« アラン・デイル(Alan Dale) | トップページ | 海外ドラマ逆輸入実現!? 『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』の吹き替えキャストとプロデューサーを直撃! »

2010.01.11

『ビッグバン★セオリー~ギークなボクらの恋愛法則』のシェルドンに突撃!

『となりのサインフェルド』『フレンズ』以来、米国のコメディは火が消えたようで、長年TCAプレスツアーで新作が発表される度に、クリエイター諸氏は「コメディが下火になって久しいが、理由はどう分析しているのか? 本作がコメディ・ブームに火をつけられるか?」の詰問に悩まされている。

日本でもお馴染みの『ダーマ&グレッグ』『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』を世に送り出したプロデューサーのチャック・ロリーは、各作品の最後にロゴ代わりに長年書き続けている「独り言」に、「テレビ評論家に最近のコメディについてコメントを求められても無視すること。やつらの罠だ!」と公言している。笑いを生み出す、ヒットを続出することが如何に至難の業であるかの証拠だといえる。

コメディは出だしから突っ走れるものではない。登場人物を設定し、出演者の息がぴったりになるまでに時間がかかるからだ。2007年あたりから、オタクが主人公のコメディが登場し始めたが、ロリーの最新作『ビッグバン★セオリー~ギークなボクらの恋愛法則』は視聴率も確実に上昇、すっかり定着した感がある。
特にシーズン2は次回が待ち遠しくなるほど、5人のキャラクターの性格、こだわり、家族関係が定義され、キャラクターの組み合わせによって、実に面白い化学反応が生まれ始めた。シェルドンとペニーのかけあいは、とりわけお腹が捩れる。シーズン2以降の公開録画では、参加者がキャラクターを知り尽くしているため、台詞や行動の前に「おち」を察して笑いが起こるそうだ。おかげで、シーズン4まで制作が確約された珍しい作品となった。

パイロットは、意思疎通ができない物理オタクと凡人のコミュニケーションのすれ違いが大いに笑えたものの、85点と評価したのは、まだキャストの性格がしっかりと定義されておらず、少々ぎくしゃくしていたからだ。要は、CBSの「忍耐力」がいつまで続くかで、本作の将来が決まると判断した。しかし、第4話「オタク青年と母親の法則」を観て、物理学者になった神童シェルドンを演じるジム・パーソンズの演技力に圧倒された。
早速、番組の広報担当者にパーソンズにインタビューしたいと申し込んだほど。ほとんどのテレビ評論家が「本作には将来はない、4、5話でぽしゃる」と高を括っていた時点のことだ。ロリーが制作するコメディはどれも昔ながらのコメディ形態で公開録画されており、翌週の録画前にインタビューに出向くことになった。正しく、まだインタビューが殺到していない証拠である。2007年11月くらいのころだ。

ステージ中二階にある、パーソンズの化粧室に通された。レトロなインテリアだが、結構広く、照明を落とすと昼寝もできそうな、心地良い環境。パーソンズは「僕の部屋が一番広いんだよ!」と嬉しそう。
ロリーに「シェルドンそのもの!」と言わせた程だから、パーソンズが番組の顔=この人無しでは、番組は成り立たないはずなのだが、その自覚がまだないのか、謙虚そのものだ。初めてのシリーズ主役について「台本を読んだとき、この役なら誰よりもうまくできる!と思った」とか。
「やりたい役とはまり役が一致することは稀なので、オーディションは万全を期して臨みました」と言うが、果たしてどんな準備をしたのだろう? ロリーと昔コンピュータ・プログラマーだったビル・プレイディーの両プロデューサーとのオーディションを経て、撮影所とCBSのお偉方と面接した後4時間で決まった。
「不安から『やっぱり、駄目か?』に変わって、どんどんパニック状態に陥ってしまう4時間でした」と今では笑い話だ。

テキサス州ヒューストン生まれ。ヒューストン大学で演劇専攻、大学院ではコミュニケーション/テレビ/映画を研究したが、両親にいわせると子どもの頃から映画スターになると宣言していたそうだ。特に反対されたワケではないが、「安定」を求めて、大学卒業後就職した。しかし、周囲に役者志望が大勢いたことも手伝って、演劇を専攻した仲間7人とニューヨークに集団引っ越ししたため、心細くなかったと語るパーソンズ。
ニューヨークに移ったことが、役者になる「初めの一歩」だったが、「苦労した感覚がない、ラッキーな人間です」と言う。なるべくして、役者になったというか、才能ある人が醸し出す余裕が読み取れた。

「小学校の同級生に紙を食べる変な子がいました。今思えば、頭が良すぎて、僕たちとは比べものにならないレベルのことを考えていたのかなと、時々、あの子を思い出します」と身近なオタク体験を語るパーソンズ。オタクも度の問題だと思うが、本作ではシェルドンは自覚症状ゼロのオタク、レナードは“いやいや”オタクと、バランスが絶妙!
「レナードはシェルドンを理解できる、天才と凡人の間を行き来するオタクです。ハワードとラージは専門が違いますから、4人の異なったフィルターを通して世間を見ています。ただし、“いやいや”オタク以外は、生き甲斐や情熱を追求しているので、決して卑下しないところが明るくて良いでしょ?」と、本作の人気の秘密を指摘する。

最も苦労するのは、言わずと知れた専門用語。ひどいときには数ベージに及ぶ台詞を覚えなければならない。
「舌がもつれるような専門用語をいかにも自然に口にしながら芝居するのに、神経がピリピリ(笑)」とパーソンズ。最近は「内容がわからなくても、まず台詞を紙に書き写して、練習します」と意外な方法を明かしている。
舞台出身なので、公開録画は一番心地良い環境。水を得た魚のように、毎日職場に行くのが楽しくて仕方ないのだとか。

このインタビューの後、何度か撮影現場を訪問する機会に恵まれたし、人気が上昇してきたため、評論家嫌いのロリーがパネルインタビューに参加するようになった。それが功を奏したのか、2009年のTCA(テレビ評論家協会)のコメディ俳優功労賞はパーソンズ、最優秀コメディは『ビッグバン★セオリー』が受賞した。数日前には、エミー賞コメディ部門の最優秀男優賞候補に挙がったばかりのパーソンズは、驚きを隠せない様子だった。TCA授賞式で受賞の祝いの言葉を述べようとする私に、「放送開始直後に、僕の存在を認めてインタビューしてくださったおかげ!」と逆に先を越されてしまった。「この人は大物になる!」と思った人がどんどん成長していくのを目撃するのはうれしいものだ。

『ビッグバン★セオリー』は、頭でっかちで社交性の無いオタクを笑いのネタにした作品ではない。オタクだって人の子、凡人と同じように喜怒哀楽を体験して生きている。ただ、何に「こだわる」か、焦点が違うだけなのだ。実は、私の周辺にもオタクが数人いて、これまで鬱陶しいと思ったことが何度もあった。しかし、この作品を欠かさず観るようになって、周囲の人間の感情や反応を読み取ることは二の次、自分が生きている「世界」がいかに機能しているかにこだわり過ぎて、空気が読めないのだと悟った。笑っているうちに、オタクの気持ちが理解できるようになり、優しく見守れるようになるとは、コメディの姿を借りた啓蒙作品といえるのではないだろうか? 
理屈は抜きにして、楽しませてくれって? 私は特に面白い逸話の録画を溜め置きし、落ち込んだときのカンフル剤として利用している。
ぜひともお試しあれ!

※写真は2009年8月TCA授賞式のレセプションにて

ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに会員として参加する唯一の日本人。ATAS会員。心の糸に触れた作品、目からウロコを体験させてくれる放送作家、元気をくれる俳 優等を紹介するのが生き甲斐のテレビ評論家。テレビのメッカでテレビへの熱い想いと畏敬の念を燃やし、「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きています。 最新のモットー「Leap! And the net will appear.」は『名探偵モンク』から学びました。

« アラン・デイル(Alan Dale) | トップページ | 海外ドラマ逆輸入実現!? 『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』の吹き替えキャストとプロデューサーを直撃! »

海外ドラマを100倍楽しもう!」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。NY在住のthe big bang theory ファンです。
息子に面白いとすすめられ、見始めたらすっかりはまり、DVDまで買ってしまいました。
Sheldon役のジム・パーソンズ最高!!
ところで、Sheldonは自閉症の一種であるアスペルガー症候群の症状に当てはまるように思います。番組制作担当者は否定しているそうですが、自閉症の息子を持つ私としてはこういう人種が世の中に存在することを知ってもらえてうれしいです。
Megさん、番組が始まってすぐにジム・パーソンズにインタビューするなんてすごいですね。あなたの目は確かでした。
Megさんありがとう!!

Superdramatvで一話目見終ったらもうファンでした。最高に面白いです。ラージのみたく女と喋れない男は多分沢山いるだろうし僕も少しそんな感じなんで自虐的に笑わせてもらってます。シェルドンが変人過ぎてレナードがかなりまともに見えます。てかレナードは顔が冴えないだけで中身はまともですよね。

NYの直子さん
お忙しい中、コメントを書いてくださったこと、そして「確かな目」を褒めてくださったこと、じーんと来ました。発信するだけで、めったに手応えを感じないので、頂戴した有難いお言葉は今後の励み、明日の活力になります。ありがとうございました。
米国にお住まいなので、きっと気が付いておられるとは思いますが、今年テレビは「アスペルガーの年」。ここ数年、心の病がとりあげられ、公に対話が始まりましたが、「Temple Grandin」や「Parenthood」でアスペルガーがやっと日の目を見た感じですよね?プロデューサーは敢えて認めませんが、シェルドンもそうだし、「Bones」のブレナン博士もアスペルガーだと言われています。こういうキャラがもっと増えれば、アスペルガーへの理解が深まるのではないでしょうか?テレビの啓蒙力ってすごいなーと今更ながら思います。
Meg Mimuraで検索して、他にどんな番組にハマっているか等、覗いてみてください。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« アラン・デイル(Alan Dale) | トップページ | 海外ドラマ逆輸入実現!? 『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』の吹き替えキャストとプロデューサーを直撃! »

DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』