« 新シーズンも続く!?『グレイズ・アナトミー』シアトル・グレースはこんなハレンチな病院だった! | トップページ | ミシェル・トラクテンバーグ(Michelle Trachtenberg) »

2009.10.19

米国ドラマに進出する日本人俳優たち。彼らは日本のテレビの救世主となるか!?

エミー賞特集の取材前に掲載したコラム【海外ドラマはライバル!? 日本が100%ドラマ輸入国にならないために!!】の中で、僕はこんな提言(推測?)を書いた。
「今後、インターネット環境の発展で、視聴者1人ひとりが好きなものを好きな時間帯に観るライフスタイルが進み、各国の作品群が国境を越えて無料で配信されたら、果たして日本の視聴者は国内のテレビ局のドラマコンテンツを今までのように見続けるだろうか?」
「もし、日本の俳優陣が(スポーツ選手のように)今後さらに海外で活躍の場を広げたら、世界のステージで真剣勝負する姿に多くの日本国民が魅了され、一喜一憂する日々が来る」
この言葉が、にわかに現実味を帯びている。

新たな波が生まれようとしている…。

この10月、日本の海外ドラマファンにとって嬉しいニュースが飛び込んできた。
真田広之さんの『LOST』出演が正式発表されたのだ。
ハワイではすでにそのシーズン6の撮影は始まっているそうで、“ストーリーに重要なスパイスを与える役”として登場する。クリエーターによれば、『スター・ウォーズ』の“オビ・ワン・ケノービ”と『ベストキッド』の“Mr. ミヤギ”を彷彿とさせる伝道師的な「道厳(DOGEN)」という役柄らしい。
最終シーズンにあえて日本人のキャラクターを連続して(準レギュラー)登場させるという決断には、ABC局のこの役への大きな期待が見て取れる。
これまで映画に挑み続けてきた真田さんが、人気テレビドラマに参入する意味合いは大きい。
映画館の観客数に比べ、リビングでテレビドラマを楽しむ視聴者の数は膨大だからだ。
『LOST』のように世界中で愛されている番組であればなおさらである。

実力のある“いい日本人俳優”が物語の中心的な役で活躍し、人々の心に響く演技を見せることができれば、
「日本人のアーティストは繊細な表現ができるんだな…」
と、業界や視聴者が広く認識することとなる。
そして日本をはじめ各国でその番組がヒットすれば、そこはさすがにショウビジネスの世界、
「また日本人俳優を起用してみよう!!」
というマーケティング戦略が、必ず促進されるはずだ。

2009年も、日本人の活躍は少しずつではあるが、広がりを見せている。
それは“既存のスター”に限ったことではない。
アメリカでキャリアをスタートさせた俳優陣もチャンスを掴みつつある。
HEROES/ヒーローズ』の第1シーズンから、ヒロ・ナカムラの姉キミコを演じている中村佐恵美さん(『ヒマラヤ杉に降る雪』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』)は、現在放送中のシーズン4で再びスポットが当てられている。ちょっとしたロマンス(!?)まであるのだが、ストーリーはこれから観るであろう皆さんのために内緒にしておこう。
そのキミコの14年前を演じているのが奥野里美さんだ。シーズン4の初回に登場している。
ロサンゼルスの演技学校で勉強をスタートした彼女は、そのフレッシュな存在感と屈託のない笑顔で、爽やかな印象を残す。
彼女は、AFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)で製作した短編『THE 8TH SAMURAI(八人目の侍)』に出演、僕とも共演仲間だ。メインキャストとして参加したこの短編でも、ユーモアのある飄々とした演技を見せている。今年、彼女はMTV局のTVムービー『Hard Times』でナツミという役にも抜擢された。日本で彼女のファンが増える日もそう遠くはないだろう。

80年代、90年代、そしてごく最近まで、アメリカの映画やテレビドラマの中で“日本人”を演じてきたのは日系アメリカ人スターのジョージ・タケイさん(ヒロの父、カイト・ナカムラでおなじみ)やタムリン・トミタさん(第3シーズンでヒロの母イシ・ナカムラを演じた)らが代表格だった。もしくは、中国系や韓国系の俳優が“それらしく”演じてきたのがハリウッドの歴史だ。
しかし、ようやく、流れは変わりつつある。

アメリカの作品も、潤沢な製作費を確保し続けるためには、もはや海外のマーケットを無視できなくなっている。いい加減な外国文化の描写を避けなければならない時代に突入したのだ。
つまり、
「日本人役には生粋の日本人を起用する」
それが常識になる日は近い、ということだ。

映画界では2003年からその流れはあった。
しかしここに来て、テレビ界もその流れを汲む方向に動き出したのだ。
まだ発表はできないが、この秋話題の大作ドラマで、多くの日本人俳優が登場するエピソードの撮影がまさに今、進んでいる最中なのだ。
このニュースはまもなく日本のメディアを騒がせるに違いない。
そしてこの時代の潮流は、良くも悪くも余波として、いや直接の波として日本を襲うだろう。

時代の波は、すでに日本のテレビ局の編成に変化を起こしている。
フジテレビが「土曜ドラマ」(毎週土曜23時10分~55分)の枠で、この10月から『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』を放送することを決めた。映画『ターミネーター2』のその後を描くSF大作ドラマだ。もちろん日本の地上波局初登場である。しかも、2シーズン連続で放送するというから驚きだ。
これまで、日本の地上波局では『24‐TWENTY FOUR‐』、『プリズン・ブレイク』、『HEROES/ヒーローズ』といった海外ドラマを、大抵の場合午前2時前後という(熱烈なファンしか見届けないような)深夜枠で放送してきた。
『サラ・コナー クロニクルズ』の編成を決めた担当者は、
「最近ではさらに海外ドラマも多様化が進み、大変人気が高くなってきていますので、その中でも現在、特に人気を博している本作品を新しい試みとして土曜の23時に編成することを決めました」
と、その編成意図をメディアに語っている。

僕は、この英断を、ここから未来への編成の大シフトの入り口だと見ている。
海外ドラマを夜11時台とはいえゴールデンタイムの一角、しかも“既存のドラマ枠”に組み込むということは、テレビ界にとっては大きなリスクも孕んでいる。
なぜか?
深夜枠ではなく、ゴールデンタイムに近い時間帯にアメリカのドラマが日本のお茶の間に浸透するということは、アメリカの製作側とすればうれしいことだ。
日本の局側としても、視聴率が稼げればこの企画は大成功なのだろう。
しかし同時に、地上波を楽しむ多くの日本の視聴者は、毎週(無料で!)緻密なストーリー展開と深みのある映像を目の当たりにすることになる。当然のことながら、『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』の撮影や脚本や編集や美術のクオリティと、日本の国産のドラマのクオリティを比較し始めるようになるのは避けられない。
もし、この試みが視聴率や広告費アップにつながったとしたら、この動きには拍車がかかる。
それが真田さんが出演する『LOST』のような作品ともなれば、日本人が活躍するだけにさらに強力なコンテンツとなるはずだ。
もっと早いゴールデンの時間帯に、全シーズンを連続放送するような展開さえ生まれるかもしれない。

ドラマ製作には、バラエティや報道番組とは比較にならない程多くの予算と時間を費やさなければならない。
今、日本のテレビ各局は広告収入の激減に苦しんでいる。
自局で、人気タレントを揃えて作ったドラマが思うような視聴率を叩き出せなくなれば、海外ドラマの放送権が多少高額であったとしても、自分たちでわざわざ作るより、いいコンテンツを買って放送したほうが早い!という選択に踏み切ってもまったく不思議ではない。そこに日本人が出演していれば、放送する価値も高まり、スポンサーもその編成の決断に乗りやすいだろう。

かつて、テレビ朝日が『X‐ファイル』を連続放送して大きな人気を集めたことがあった。
しかし、当時の“単発”のビジネスとしての放送と、海外ドラマが大ブームを起こしている今とは、状況と波の大きさが異なる。今は単発の波ではない、いくつもの波が同時に起きている。野球やサッカー界に起きたように、この波が津波となってマーケットや編成を一変させる可能性は大なのだ。

『ターミネーター:サラ・コナー クロニクルズ』の地上波“ドラマ枠”での放送決定と『LOST』の真田広之さん出演の2つのニュースには、米国のみならず、日本のテレビドラマと俳優陣の方向性を左右する兆しが垣間見える。

未来が、我々視聴者/俳優/テレビ関係者に語りかけている、予告に思えてならないのだ。

※写真は、撮影現場でのマシ・オカ氏と奥野里美さん

『LOST』シーズン5 AXN独占!日本初放送中!!
【字幕版】毎週日曜21:55~22:50 ほか
【吹替版(二カ国語)】毎週木曜23:00~23:55 ほか

『ターミネーター サラ・コナー クロニクルズ』
毎週土曜日 23:10~ フジテレビにて放送中!

ライタープロフィール

尾崎英二郎

尾崎英二郎
リアリズムを追求する米国の演技手法を日本で学び、NHK『あぐり』でTVデビュー。99年のNYオフ・ブロード ウェイ公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』で現地メディア批評家に演技を称賛され、その後アメリカの映画/TV業界を目指す。03年、侍のアクションメン バーとして出演した『ラストサムライ』をきっかけに人脈を広げた。06年に 主要キャストとして日本から抜擢された『硫黄島からの手紙』でハリウッドへの扉をこじ開け、ついに念願の本格渡米を実現。
初めての米TVシリーズ出演となった『HEROES/ヒーローズ』など自らの体験をもとに、ハリウッドのシステムの凄みを伝える。
尾崎英二郎 オフィシャルサイト
(ただいま、ファンサイトにてメールマガジン会員募集中!

« 新シーズンも続く!?『グレイズ・アナトミー』シアトル・グレースはこんなハレンチな病院だった! | トップページ | ミシェル・トラクテンバーグ(Michelle Trachtenberg) »

海外ドラマを100倍楽しもう!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 新シーズンも続く!?『グレイズ・アナトミー』シアトル・グレースはこんなハレンチな病院だった! | トップページ | ミシェル・トラクテンバーグ(Michelle Trachtenberg) »

DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』