« ジェイマ・メイズ(Jayma Mays) | トップページ | シャロン・グレス(Sharon Gless) »

2010.03.03

2010年冬のTCAプレスツアーは驚き満載だった!

2010年冬のTCA(Television Critics Association=テレビ評論家協会)プレスツアーは、1月8日『フラッシュフォワード』のセットビジットを皮切りに、9日~12日地上波局、14日〜17日をケーブル局が担当し、合間1日半にPBSが20作品余りを発表、18日夕方『Glee』のセットビジットで完了した。

WGA(Writers Guild of America=米脚本家組合)のストに始まり、配信形態の分散化によるテレビ業界の低迷、不況による予算削減など、弱り目に祟り目で、ここ数年プレスツアーの開催自体が危ぶまれてきた。セットビジット数を増やす一方で、パーティーや資料等を削って経費削減を計っているものの、評論家を敵対視した投げやりな2009年冬のツアーに比べると、今年は和やかな雰囲気で行われた。

今冬、全米から集まったTCA会員は100名余り。明らかに「ツアー仲間」は減少しているし、オンラインのみのブロガーが激増し、パネルインタビュー中もキーボードを叩く音が耳障りで集中力が試された。インタビューのため舞台に登場する制作陣や俳優の目にはどう映っているのだろう? 折角、遠路遥々来てくれたのに、失礼ではないか?と長年思っていた私。『となりのサインフェルド』でお馴染みのジェリー・サインフェルドが着席と同時に、「ノートパソコンに隠れて、何やってんだか?ちゃんと聞いてる?お願いしますよ!」と発言。かぶりつきで真面目にインタビューに集中している私が一番言いたかったこと!よくぞ言ってくれました!! LAに住んでいても、こんなに近くでスターを観察できる機会は滅多にない。パソコンの画面に釘付けの「ながら族」はツアー会場に来る意味が無いと思う。

2008年夏に始まった「寒々ツアー」、2009年冬の「評論家敵対視ツアー」、同年夏の「諦めムード蔓延ツアー」と変遷し、2010年冬は「コジンマリ和やかツアー」であった。ただし、地上波局の春の新番組はドラマ7本、コメディ1本、リアリティ1本と開いた口が塞がらないお粗末さ。しかも、地上波局だけでは1日が埋まらないため、姉妹ケーブル局の「はー?それ何?」と言いたくなる作品で誤摩化された感がある。

●こんなのアリ!? 主演俳優からは撮影現場への招待メール!
そんな中、パーティーやセットビジットの招待状に混じって、新年早々に『Breaking Bad』の主役ブライアン・クランストンからメールが舞い込んだ。『マッドメン』に続くAMCのオリジナル作第二弾は、クランストンが2008年エミー賞主演男優賞、2009年のTCA俳優功労賞も受賞して、ますます好調な番組。
「TCA授賞式の会場で、会員各位にお礼を申し上げたかったのですが、メールにて失礼します」に始まって、名誉あるTCA賞に謝意を表明したうえで、アルバカーキーの撮影現場にご招待したいという文面。主演俳優自らのお誘いは、前代未聞! アルバカーキーに自腹を切ってのこのこ出かけて行くほどのファンではないのが残念だが、決して悪い気はしない。この番組の成功の秘訣は、「バレー出身の一介の役者」の謙虚さと人柄(バーバンクやノース・ハリウッドなどを含む地域をサンフェルナンド・バレーという)のようだ。
さらに、同作のパネルインタビューに登場した、アーロン・ポールに昨年エミー賞助演男優賞を獲得できなかった遺憾の念を伝え、今年こそ頑張って!と声をかけたら、「そんなこと言ってくれるのは君だけだよ!」と感謝感激のハグ。画期的な作品と、お高くとまっていない俳優達のコンビは鬼に金棒! 今年も、エミー賞候補に挙がるに違いない。

●編成ミス!?をしたNBCに起死回生はあるのか?
暗中模索中の業界故に、今年はテーマは見出せなかったが、NBCの「今世紀最大の編成ミス」は毎日のように話の種となった。昨秋、トーク番組の老舗『The Tonight Show』の司会者ジェイ・レノがコナン・オブライエンに番組を譲った。停年退職を決めていたレノを引き止める手段が、平日午後10時のドラマ枠を明け渡すことだった。しかし、レノの新しいトーク番組に視聴率をとれず、ドラマ好きの「NBC離れ」が浸透したため、夜10時枠のテコ入れの苦肉の策がツアーで発表された。結局、レノが元の鞘に収まり、オブライエンが巨額の違約金を手に押し出されて、一件落着したNBCのお家騒動である。
深夜以降のトーク番組は固定ファンはいるものの、ドラマファンの数とは桁違い。週に5時間もドラマが減り、結局得をしたのは視聴者が流れたABCCBSさらにケーブル局。ゴールデン・グローブ賞を受賞した秀作『The Good Wife』のジュリアナ・マーグリーズがドラマ枠を死守するCBSに謝意を表したが、NBCの誤算を「それ見たことか!」と悦に入る人の数は計り知れない。しかし、この姑息な、かつ近視眼的な編成を決めたベン・シルヴァーマンがすでにNBCを去り、責任を問われることなく業界でぬくぬくと存続できるとは…。

そして、お家騒動の「張本人」が疎遠にした著名プロデューサーたちが、「NBC離れ」解消を目指して秋の新番組を企画中、「乞うご期待!」的発表があった。最近、ヒットがないデビッド・E・ケリー(『アリーmyラブ』『ボストン・リーガル』)、ハンク・スタインバーグ(『FBI失踪者を追え!』)、J.J.エイブラムス(『エイリアス』『LOST』)、ジェリー・ブラッカイマー(『CSI:』シリーズ)等々。
オリジナルが秀作だっただけにリメイクは必ず「ポシャる」との下馬評が高かった『ロックフォードの事件メモ』をデビッド・ショア(『Dr.HOUSE』のクリエイター)が手掛けるのは朗報中の朗報といえる。ショアのカナダ的感性で、21世紀のロックフォードを描いて欲しいものだ。ただし、起用された俳優にがっかり…。

今回のツアーでは、新作、継続番組も含めて、9日間に96回のパネルインタビューが開催された。セットビジットは『フラッシュフォワード』『Community』『ママと恋に落ちるまで』『Modern Family』『CHUCK/チャック』『The Middle』『Romantically Challenged』『Glee』の8件。

●継続番組好調のため、新作不要のケーブル局
ベーシック・ケーブル局は例年のごとく、30作余りを2日半に詰め込んで紹介したが、特に目星しい新作はSTARZ局の『Gravity』のみ。4月23日放送開始のため、パイロットは3月末まで入手できないが、自殺未遂者の支援グループに通う男女のコメディ。WGAのスト中、仕事にあぶれるは、無収入、公私とも弱り目に祟り目だったクリエイターが、「人生のどん底」で垣間見た死への願望。一抹の光は、人間は独りぼっちではない、苦しいだけが人生ではない、と学んだこと。ユーモアたっぷりに描くというから、本作がヒットすれば、怪我の功名!になる。 『チャームド~魔女3姉妹』以来、見かけなかったイヴァン・セルゲイ、モデル出身のレイチェル・ハンターなどが出演する。

継続番組『ダメージ』シーズン3の出演者マーチン・ショート、リリー・トムリンは衛星で参加したが、グレン・クローズ以下レギュラーとクリエイター3人のパネルインタビューは特に面白かった。今シーズン、パティー・ヒューズの標的はトービン一族。禁固150年の刑で服役中の元NASDAQ会長バーニー・マドフによる史上最高の投資巨額詐欺事件が土台となっている。毎シーズン、全く質が落ちないところが、『ダメージ』の凄さだ。

プレミア・ケーブル局HBOの新作は『Treme』『You Don’t Know Jack』の2本。いずれも放送開始は4月以降となるが、『Treme』は2005年のハリケーン・カトリーナの犠牲となったニューオーリンズのトレメー地区に住むミュージシャン、シェフ、マルディ・グラ・インディアンや一般市民の再建活動と日々の苦難を、ジャズやブルースをバックに描く。パイロットはまだ観ていないが、好きか嫌いかはっきりとわかれる個性のきつい作品のように見受けた。
『You Don’t Know Jack』は、別名「ドクター・デス」の悪名高きジャック・カヴォーキアン医師の安楽死カウンセリングと自殺補助の支援者、安楽死裁判の模様などを描く。人間の「死ぬ権利」について考える作品らしいが、カヴォーキアンを演じるのはアル・パチーノ、ヘムロック協会の活動家ジャネット・グッドにはスーザン・サランドンが起用されている。「死」で「生」を語った『シックス・フィート・アンダー』で名を挙げたHBOらしい作品といえる。

●期待の2作はすでに終了の憂き目に。夢も希望もない地上波局   
地上波局の注目の新番組は、ABCの『The Deep End』とFOX から『Past Life』のわずか2本と寂しい。
『The Deep End』はLAを舞台にした、弁護士1年生男女5人の職場ドラメディ。『アリーmyラブ』ほどハチャメチャではないが、弁護士を3年体験したクリエイターが、事務所に入社した時の体験談をもとにしているだけに、現実味たっぷり。納得がいかないこと、許せない不正行為等、一人前の弁護士になるためには、私生活どころか信条、価値観などを犠牲にしなければならない情け容赦ない法界を描く。1月末よりすでに放送開始されていて、私は気に入っているが、シーズン2はないかも? 単なる『フラッシュフォワード』の穴埋めにするのは、もったいない。

『Past Life』は2月初旬に始まり、3話まで放送後、すでに中止されてしまった。M.J. ローズの小説『The Reincarnationist』を基に創作された犯罪捜査モノだが、ひねりは過去生。癒しと希望に満ちあふれた、極めてユニークな作品だったので、残念無念。やはり、輪廻転生が眉唾扱いされる西洋文化では時期尚早だったか?

月曜夜2時間のコメディ枠が最高潮のCBSは、『ビッグバン★セオリー~ギークなボクらの恋愛法則』と『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』のプロデューサー3人(チャック・ロリー、ビル・プレイディー、リー・アロンソン)のパネルインタビュー、姉妹プレミア・ケーブル局Showtimeのヒット作『Nurse Jackie』『United States of Tara』のシーズン2のパネルインタビュー、昨夏紹介された『Life Unexpected』が1月18日から始まるため、2回目のパネルインタビューを開催。プレスツアーの初日(土曜日)早朝ホテルに向かう途中、車体に『Life Unexpected』の大型広告をつけて走るバスを見かけた。CWが、この作品に期待を寄せている証拠である。

●『LOST』は最終シーズン開始、ポスト『LOST』は?
LOST』の最終シーズンを1カ月後に控えたキャスト7人とプロデューサー2人のパネルインタビューもあった。
当然のことながら、『LOST』完了後どうするのか?という質問に、「仕事探さなくちゃ!」と戯けるテリー・オクィンに対して、ジョシュ・ホロウェイは「停年退職だよ! 時々『LOST』のコンベンションに顔出す、優雅な暮らし」と余裕しゃくしゃく。この日、姿を現さなかったシュー・フォックスは、すでにテレビ界とはおさらば!と公言している。
「6年も共にした家族がバラバラになるのは辛いけど、太平洋の孤島から解放されるのはうれしいわ」と語ったのは、エヴァンジェリン・リリーだったが…。パネルインタビュー後、化粧室でばったり、化粧直しをしながら話が弾んだ。「地上の天国とはいえ、仕事をしていると絶景も数日で単なる背景化しまうし、島を一周しても精々半日。カナダの大自然の中で育ったから、息が詰まる6年だった」とリリー。さらに、「公には言えなかったけど、たまたま転がり込んだケイト役。元々、役者になりたいと躍起になっていたワケじゃないから、何か他のこと試してみるわ」と、役者稼業はもう沢山!を告白した。「オフレコ」と解釈して律儀に報道を控えていたが、2月1日ハワイで開催されたプレミア・イベントで同様のことを公言。ゆえに、報道禁止は解禁されたと解釈しよう。

一世を風靡した『LOST』の最終シーズン。ポスト『LOST』を狙う作品が目白押し?かと思いきや、意外にも穴埋め的番組ばかり。今秋にジャーンと大型番組を発表しようとどの局も虎視眈々なのだろうか? 
嵐の前の静けさのような、穏やか、和やかな冬のプレスツアーであった。


■『LOST』ファイナル・シーズン
【放送情報】AXN ファイナル・シーズンが、海外ドラマチャンネルにて、5月プレミア放送決定!シーズン1~5連続放送中!
<字幕版>毎週月曜~金曜18:55~19:50 ほか
<吹替版>毎週月曜~金曜12:55~13:50ほか
(C) ABC Studios 


ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに会員として参加する唯一の日本人。ATAS会員。心の糸に触れた作品、目からウロコを体験させてくれる放送作家、元気をくれる俳 優等を紹介するのが生き甲斐のテレビ評論家。テレビのメッカでテレビへの熱い想いと畏敬の念を燃やし、「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きています。 最新のモットー「Leap! And the net will appear.」は『名探偵モンク』から学びました。

« ジェイマ・メイズ(Jayma Mays) | トップページ | シャロン・グレス(Sharon Gless) »

海外ドラマを100倍楽しもう!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/209472/47713504

この記事へのトラックバック一覧です: 2010年冬のTCAプレスツアーは驚き満載だった!:

« ジェイマ・メイズ(Jayma Mays) | トップページ | シャロン・グレス(Sharon Gless) »

DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』