、『刑事ナッシュ・ブリッジス』は1996年にアメリカで放映されるやすぐに人気を博し、2001年までの6年間で全6シーズン122話を放送とロングヒットシリーズへと成長。100話目の放送時には米エンターテイメント専門誌「The Hollywood Reporter」が記念号を刊行したほど。全盛期には全米約700万世帯に視聴されていたとか
日本でも地上波やCSで繰り返し放送されており、その人気は今も衰える気配をみせない名作ドラマなのだ。


■『刑事ナッシュ・ブリッジス
ただいまAXNでシーズン1~3連続放送中!
月曜~金曜連日 18:00
(再放送:月曜~金曜連日深夜3:00am、月曜~金曜連日 正午0:00pm、土曜 深夜4:00amより5話連続)

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2009.07.29

『アーノルド坊やは人気者』

ハートフルコメディの決定版!
「冗談は顔だけにしろよ?」

ニューヨークのハーレムでたくましく生きている黒人兄弟のアーノルドとウィリス。彼らのお母さんはパークアベニューに住む白人の富豪ドラモンド家の家政婦をしながら、女手一つで2人を育てている肝っ玉母さんだったが、ある日突然、亡くなってしまう。そのことを気に病んだ富豪のドラモンド氏、天涯孤独となってしまったアーノルドとウィリスを養子として迎える決心をする…。
かくしてドラモンド家は、ドラモンドの1人娘キンバリーと新しく雇い入れた家政婦ギャレット、そしてアーノルドとウィリスの5人での暮らしが始まる。そんな一風変わった彼らの毎日を面白おかしく描き出すホームコメディの伝説的な傑作ドラマが、『アーノルド坊やは人気者』

白人社会における黒人への偏見がなくなりかけてきた1970年代後半に始まった本作。人種のるつぼといわれるニューヨークを舞台に、白人の富豪がハーレム出身の黒人兄弟を養子に迎えるという、一見ありそうだけど実際にはまず“あり得ない”導入。コメディのはずだけど、シリーズ全体のテーマは家族愛と人種差別問題。特に人種差別問題については「虐げられる黒人」目線というよりは、むしろ「偏見に気付いたときの白人の戸惑い」に着目しているところがポイント。問題に直面した白人の困惑をアーノルドが絶妙なタイミングで茶化し、あっけらかんと笑い飛ばす。白人至上主義の世界観を、黒人でしかも幼い子どものアーノルドが歯に衣を着せない物言いで有無を言わさずひっくり返す痛快さがまさに人気の秘訣だろう。

そんな『アーノルド坊やは人気者』の魅力の1つとしてよく挙げられるのが、ユニークな登場人物。中でもダントツ人気なのがアーノルド。「冗談は顔だけにしろよ」という決めセリフが超有名なアーノルドだが、実際には番組中に彼を中心に繰り広げられる小気味よい丁々発止の会話とボディランゲージの応酬に注目する人も。すべての子どもが無垢とはいわないが、アーノルドの今にもたれ落ちそうなほっぺと小さな背丈は見る者に天使のような印象を与えるのだが、現実に彼の口から出てくるジョークは、辛辣というか、まさしく小悪魔級。最初の頃こそ辛辣なジョークに驚きもするが、次第にそれなしでは我慢できなくなってしまう中毒症状になること必須。ちょっぴりドジで寂しがり屋の8歳児が持ち前の知恵とジョークで窮地を乗り越えていく様子にはついほっこりしてしまうかも。
アーノルドは、自分の背の低さと小太り体型にコンプレックスを感じているようだが、ぽっちゃりほっぺとおちょぼ口にも複雑なところがあるかも。特にぽっちゃりほっぺは挨拶代わりに触られることも多く、触っている人はとっても気持ちよさそう。猫の肉球をふにふにする感覚か。やっぱり、触ってみたい…。

一方、お兄ちゃんのウィリスはアーノルドと違って背も高くスマート運動神経も抜群で女の子にもモテモテ(って、死語?)。ジョークのセンスもアーノルドに負けず劣らず、2人のやりとりは大阪芸人を見ているかのよう(やっぱり吹き替えだよね)。性格は長男らしく弟思いで自分の身を挺してもアーノルドをかばうこともしばしば。その代わりに正義感も強く、ズルや嘘にはめっぽう厳しい。アーノルドのいたずらを見て見ぬふりをすることができないし、一緒になって悪のりするといったこともほとんどない。ウィリスの一歩引いて全体を眺めようとする姿勢はまさに母子家庭に育った長男の宿命的性格かも。「お兄ちゃんだから…」と諭されながら育ってきた長男にとって共感できるところがいくつも。いつだって弟はやんちゃでかわいい存在なのだ。

さて、2人の父親となったフィリップ・ドラモンドは、ドラモンド商会の社長さん。アーノルドとウィリスの2人を養子に迎えたことで白人社会が持つ黒人への偏見を目の当たりにするが、決してうやむやにすることなく果敢に立ち向かっていく。これって実はアメリカ人が思い描く“理想の父親像”に近いのかもね。特に、彼の母親が隠し持っていた黒人に対する捨てきれない偏見に真っ正面から向き合って批判する姿は、人種問題に対する世代間のギャップを乗り越えようとしていた当時のアメリカの苦悩を代弁しているかのよう。確かにドラマで描かれるドラモンドの周囲はまだまだ白人社会。アーノルドとウィリスを自分の息子として紹介するときに漂う冷ややかな空気は観客のブラックな笑いを誘うに十分だ。ときには「すまん、言葉を探す時間をくれないか」と複雑な心境を正直に吐露する人物もいたりするが、彼らに対するドラモンドの対応が“玉虫色”だったりするところも妙にリアル
また、ドラモンド氏は、大金持ちの資産家にしてはもったいぶったところがない。訪問者が来ると「ドアと鍋のふたを開けるのは大得意」と軽口をたたきながら、家政婦よりも先にドアを開けに行くなど、気さくなところが好感持てる。ただ、彼のジョークは周囲を凍り付かせることが多く、家政婦のギャレットからは「発想の軽薄さが肌に合わないのよね」と酷評されるほど。そんなに悪くないと思うんだけど、アーノルドの気の利いたジョークに比べるとやっぱり、ね。

で、家政婦のギャレット。彼女は白人だけど、黒人に対する偏見はほとんど持っておらず、常に公平な判断を下せるアーノルドとウィリスの良き相談相手だ。また、弱気になっているアーノルドの背中を押してやることも多く、成功しても失敗しても温かく見守ってくれる
そんな一家のお母さん代わりを務めるギャレットだが、実はかなりのナルシスト。鏡を磨きながらも自分の姿を眺めながら「なんて美しい私」と自己陶酔に浸ることも。ほかにも銀の食器の磨き具合について、自分の顔がキレイに映るかどうかを判断基準にするなど、自分が大好きな性格らしい
そうそう、ギャレットが家政婦を努めるのはシーズン2の途中まで。その後はブルベーカー、ギャラガーと代替わりしていきます。

そして、最後に紹介したいのは、当時のアメリカ少年ズの間で彼女にしたい女の子NO.1だったドラモンドの一人娘キンバリー(ダナ・プラトー)。金髪で青い目、そばかすが印象的な彼女は、容姿は端麗にして頭脳は明晰。放送当時はお茶の間の人気を見事にかっさらい、全米のみならず世界中の男子から注目を浴びることに。劇中では独立心が旺盛で人に指図されることが大嫌いなやんちゃな美少女を好演。この恋多き年頃の少女にアーノルドが振り回されることもたびたび。ちなみに、キンバリーの部屋に無断で入ると蹴り入れられるんで、ご注意あれ。

そんなアーノルドとその仲間たち(?)を紹介してきたわけだけど、彼を中心としたジョークの応酬がおもしろい!と言えてしまうのは、日本ではやっぱり吹き替え版の魅力がなせる技
アーノルドの決めセリフの「冗談は顔だけにしろよ」にしても、オリジナルでは「What are you talking about, xxxx!」(xxxxには人名や事物が入ることが多い)となっていて、このどうとでもとれる言葉にわざわざ意味深長とも言えるこの訳語を当てるセンスはやっぱり吹き替え版ならでは。ほかにも、アーノルドが大事に育てていた出目金の名前もオリジナルでは「アブラハム」となっている。それを「ガッツ・出目クロ」とするあたり、吹き替えの遊び心が伝わってくる。ちなみにアブラハムとはノアの洪水後に現れた預言者で宗教上の重要な人物とされているが、ペットの魚にそんな大仰な名前を付けるアーノルドのセンスもよくわかりませぬ…。

本国アメリカでは1978年から1986年まで全8シーズン、189話が作られ、アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアの各国でも放送された世界的な人気番組。もちろん、日本でも繰り返し放送されてきたが、地方のローカル局で夕方に放送されることが多く、意外に東京生まれの東京育ちの人々には知名度が低く、北海道や西日本で人気だったりする。ともあれ、この番組を見るために学校から慌てて家に帰ったという人も少なくないだろう。

ところで、待つことうん十年と過ぎつつある2009年8月26日ファン待望のDVDがやっと日本発売! アーノルドとの再会を果たしたい方も、お初な方も、この夏はアーノルドの魅力にとっぷりとはまってください。



「アーノルド坊やは人気者」の公式HP

■アーノルド坊やは人気者 コンプロート1stシーズンDVD-BOX
【価格】¥8,400(税込)
【収録内容】4枚組
【発売元】ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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2009.06.24

『特捜班CI☆5』

泣いた!笑った!飛び跳ねた!
それがクライム・アクションってもの!?

イギリス内務省に特設された犯罪捜査班CI☆5(クリミナル・インテリジェンス・ファイブ)の活躍を描くクライム・アクションドラマ『特捜班CI☆5』。1977年にイギリスで放映されるや、じわじわと注目を集め、83年までに5シーズン57エピソードが作られた人気シリーズ。しかも、最後の第5シーズンの視聴率は70%に届く勢いを見せ、本国で放映後も日本を含めた30カ国以上で繰り返し放映されてきた。
このドラマがテーマとして取り上げているのは、周辺諸国との利害関係や人種問題、麻薬などに端を発する凶悪犯罪だ。それはドラマが放映された1970年代後半のイギリスに暗い影を落としていた問題であり、今も未解決な問題だ。本シリーズが今でも人気を集めているのは、取り上げたテーマの永続性に加え、要人の暗殺や誘拐、連続爆弾魔、核爆弾、麻薬など、各エピソードで綴られる物語のリアリティにあるともいえよう。

ここでCI☆5に登場する主要な人物を紹介しよう。

まず、CI☆5を統括するジョージ・コーレイ部長。自らもMI5出身という実践派指揮官だ。彼の的確かつ大胆な作戦は常に最善の結果を導き出すこともあり、部下からの信望も厚く、それは他の政府関連機関からも一目置かれているほどだ。部下に対して厳しい注文を突き付けることもあるが、それというのも部下に全幅の信頼をおいているから。最後まで面倒を見る人情派なところもある。部下からは「おやっさん」と親しみを込めて呼ばれている。「太陽に吠えろ」で石原裕次郎演ずるボスとどこか重なるところがあるのも人気の秘訣か?

次に紹介するのが、レイモンド・ドイル。警視庁の捜査課で刑事をしていたが、その前には軍隊に入隊していたという過去もある。刑事出身だからか、その仕事ぶりはきわめてまじめ。ただ、女性に対しては電光石火のごとく手が早く、任務に支障をきたすこともあるとかないとか。本気で怒ると手をつけられない暴れん坊な一面も。コンビをくんでいるボーディの弟分的な存在。
三人目が、そのドイルとコンビをくむボーディ。本名はウィリアム・アンドリュー・フィリップ・ボーディ。13歳の時に家を飛び出して以来、用心棒や武器の密売人、傭兵など、日の当たる表舞台とは無縁の筋金入りな裏社会の住人。その後イギリスに戻って陸軍に入隊。SAS(英国陸軍特殊空挺部隊)に所属していたところをコーレイ部長にスカウトされてCI☆5に。ドイルには負けるが、それでもかなりの女好き。それに加えて戦闘の最中でもジョークを忘れない軽口屋だ。殺しのプロを自認しているが、身だしなみにも気を遣う紳士的な一面も。
この2人のコンビは、どこか『マイアミバイス』のソニーとリコ、『白バイ野郎ジョン&パンチ』のジョンとパンチ(あるいは『あぶない刑事』の鷹山と大下)と似ているように思うのは偶然か?

そんな彼らが日々取り組む任務だが、それは実に多岐にわたっている。共産圏や中東諸国から来たスパイ・テロリストの潜伏先調査・監視からはじまり、国家的陰謀や密約に関わる諜報活動、果ては麻薬組織のボスや凶悪犯の捕獲までいろいろだ。しかも、必要とあれば暗殺も。こうした任務の特殊性もあり、CI☆5のメンバーは警察だけでなく軍の特殊部隊やSAS、空挺隊、MI5などから集められた精鋭揃い。また、彼ら自身も任務の失敗は自らの死に直結することを知ってか、常に訓練を怠らない。「おやっさん」ことコーレイ部長も訓練の機会を必要に応じて与えている。
こうしたCI☆5の考え方は、コーレイ部長の「暴力には暴力で戦い、善良な人々を暴力から守れ!」という言葉の中からも読み取ることができる…。

さて、日々、厳しい任務に直面しているCI☆5の部員たちだが、彼らが日々シリアスな面持ちで任務を全うしている、なーんてことは全然ないのだ。むしろ、随所にユーモアのセンスが埋め込まれている。たとえば、敵との派手なカーチェイスを繰り広げるドイルとボーディがその車内で交わす会話といえば、夕べのバーで出会った女性のどこに惹かれたのかとかなんとか。緊迫感とユーモアが風見鶏よろしくめまぐるしく入れ替わるところに、何ともいえないおかしさが物語に深淵な風味を加えている。命令違反をしたドイルとボーディにコーレイ部長がお説教している時でさえ(いやそんな時だからこそか?)、2人は部長への軽口を忘れない。それをとがめない部長も部長で、まあ、いつものことよと楽しんでいるご様子だけど、ね。
お気に入りのジョークランキングを作ってみるのも楽しいかも。

ともあれ、このあたりの日本語表現は字幕よりは吹き替え版に軍配があがりそう。オリジナルの英語の受け答えもなかなかにユニークではあるけど、いかんせん70年代後半のセンスは21世紀の今となってはやや古めかしい。そして、吹き替え版をおすすめする理由はもう一つ。実はCI☆5の吹き替え台本を担当しているのが額田やえ子さん。そう、知っている人には超有名な、コロンボ警部の“うちのかみさんが…”口調を生み出したその人。思わず笑いたくなる主人公たちの軽妙なかけあい、表面は厳しくても裏では部下を思いやる部長の存在、犯罪者や被害者の細やかな心情描写などが、幅広い層に支持され、現在なお根強いファンがついている理由の一つといえます。そうそう、ズッコケ風なエピソードタイトルも意外にも収まりが良い☆

もちろん、ユーモアシーンの演出ばかりが凝っているわけじゃない。アクションシーンもテレビ・シリーズの枠を超えた力の入れよう。スタントを使わないアクションシーンをはじめ、ガン・ファイトのこだわりも半端じゃない。特に被弾した車のボディや撃たれて血まみれになるなど着弾シーンの描写のクオリティはまるで映画のようで、現在の放送規制では放映不可能なシーンも散見するほど。しかも、単なる制作者側の自己満足に終わらず、テンポの良いシーンの積み重ねで生まれたドキドキハラハラなシーンが見る者に心地よい高揚感をもたらす。そうしたアクションシーンに加え、ドイルとボーディ、コーレイ部長らなどCI☆5のメンバーとの心温まるやりとり、犯人や被害者の心理描写にも気を配るなど、単なるドンパチ・アクションで終わらせなかったのが5年という長寿番組になった理由かもね

ちなみに、現在発売中のDVDは傑作選として全57エピソードのうち、各巻12エピソードが収録。その中には字幕のみで放送したエピソードや国内放送時にカットされたシーンも含まれている。そういった字幕のみのエピソードやシーンについて、当時の声優を起用して新たに吹き替え版を作成。DVD化に向けた力の入れ方もちょっと普通じゃないかも。知らなくてもいいDVD誕生秘話だけど、途中で字幕に切り替わる違和感がないのはとってもうれしいので、その点も◎。


特捜班CI☆5の公式HP

■特捜班CI☆5 傑作選DVD-BOX
【価格】¥20,790 (税込)
【収録内容】4枚組
【発売元】スティングレイ

■特捜班CI☆5 傑作選DVD-BOX PART2
【価格】¥20,790 (税込)
【収録内容】4枚組
【発売元】スティングレイ

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2009.05.13

『アルフ』

宇宙からやって来た、
黒目が印象的なアイツ!

宇宙の彼方、メルマック星からやってきた妙に俗っぽいエイリアンのアルフ。彼を家族の一員として迎え入れたタナー家を舞台に、アルフとタナー家の人々が繰り広げる笑いと涙の異文化コミュニケーションをテーマにしたシットコムの名作。アメリカでは、1986年から4シーズン続き、日本でも1989年から何度か放映されていて、実はファンも多い名作

物語は、ロサンゼルスでのんびりと暮らすタナー家のガレージに宇宙船が墜落したところから始まる。しかも、その中には全身茶色の毛むくじゃらの不思議な生物(アルフ)が中にいたんだから、びっくり×2
墜落の衝撃で気を失っていたアルフを放り出すこともできず、なぜかリビングに迎え入れて看病することに。そんなタナー家の親切に気をよくした(いい気になったともいう)アルフは、元気になっても宇宙に帰るそぶりを見せるどころかタナー家に居つく(居座るともいう)。
ちなみに、タイトルにもなっている『アルフ』とは、宇宙人を意味する「Alien Life Form」の頭文字から取ったもので、本名はゴードン・シャムウェイ。この名前について、本人は「らしくない」というのだけど、どこが「らしくない」のかはイマイチ不明。

その宇宙人アルフ。なぜか英語を話し(故郷の仲間に通信するときもなぜか英語…)、お調子者で居候のクセに態度がでかい。さらにいえば、いたずらとテレビが大好きなうえ、お楽しみは3度のご飯。「我食べる、故に我あり」とかいう格言まで持つはた迷惑な大食漢。なんというか、『未知との遭遇』のような荘厳さもなければ、『ET』のような愛嬌もなく、自分の欲求を叶えるための狡賢さと妙に「人間界」慣れした俗っぽさが目立つばかり。やりたいことはやりたい、欲しいモノは欲しい、とはいえ居候という身分をわきまえる程度には物わかりがよい。なんともはや…。

さて、台風の目のような居候を抱えるタナー家。その一家の主人がウイリーだ。穏やかで心優しい一面を持ちつつも、言うべきところではちゃんと主張する強さもある、どちらかといえば頑固者。いたずらをしたアルフをかばうことも多いが、叱りつけることはそれ以上。タナー家の中で誰よりもアルフに迷惑をかけられている。アルフのいたずらが原因でFBIに捕まったこともあるからね。それでも、最後の最後で許してしまう人のよさがある。
ウイリーと対照的なのがお母さんのケート。ケートはアルフの一挙手一投足について事細かに文句を言う。それというのも、長男のブライアンがアルフの行き過ぎた自由奔放さを真似やしないかと気もそぞろ。とはいえ、アルフがブライアンのことを一番大切に思っているのを知っているのもケート。ブライアンが学芸会でアスパラガスに扮装するときのエピソードなんて、涙なしには見られない、いいお話。ともあれ、子どもたちにとっては心優しいお母さんだけど、アルフにとっては最も恐るべき存在であることは間違いない。
一方、意外にもアルフのことを親身に思っているのが長女のリン・タナー。地元の大学に通う女子大生で、お母さんに怒られているアルフの肩を持つことも度々あるし、ケートに怒られしょぼくれたアルフの話し相手になることもしょっちゅう。もっとも、彼女自身はといえば、恋多き迷える乙女で、目下の悩みはボーイフレンドに関わるあれやこれや。いつもはアルフが迷惑をかけているはずなのに、なんと恋する乙女リンにはアルフが振り回されてしまうことも。まあ、お互い様なんだろうけどさ。
アルフの一番の仲よしは長男のブライアン・タナー。小学生である故に、ブライアンは一緒になって遊んだりするだけでなく、アルフのいたずらの片棒を担がされたりして、お母さんに怒られることも日常茶飯事。いたずらじゃないけど、惑星の模型を作ったブライアンに、宇宙人のアルフだけが知っている未知の惑星があるなんていってのけ、学校の先生をも巻き込んだ大騒ぎを起こしたことも。でも、そんなブライアンも大きくなるに従い、アルフの誘いに乗ることもなくなったけど、大の仲良しは相変わらず。そもそもアルフがタナー家に居候できるようになったのもブライアンのおかげ。アルフもブライアンのことはいつも気にかけているし、ね。

ところでさすが宇宙人!アルフの金銭感覚のズレ具合はかなりのもの。ウイリーの1万5千ドルのローンを見つけたとき、その支払いについてアルフはさんざん心配するくせに、自分は化粧品の代理店販売(宇宙人がなんで?)で4000ドル分を無謀にも一気注文…。しかもウイリーのクレジットカードの使用限度額を使い切ることもしばしば。たとえば、のみ競馬に熱中して1レースに6000ドルもの大金をつぎ込むし、雑誌のおまけクーポン券を集めるためだけに山のように雑誌を買ってしまう。お金の使い方はちょっと普通じゃない、というか、単にお金のこととなるといつも興奮状態なわけで…。それでも、4000ドル分の化粧品を難なく売りさばいたり、宇宙船レンタル(!)で6000ドルの競馬の掛け金をチャラにしたりなど、なぜかなんとかしてしまう…のもアルフ流!?
アルフの母国、メルマック星との文化の違いもさまざまな衝突を生むきっかけに。たとえば、メルマックでは正しいマナーとされるゲップの連発はぎりぎりセーフ。でも、ネコを食べることとは(当たり前に)NG。しかし大食漢のアルフ、めげずにネコのえさを代用品として食してみたら、それがなかなかいけちゃったらしい(確かにまずくはないかも知れないけど…)。それにしても宇宙人の味覚は意味不明なのだ。そうそう、アルフはネコの他には虫が大好物。なめくじをゼリーで固めたなめくじゼリーがおやつ。ケートにはリビングで虫を食べちゃだめときつく言われているんだけど、ね。

ちなみに、撮影でのアルフは、歩くシーンこそ着ぐるみだけど、通常は上半身だけの人形を使っていたらしい。しかもその人形の操作には3人のスタッフがかかりっきりなんだって!あの忌々しいけれどもどこか憎めないユーモラスな表情の影にそんな苦労があったなんて、ちょっと驚きよね。
そんなアルフの愛嬌ある姿はやっぱり人形ならでは。『セサミストリート』を例に挙げるまでもないけど、アメリカ人が考え出す人形って、なぜにあんなにまでお茶目なの?アルフの彫りの深い目とその奥でクリクリと輝く黒目。しかも両耳に挟まれ、くるんとカールした前髪。アルフの全てがなんともキュート。そして、そして、歩いているシーンでしか見ることができないアルフの足の裏が、うーむむむ、カワイイ(宇宙人の…だけどね)!

そうそう、NAVI編集部では字幕派と吹替派の論争が熱い!けど、『アルフ』についてもぜひとも紹介させていただきたい!
吹き替えを担当しているのは、なんとアルフ役が所ジョージ、そしてウイリー役が小松政夫。行き当たりばったりでいい加減な性格のアルフを所ジョージが持ち前の自由奔放なスタイルで好演。そんな所の熱演に呼応するように、アルフのわがままに翻弄されるウイリーを小松政夫がおもしろおかしく演じている。2人の掛け合いがまた絶妙で、『アルフ』の吹き替えは一見(一聞?)の価値あり!なのだ。しかもこの贅沢な声優陣のせいで、日本語版DVD(もちろんビデオもない…)ができないんじゃ、な~んてウワサも飛び交うほど。
とかなんとか、紹介記事を書いているところにビッグニュースが飛び込んできました! なんとびっくり、DVD化が実現よ!ただいま入手した情報によると『アルフ』ファースト・シーズンのDVD化が決定発売は2009年夏。これからは、僕らはいつだってアルフと一緒だよ!

■ただいまNHK教育テレビで絶賛放送中
毎週 月曜日19:00~

アルフの公式HP

■『アルフ<ファースト・シーズン>コレクターズ・ボックス』2009年8月26日発売!
【価格】8,400円(税込)
【収録内容】6枚組
【発売元】ワーナー・ホーム・ビデオ

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2009.04.08

『ドクター・クイン/大西部の女医物語』

わたしはレディーじゃない!医者です!
あのドラマがDVDで戻ってきた!

マイクことミケーラ・クインはボストン生まれ。医師である父親は、すでに4人の女の子がいたため、男の子を待ち望んでマイケルという名前を用意していたが、またしても女の子だったため、ミケーラという名前に。5人姉妹のうちただ1人、医師の道を目指したが、女性である、というだけで、あちこちの医大から入学を断られ、最終的に入学できたのが、ペンシルベニア女子医専。卒業後は、父親ともに開業医として活躍していたが、父親の死とともにその職を失いそうになる…。これが現代だったら、どうということはない展開であるけれど、彼女の生きた時代は、女性の地位がまったくといっていいほど認められていない19世紀半ばのアメリカ。南北戦争やインディアン戦争といった血なまぐさい出来事が続く一方、ゴールドラッシュに浮かれまくった時代。ミケーラ・クインも女医として開業するという目標を達成するため、新天地コロラド・スプリングスへと向かうが…。

舞台となるコロラド・スプリングスは、コロラド州に実際にある都市。マイクが住み始めたころは、まだまだ町が出来上がりつつある時期で、“堅気の独身女性は1人もいない”といわれていたところ。そして床屋や雑貨屋、酒場を経営しているオトコたちも極めて排他的。“もともと住んでいた”アメリカ・インディアンと敵対しているのはもちろんのこと、自分たちの“あとからやって来た”スウェーデンなどからの移住者たちも受け入れない。もちろん、女性の医者なんて論外。そんななかで、乗馬も掃除も料理もできなかった(ボストンでは召し使いがいた…)マイクが奮闘し、だんだんと町の人々に受け入れられていく姿は爽快だ。

ということで、主人公マイク・クインをとりまく人々を紹介しよう。
まずは、マイクを女医として最初に受け入れてくれた女性シャーロットの3人の子どもたち。マシューとコリーン、ブライアンの3人は、母親の急な死によって、母親未経験、しかも家事のまったくできないマイクに引き取られるはめになる。
マイクに家を貸してくれたサリーは、シャイアンと仲のいい謎の男。雑貨屋にあった「犬とインディアン、お断り」の看板をトマホークの一撃で破壊、ケガを負ったブラック・ケトルを助けるなど、シャイアンといったアメリカ・インディアンたちを影に日向にと支援している。
町の人々も “大いなる西部”らしく個性的なヤツラが勢ぞろいだ。
なにかにつけてマイクにいやがらせをしている医師もどきの床屋ジェイク。女医の診察は絶対に受けない、と言い張る雑貨屋のオヤジ、ローレン。奴隷時代のトラウマを抱え、黒人として唯一、町で鍛冶屋を営むロバート・E。酒場の女の子にやさしいホレス。喧嘩っ早い酒場の主人ハンク。そして、男性の医師を町に呼んだつもりが女医がやってきて戸惑いが隠せない牧師のジョンソンローレンの妹、オリーブはなんやかや文句を言いつつ、マイクを助けることも。一見、排他的に見える町の人々だが、物語が展開するにつれ、さまざまな葛藤を抱えていることがわかってくる。
そして、マシュー、コリーン、ブライアンという3人の子どもたちとマイク、サリーの2人が、擬似家族からホンモノの家族へとなっていく過程は、このドラマの見どころのひとつでもあるのだ。
それだけではない。シャイアンのチーフ、ブラック・ケトルを始め、実在の人物であるシビントン大佐、カスター将軍(ほんとうは中佐)なども登場する。だいぶ脚色されているとはいえ、当時の史実がかなり織り交ぜられているところにも注目したい。

もうひとつ、当時ならではの医療技術を描いているところもポイントだ。
当時のアメリカの医療技術について記した書籍『外科の夜明け』などにもあるように、19世紀は現代医療のルーツとなるさまざまな医療技術が発達途上にあった時代麻酔の技術が確立されつつあったのもこのころだし、細菌などによって病気が感染するという考え方が周知されるようになってきたのもこのころ。マイクがコロラド・スプリングスで最初の外科的手術をしたのは帝王切開だったけれど、このような手術ができるようになったのも、麻酔技術の発達のおかげなわけで。といってもマイクが使っていたのはクロロホルムかアヘンチンキのようだけど…(きっと痛いに違いない!)。
それにしても、町の人たちはみんな暇なんだな。マイクが手術をする都度、みんな群がるんだから。電報打つだけでも人だかりだ!
蛇足だが、マイクが卒業したというペンシルベニア女子医専。これは実在したペンシルベニア女子医科大学のことだろう。当時のペンシルベニア女子医科大学には、日本からも女性の留学生がいたというから、そっちにも驚きだ。

これまでにも“大いなる西部”開拓時代を主題にしているTVドラマは、『ローン・レンジャー』『ローハイド』を始め、『大草原の小さな家』『ヤング・ライダーズ』とさまざまにあった。ただ、『ドクター・クイン』が異色なのは、当時の医療技術女性の社会進出、そしてアメリカ・インディアンを迫害してきた実際の出来事などを扱っているところにあるといえる。原題は『Dr. Quinn, Medicine Woman』。“Medicine Woman”という呼び名は、ドラマのなかでも重要な意味を持つ。マイクをとりまく社会状況に注目しつつドラマを見ていくと、アメリカ現代社会の源流となるこの時代のことがより理解できるかもしれない。

それにしても、この秀作ドラマが日本語版DVDとなって、やっと、やっと、やっと、帰ってきたことは、海外ドラマファンにとってものすごい朗報だった。マイク役のジェーン・シーモアの美しさ(元ボンドガールだもんね)もさることながら、故・范文雀さんの当時の凛とした吹き替えがそのまんまというのもうれしい!!! 
次は『ヤング・ライダーズ』の日本語版DVD化を待ち望む!



●『ドクター・クイン/大西部の女医物語 シーズン1 DVD-BOX

【発売元】   ドクター・クイン制作委員会
【販売元】  ポニーキャニオン
【発売日】  2009年4月1日
【価格】   18,900円(税抜価格 18,000円)/6枚組
(C)Episodes: © 1993 CBS Broadcasting Inc. Photos: ©1993CBS Broadcasting Inc. CBS, the CBS Eye Design and DR. QUINN MEDICINE WOMAN are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.

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2009.03.18

『タイム・トンネル』

SFタイムトラベルのオリジナルにして古典なドラマ!

登場するのは、タートルネック(…)というカジュアル?な装いが印象的なトニー・ニューマン博士と、上品なスーツをキリリと着こなしつつも、なぜかネクタイを緩めていることが多いダグ・フィリップス博士の2人の紳士。彼らが開発したもの、それが「タイム・トンネル」だ。この装置で過去から未来へ、未来から過去へと慌ただしく行き交うタイム・アドベンチャーの傑作がこの『THE TIME TUNNEL』

いきなり余談からになるけれど実はこのドラマ、総天然色(?)ともいわれたカラー放送が始まったばかりの頃の作品。そのためか、タイトルロゴとともに示されるカラー放送を意味する「IN COLOR」の文字がいかにも誇らしげに見える。当時のことを覚えている方はいるだろうか? まだカラーテレビが完全に普及していなかった時代(特に、団塊の世代か?)に、カラー番組をモノクロテレビで見ていた人々にとっては別の意味でも感慨深い作品かも!?

さて、本題、本題。
物語の舞台は、アリゾナ砂漠の地下深くに建設された研究施設。そこでは、人間を過去や未来へと自由に送り込める「タイム・トンネル」の開発が国家プロジェクトとして進められていた。その名も「TIC-TOC計画」。
もう、今でこそ使い古された設定だけど、このドラマがアメリカで放送された1966年(日本での放送は翌67年)当時としてはかなり斬新だったことだろう。しかも、アポロ計画が着実に人を月に運んでいた時代でもあり、全くの絵空事とはいえない奇妙な現実感があり、見る者を不思議に魅了させていたのでした。

初回エピソードの始まりは、10億ドル規模(!)の予算を投入したものの、一向に成果が出ないタイム・トンネルに業を煮やした上院議員が計画の中止を告げに来るという、いきなりな展開! それを知ったトニー博士は、装置の完成を信じて自らを実験体にタイム・トンネルを作動させるという蛮勇とともに過去へと飛び立ってしまう。そして、それを追うように友人であり、研究仲間のダグ博士もタイム・トンネルを通って、時空の彼方に消えていく。そういえば、80年代後半にスタートした『タイムマシーンにお願い』もよく似たパターン。

ちなみに、研究施設に設置されているタイム・トンネルは未完成ながらも、基本的な時間移動ができる程度には制御可能になっている。具体的にできることは、過去(あるいは未来)にいるトニーとダグの様子をスクリーンに表示させることや、音声による通話、研究施設から彼らのもとに物質を送り届けるといったこともできる。特に、2人を別の時空に転送させられるという設定が本作を面白くさせている最大のポイントだ。しかも、転送先の時代や空間の制御ができないところがポイント! 言い換えれば、運命という名のさいころによって行き先が勝手に決められてしまう時間旅行だ。どこに行くかは、誰にもわからない。
たとえば、タイム・トンネルで時空に飛び出したトニーとダグの2人は、最初は沈没間際のタイタニック号の船内に転送され、その次は火星探査用のロケット内部に転送されてしまうという具合で脈絡がない。しかも、転送先もノルマンディ上陸作戦直前のドイツ軍基地など、実在した事件や出来事の現場であることが多い。そんな、史実を紐解く楽しさをも取り込んでいるところが本作の魅力であり、人気を集める理由だろう。

そして、時空を飛び交う度に事件に巻き込まれてしまうトニーとダグの2人をサポートするのが、タイム・トンネルが設置されている研究施設に残るアン・マクレガー博士やレイモンド・スウェイン博士、ヘイウッド・カーク所長たちだ。しかし、彼らとて高見の見物を決め込んでいるわけではない。トニーとダグの2人をモニターできるタイム・トンネルだが、この装置は2人のいる世界と研究施設とをつなぐ役割も担っているため、トンネルを介して大戦中の不発弾が飛び込んできたり、2人を助けるためにフランス革命時の衛兵を無理矢理呼び寄せたりと結構頑張っている。時には宇宙人までもがトンネルを通ってやってきて、研究施設にある装置を勝手に眺め、「非常に原始的な装置」と酷評するといったお茶目な場面もあって、なかなか楽しい。

ちなみに、この作品は20世紀フォックスが制作にも関わっており、歴史映画や西部劇からの映像が多用されるなど、テレビドラマのスケールを越えた映像も魅力
製作・監督のアーウィン・アレンは、本作の前には本格海洋SFドラマの『原子力潜水艦シュービュー号』、お気楽極楽なSFコメディ『宇宙家族ロビンソン』を手がけた当時としては新進気鋭の若手で、その後も『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』といった劇場作品へとその領域を拡げていく。また、本作の音楽を手がけたのは、ジョン・ウィリアムズで、後にスティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカス作品などの音楽を担当することになるなど、多くの才能を排出した作品としても見どころが多い。
さらにいえば、シーズン後半で描かれる宇宙人との戦いなどは好みが別れるところだが、本作で描かれる未来人像や宇宙人像が現在のSF作品に少なくない影響を与えていることにも気付くことだろう。なかでも、光の点描に包まれる中でトニーとダグがくるくると回転しながら別の時空へと飛び越えていく時間移動のイメージは現代でも多用されており、タイムトラベルの定番といっても間違いないよね。

今となってはLD(はい、あのレーザーディスクだ!)でしか見ることができない懐かしい本作でありながら、なおも多くの人々によって語り伝えられているドラマ。それが『タイム・トンネル』だ。再放送、あるいはDVD化を望む声も多いけど、諸般の事情がそれを許さないのか…。どなたか、何とかしてくださいませ!

アーウィン・アレンの公式サイト(英語)

より以前の記事一覧

DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』