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2009.09.21

プレスツアーで感じたアメリカ地上波局の危機

TCA(Television Critics Association=テレビ評論家協会)プレスツアーに参加するようになって、早6年。今夏は例年より3週間ほど遅く、7月28日から4日間をケーブル局が担当、公共放送のPBSの2日を挟んで、8月3日から8日までが地上波局の計12日間だった。
秋の新番組は春にパイロットを撮影した後、シリーズ化が決まると、通常8月辺りから2話以降の撮影が開始される。従って、これまで地上波局は全米あるいは全世界に散らばって休暇あるいは映画撮影中の俳優や制作陣をプレスツアーのためにLAにかき集めていた。番組の宣伝費で落とせるにしても、経費は莫大だったはず。ツアー開催時期をずらせば、セットで撮影の合間にパネルインタビューが実施でき、時間も経費も削減でき、一石二鳥なのだ。地上波局のたっての望みが、今年叶ったワケだ。
しかし、開催時期の変更や出版業界の低迷から、今夏、全米から集まったTCA会員は120名余り。毎夏、2週間近くホテルに缶詰状態で、朝から晩まで顔を突き合わせていた「ツアー仲間」に会えず、紙媒体の前途を示唆していた。その分、オンラインのみのブロガーが、幅を利かせ始めたのも時代の流れだ。

参加できた評論家達の間では、これが最後のツアーかも?という不安が漂い、従来の「毎食、チキンばかりじゃ飽きる!」とか「ホテルのエレベーターが超鈍い」等の重箱の隅を楊枝でほじくるような不平不満が耳に入らなくなったのは、怪我の功名だ。何にでも感激、感謝する私の存在が過去ほど目立たないツアーとなった。
しかし、FOXのオールスター・パーティーで、『BONES-骨は語る-』のクリエイター、ハート・ハンソンから、真顔で「こんなこと毎日やってると、飽きない?」と聞かれた。ありがた〜く、わくわくしながら参加させていただいている私は「こんな楽しいこと、毎日させていただいてるのに、文句を言ったら罰が当たります」と返答。「その心意気が顔に出てるね!」とお褒めの言葉を頂戴した。逆に、評論家の前に姿を現すことに気後れし、緊張しまくる役者や放送作家が大勢いるのは意外な発見だった。

2008年夏に始まった“寒々ツアー”、そして今年1月の“評論家敵対視ツアー”に引き続き、今回は“諦めムード蔓延ツアー”となった。WGA(米脚本家組合)のストの影響はいまだに尾を引いており、地上波局の新番組はドラマ12、コメディ8本と寂しい限りだ。ただし、ケーブルとPBSはまだ勢いがあり、オバマ政権のスローガン「変化」「希望」「人類皆兄弟」がテーマの新番組が続々と紹介された。
今夏は新作、継続番組も含めて、126回のパネルインタビューが開催された。セットビジットは『Three Rivers』『NCIS: Los Angeles』『Dollhouse』『Castle』『The Office』『プライベート・プラクティス 迷えるオトナたち』『BONES-骨は語る-』の7件。8月1日午後8時からTCA賞授賞式も開催され、盛りだくさんの12日間であった。

●今夏は新作不足(?)のケーブル局
ベーシック・ケーブル局は1月と同じく、30作品余りを2日半に詰め込んで紹介。視聴率が確実に伸びている主要ケーブル局は、オリジナル作品が好調で、継続番組が多数あるため新作発表が少なかった。
今夏、ケーブル作品で唯一「これだ!」と思ったのは、USA局(米国では『名探偵モンク』『BURN NOTICE~消されたスパイ』等をオリジナル番組として放送)の新番組『White Collar』。レオナルド・ディカプリオ主演の映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』が大好きというクリエイター、ジェフ・イースティンの手になる犯罪アクションを背景にした男の友情とロマンのドラマ。天才詐欺師ニール・キャフリーと、3年追跡してやっと逮捕にこぎ着けた、聡明だがダサイFBI捜査官ピーター・バーグのイタチごっこから生まれる友情を描く。スマートで女は笑顔だけで操れるキャフリーにもアキレス腱が…。60年代の“ラット・パック(いわゆるシナトラ一家)”風のキャフリーのファッションが新鮮な上、知能犯ばかりを追跡するので、血なまぐさくない、洗練された大人向けドラマだ。体力より頭の勝負の方が面白い。

●ケーブル形式に変遷する地上波局
今夏は、地上波局全局がオールスター・パーティーを実施したが、プレスツアー会場のホテルでのガーデンパーティーとこじんまりとした開催だった。CBSのみ、系列局CWShowtimeの3局合同で、ハンティントン図書館の庭園で華々しく行ったのはいいが…。照明が悪くて、誰がどこにいるのか見えないのだ。
暗闇の中で探し当てた『コールドケース』のキャストに、九死に一生を得たシーズン7について聞いてみたが、皆結構クールなのにびっくり! 「役者の人生なんて、こんなものさ!」と語るダニー・ピノ。ジプシー生活を長年やっているとここまで悟りが開けるものなのか? 打ち切られて泣きの涙になるのは、視聴者だけらしい。『NUMBERS~天才数学者の事件ファイル』『CSI:シリーズ』『クリミナル・マインド~FBI行動分析課』のキャスト、NBCからCBSに移局した『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』一家等が顔を見せた。

地上波局の新番組で面白そうなものは、CBSから『The Good Wife』と『Accidentally on Purpose』、CWの『Life Unexpected』とABCの『Eastwick』の4本だ。
『The Good Wife』は不倫の現場をスクープされた上、汚職容疑で投獄された夫に代わって、13年振りにシカゴの弁護士事務所に復帰したアリシア・フローリック(ジュリアナ・マーグリーズ)の前途多難な“再出発”を描くドラマ。最近、米国でも政府高官の辞任が相次ぎ、記者会見の席で“良妻賢母役”を演じる女性の姿が必ずあるが、その心の内は? 今後、何事もなかったように、旧の鞘に収まるのか? 我が道を行くのか?など視聴者の疑問を企画した。良妻賢母が荒波に揉まれてどう変身、成長するかが楽しみだ。
一方、月曜夜2時間のコメディ枠を設けているCBSに今秋登場するのが『Accidentally on Purpose』。『ふたりは最高 ダーマ&グレッグ』以来ヒット作に恵まれないジェナ・エルフマンが久々に復帰。36歳のビリーが15歳年下のザックと“できちゃった結婚”ならぬ“できちゃった同居”をする羽目になるお気楽コメディ。洗練された大人の女の世界と若いツバメが代表するニート族との衝突を面白おかしく描く。『アグリー・ベティ』を降板したアッシュリー・ジェンセンが、ビリーの親友オリビアを演じるが、エルフマンとの「間」が絶妙な上、世代のギャップはチクリ!と痛いながら大いに笑える。同名の回顧録が基になっているドラマだ。
CWは『90210』や『Melrose Place』等リメイクと、『ゴシップガール』や新作『The Vampire Diaries』が、若い女性層に受けているから“安泰!”を装っているが、開局以来大人の鑑賞に耐える作品がない。来年1月開始の新作『Life Unexpected』が、局のレベルを上げる武器かもしれない。
15年もあちこちの里親をたらい回しにされ、つっぱって生きてきたラックス(ブリット・ロバートソン)が、探し当てた生みの親や仲間と“俄家族”関係を築く羽目になるドラメディー。突然、親役を突きつけられたガキっぽいケイト(シリ・アップルビー)とネイト(クリストファー・ポラハ)の成長振りと、つっぱりラックスが無邪気な子どもに戻る様子がほのぼのと描かれた、心温まる作品だ。

新作8本の最も意欲的なABCは、『Lost』に代わる大作として『Flash Forward』のパイロットを昼食時に上映。3分足らず失神した全人類が見たのは、半年先の自分の姿というSFミステリーは確かに『Lost』的ではあるが…。『Lost』同様、忙しい現代人がテレビ番組にどれだけ労力を投資してくれるだろう? 
『Eastwick』は、ジョン・アップダイクの原作『The Witches of Eastwick』と1987年の同名映画を参考に、運命の糸にたぐり寄せられた3人の女性の友情と再出発を描く21世紀版ファンタジー・ドラメディ。清教徒の魔女狩りにあった曰く付きの町イーストウィック。若いツバメと火遊びする子持ちの未亡人ロクシー(レベッカ・ローミン)は売れないアーチスト。ロクシーの奔放な生き方を見習いたいと憧れる反面、軽蔑しているのは小心な新聞記者ジョアナ(リンジー・プライス)と、5人の子どもと怠慢な夫を抱え、きりきり舞いの看護婦キャット(ジェイミー・レイ・ニューマン)。3人が現況に不満を訴え、新たな旅立ちを口にした途端、願いが叶い始めたから大変!町を買収して乗り込んで来た得体の知れない実業家ダリル・ヴァン・ホーン(ポール・グロス)の仕業か?秘めたる実力か?は観てのお楽しみ! 『騎馬警官』で正義の味方を演じたグロスの180度転換した役に期待したい。

NBCはいよいよ、今月末より平日午後10時のドラマ枠をジェイ・レノのトーク番組で埋める。レノのパネルインタビューがあったので、現実になることは間違いないし、同局が発表した新番組は『Trauma』『Mercy』『Community』といずれも長続きしそうにない。
唯一の吉報は、NBCエンタテインメント/ユニバーサル・メディア・スタジオの共同会長ベン・シルヴァーマンが、NBCを去ったことだ。様々な噂が飛び交ったが、「元々、共同会長を長く勤める気はなかったようです」と現ドラマ編成のアンジェラ・ブロムスタッド社長がのらりくらりと交わす。シルヴァーマンの目に余る乱行の後始末と、NBC再建は誰の肩にかかっているのか? 10時のドラマ枠は、いずれ戻って来るとは思うが…。

“こんなお粗末なツアーは前代未聞”だった今年1月のツアーに引き続き、この夏のツアーはこれ以上堕ちようがなく“少なくとも現状維持できた”という雰囲気だった。地上波局は“堕ちる所まで堕ちて”やっと現実を直視しなければ生き残れないと悟ったのかもしれない。
新番組は軒並み13本で様子を見るというおっかなびっくり姿勢で、従来シリーズが22~24本確約されていた昔と比べると、石橋を叩いて渡る用心深さだ。これだけ選択肢が増え、配信形態が多様化すると、視聴率も細切れになるのは当然だ。
『The Good Wife』のパネルインタビューで『ER』全盛時代を振り返り、ジュリアナ・マーグリーズが「シェア44(※)が普通だったけど、今は9あればヒット作でしょ? 業界がすっかり変わってしまったのよ。でも、中年の女優にとって、“おいしい役”は今テレビにしか存在しないわ!」と発言。
テレビの世界がすっかり変わってしまったのだということをしっかりと認識することが、未来への足がかりになるのかもしれない。来年1月にプレスツアーが開催されることを切に祈る。

※番組視聴占拠率で、『ER』の放送時間木曜日午後 10時~11時の時間枠にテレビをつけていた全世帯に占める割合を示す数字。高ければ高いほど、他の番組の追随を許さないという意味。
【関連コラム】
アメリカテレビ業界の視聴率争い

ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに会員として参加する唯一の日本人。ATAS会員。心の糸に触れた作品、目からウロコを体験させてくれる放送作家、元気をくれる俳優等を紹介するのが生き甲斐のテレビ評論家。テレビのメッカでテレビへの熱い想いと畏敬の念を燃やし、「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きています。最新のモットー「Leap! And the net will appear.」は『名探偵モンク』から学びました。

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