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2010.07.14

『ザ・パシフィック/The Pacific』で考える 米TVドラマが描く戦争

日本でも『The Pacific』の放送が7月18日から始まる。米では今年3~4月に放送されたばかりの、太平洋における日米の激戦(ホントのホントに激しい戦い)を描いた全10話のミニシリーズだ。映画『硫黄島からの手紙』と同じテーマなので、見てみたいと思う日本人も多いと思う。それに、沖縄での日米決戦を描いている数少ない米作品でもある。

『The Pacific』は第二次世界大戦の話だけれど、それ以降もずっとアメリカは世界のどこかで戦争を続けている。そんな国だから、TVドラマにも頻繁に戦争、軍隊が登場する。

古くは『M*A*S*H』(最終回は米TV史上最高の視聴率)、『コンバット!』(ヨーロッパ戦線が舞台)、『チャイナ・ビーチ』(ダナ・デラニー、マージ・ヘルゲンバーガーをスターに押し上げた)などがある。とはいっても、連続ドラマでは戦争がテーマというのは少なくて、これらの作品もむしろ戦場がテーマと言った方が良いかもしれない。ミニシリーズなら、戦争そのものを描いた『バンド・オブ・ブラザース』や『ジェネレーション・キル 兵士たちのイラク戦争』がある。傑作と言われるこの2作でも、ドンパチに興奮しない女性の中には、戦闘シーンは苦手に思う人もいるだろう。戦争そのものを描くのは、製作費がかかるわりに、爆発的な人気とはなりにくいのだ。むしろ『バンド~』のように、最初に放送されてから10年たった今も色あせることなく、繰り返し再放送されるのが特徴。過去の戦争を風化させないという意識もあるのだろう、『The Pacific』も同じ運命をたどるのではないかと思う。

戦場が舞台になり損ねた(!)連続ドラマには、『グレイズ・アナトミー』の脚本と製作総指揮を務めるションダ・ライムズの作品がある。ライムズは『グレイズ~』を書く前に、戦争の女性従軍記者たちのドラマを書いていたそうだ。結局、日の目を見ることはなかったけれど、これが評価されて『グレイズ~』を書くことになった。戦場といい、病院といい、つくづくライムズは、生死をかけた極限の状態での人間模様、恋模様が好きなんだと思う。

その『グレイズ~』にイラク帰りのオーウェン(ケビン・マッキッド)が登場しているように、今のアメリカのTVドラマにはたくさんの戦争帰りが登場する。同じく病院ものでは『Mercy』の主人公もイラク帰りの衛生兵だったし、『ブラザーズ&シスターズ』のジャスティン(デイブ・アナブル)はアフガニスタン帰りだ。彼らは戦争のトラウマから、社会に適合することに苦労しており、戦争がいかに人格にダメージを与えるかを示唆しているのだろう。ハリウッドは、「戦場の兵士たちには最大限のリスペクトを送るが、戦争には反対」という姿勢でほぼ一致するのではないかと思う。

元兵士たちが主人公のドラマも人気がある。全米視聴率ナンバーワン・ドラマ『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』、そのスピンオフ『NCIS:Los Angeles』も米で特に高い年齢層に人気だ。この2つのドラマは戦争や軍隊というよりも、むしろ犯罪解決ドラマ。主人公たちが規律厳しい軍人生活を送ってきたことで、身体だけでなく精神面も鍛え上げられたキャラに描かれていることも、歳を取った視聴者に愛される理由の一つであろう。

鍛えられた軍人と言えば、『ザ・ユニット 米軍極秘部隊』を忘れてはならない。戦争シーンはなかったけれど、奥さんや子どもも含めて“軍人たるもの”を描いたドラマだった。2006年3月からの放送だったけれど、2001年の米同時多発テロ(セプテンバー・イレブンス)後の愛国心の高揚、そして2003年のジェシカ・リンチ救出作戦など特殊部隊の活躍が企画の背景にあったことは間違いない。“ザ・ユニット”は軍隊というより、テロ対策のスパイ/暗殺部隊といった感じ。やはり米のTV界にとって、戦争を好意的に描くのは難しくても、軍人たち(特にエリートの)は今も好ましいキャラクターなのだ。

最後に『The Pacific』についてもう一度。主人公を含め、登場人物はほぼ若い兵士たち。描かれている言動や発言に身勝手と思えるところがあるかもしれない。けれど身勝手は兵士じゃなくても、若さの特権。明日があるかも分からない戦場でその時を懸命に生きていた、彼らへの愛情あふれる弁護が感じられる。

では日本兵に対してはどうだろう? 『The Pacific』は主人公の米軍兵士たちの回想記を元にしているのだから、最初から敵国日本にポジティブな感情を持てということ自体無理な話だ(持っていたら、ウソっぱちの作品になっていたはず)。だから最初だけ見て感想を語ることはやめた方がいいかもしれない。なぜなら、全10話を通した主人公たちの心の変化こそが、このドラマの最も描きたかった部分だからだ。私は最後までこの作品を見て、製作陣が日本兵にも軍人としての敬意を払ってくれたと感じ感謝している。

思いつく限りの戦争・軍人ドラマを挙げてみたけれど、『The Pacific』が日本人にとって、戦争を描いたもっとも重要なTV作品になることは間違いない。アメリカでしか描けない超大作。そのアメリカでも、このスケールで太平洋戦争が描かれることは二度とはないだろう。


>>関連記事: 【特集】空前のスケールで描く超大作ドラマ『ザ・パシフィック』海外ドラマNAVI的大紹介! 

>>WOWOW公式HP『ザ・パシフィック』

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ライタープロフィール

橋本裕美子

橋本裕美子
海外ドラマ好きが高じ、アメリカ在住を決行した筋金入りのドラマニア。そんなのないけど、アメリカン・ドラマ親善 大使の座を狙っている。

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