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2009.08.10

海外ドラマはライバル!? 日本が100%ドラマ輸入国にならないために!!

ネット配信の波に煽られ、テレビというメディアはじわじわと危機にさらされている。
外出から帰宅したとき、テレビのスイッチを入れるより前にパソコンの電源を入れる人は今後増えるばかりだ。最新の時事ニュースの伝えるところでは、世界のインターネット利用者数はアジアの主要国を中心に約5年後には推計22億人に達するとの予測が出ているそうである。
パソコンをあまり活用しない高齢者の方々はまだまだ情報の収集や映画・ドラマなどを視聴するためにテレビを活用するはずなので、一気にテレビがメディアとしてなくなることはあり得ないが、視聴者率や番組に割かれる
予算といった数字が下降線を辿ることは紛れのない事実であろう。
これは、新聞の販売部数が激減したり、かつての人気雑誌が廃刊に追い込まれている運命と同じだ。
今や、ある曜日の決まった時間に家族揃って夕食を食べながら楽しみにしていたドラマを見る時代ではなくなったのだ。

アメリカでは、仕事は5時には済ませて帰宅してディナーは皆で食べるという習慣はいまだ健在で、全国ネットの番組だけでなく、ケーブルテレビや有料チャンネルの種類が豊富なだけに、皆でテレビの前に座るという機会はまだ多いかもしれない。
しかし、ネット台頭の波の大きさはアメリカでも同じであり、テレビ界は視聴者確保/維持のために革新を試みている。
テレビ局各社は、最新エピソードが放送された直後から、同エピソードを番組のウェブサイト上ですぐに視聴できるようにしている。
たとえば、 FOXテレビ(US)の現クールなら、『BONES』『FRINGE』『Dr.HOUSE』『Lie to Me』『PRISON BREAK』といった人気番組が即ウェブで観ることができる。最新エピソードだけではない。大抵の場合、そのシーズンの過去のエピソードに遡って鑑賞できるようになっている。
また、各局が提携する動画専門サイトでもそれらの番組が観られるという、便利なシステムがスタートして人気を得ている。そして、それらの配信にはオンライン用のコマーシャルが挿入されているため、すべて “無料” なのだ!!
このネット配信により、テレビ放送をうっかり見逃した視聴者もウェブですぐ物語にキャッチアップできる。その後のシーズンも見続けるという行動を促進させる効果もあるのだ。

もはやテレビはテレビ局でなく、“インターネット局” になりつつあるのかもしれない。
既に大手スタジオ&プロデューサー連盟は、監督/脚本家/俳優といった各組合と、ネット配信の際の利益分配率についても交渉を重ねて新たなルール作りをして来た(最近までストライキ沙汰がハリウッドで度々あったのはこのため)。
その点では、アメリカは1歩も2歩も、いや5歩も10歩も進んでいる。

日本はどうか?

仕事の帰りが遅く、子どもが夜も塾で勉強するライフスタイルになって久しい。
家族揃ってテレビを観よう!とはなかなかならない世代に突入した。
忙しい生活の中、観たいテレビ番組を見逃した場合、キャッチアップする方法は(違法ダウンロード等を除いて)基本的にない。録画しそびれたらアウトだ。

日本では、テレビ番組のネット無料配信が進んでいないそうだ。
これには様々な理由が混在する。
◆ 複雑な著作権の絡み、
◆作者や出演者らに対する利益分配の一定のルールが存在しないこと(業界内に本格的な組合がないから共通の規則が設定できない)、
◆ DVD売り上げに影響が出ることなどへの恐れ、
などが妨げになっている。

アメリカにできることが、なぜ先進国の日本に実現できないのだろうか?
エンターテインメントは、ファンがあってこそ存在する。
業界全体が手を取り合って、ファンを惹き付ける対策を練ることに常に最大の努力を払っていなければならないのだ。
視聴率だけ追いかけ、実はファンを見つめていないのでは、いつの日かファンを失う日が来るだろう。

昨年の夏、日本に一時帰国した際、TSUTAYAに立ち寄って驚いたことがあった。
海外ドラマのコーナーにあらゆるアメリカのドラマ作品が並んでいたことだ。
こんなものまで日本で観れるのか?という、割とマイナーな番組まで。
「これだけの需要があるのか…」
その配給力(商魂)の強大さを見せつけられた思いがした。

一方、アメリカのDVD販売チェーン店のどこにいっても、邦画DVDはいくらか見かけることはあっても、
日本のドラマのDVDは売っていない。これは皆無である。
つまり、日米間の 映像ソフトの貿易では、“ドラマ” というジャンルに関して、日本は一方的な100%輸入国である。
このことを考えるとき、ある似た光景を思わざるにはいられない。
スポーツ映像のコンテンツだ。
日本は、80年代まで商業/工業的な経済成長に眼を奪われ、芸能やスポーツのエンターテインメントを世界に普及させようなどと考える余裕がなかった。
しかし90年代には、野茂英雄投手がメジャーリーグ挑戦で大成功し、日本サッカーが初めてW杯に出場すると同時に中田英寿選手がセリエA移籍を実現させ、ここからは一気に数多くの野球選手/サッカー選手が世界の舞台で闘うようになった。

イチロー選手、松井秀選手、松坂投手、中村俊輔選手らの止まらぬ目覚ましい躍進…。
日本の国民は、かつてはオリンピックや世界選手権のような、何年に1度しか観られなかった“世界との真剣勝負” を日頃から目の当たりにするようになった。
日本最高のアスリートたちが、奮迅する姿、敗北する姿、栄光を勝ち取る姿に一喜一憂する日々だ。
同じ日本人である誇りを抱き、“同胞ががんばっている” というストーリー性に感情移入しているに違いない。
つい、応援したくもなるものだ。
しかし、厳しくもレベルの高い、濃密な映像が次々と海外から届くようになった一方で、眼が肥えた視聴者は自国のスポーツ放送/報道に物足りなさを感じるようになった。国内リーグのテレビ観戦者数(視聴率)は低下の一途を辿った。特に、ここ数年でのプロ野球のテレビ中継の減少/打ち切りには驚きを隠せない。あれほど多かった、各局のプロ野球巨人戦中継がゴールデンタイムからほぼ姿を消したのは衝撃でさえある。

メディアの“歴史” が動いている…。
テレビ番組編成は今、大きな分岐点にさしかかっているのだ。

日本では、海外の試合をテレビで観る需要が確実にある。
でもアメリカやヨーロッパの地で、日本のスポーツの試合をテレビで観戦する視聴者が一般的に存在するだろうか? まずいない。
たとえWBCで日本が2連覇を果たしても、日本のプロ野球を観る一般のアメリカ人はいないのだ。
つまり、日米間のスポーツ放映権ビジネスでは、“野球” というジャンルに関して、日本はこれもまた一方的な100%輸入国である。それどころか、国内のリーグ戦を自国民が地上波テレビで観戦できない危機にさえ陥っている。

さて、話しをドラマに戻そう。
今後、インターネットやホームシアター設備の拡充で、視聴者1人ひとりが好きなものを好きな時間帯に観るライフスタイルがもっと進んだら、各国の作品群が国境を越え無料で配信されていったら、もしくはDVDがもっと安価で市場に出回るようになったら、一体人々は何を選んで観るだろうか…。
もし、日本の俳優陣が今後さらに海外で活躍の場を広げたらどうなるだろう?
容易ではないが少しずつ増えていることは確かだ。

渡辺謙さんは『ラストサムライ』の成功を境に、活動拠点が国外に変わった。
『バベル』の菊池凛子さんは、1本の海外作品で、11年間の無名キャリアから誰もが顔と名を知る女優へと運命を転じた。映画『おくりびと』は、アカデミー賞外国語作品賞を受賞したことで、観客動員を驚異的に伸ばした。
映画界ではこれだけのことが近年起きている。

もし日本の俳優たちが、映画のみならず、アメリカの人気ドラマに次々と起用される機会が増せば、優れた映像技術と、製作体制、豊富な資本によって作られる作品の中で、その奮迅する姿、敗北する姿、栄光を勝ち取る姿に、多くの日本国民が一喜一憂する日々がくるのではないだろうか?
そして練り込まれた脚本の面白さに加え、“日本の同胞ががんばっている” というストーリー性に感情移入できるとしたら、非常に魅力的なコンテンツになるに違いない。
もちろん、アメリカでの作品のキャストはまずオーディションで決定されるので、参入は有名であろうと無名であろうと容易ではない。
この国には、観客の鑑賞眼に堪えうる演技の技量の審査レベルが確実にあり、それをクリアしない限り配役されないからだ。
しかし、スポ-ツ選手がやってのけたように、俳優も徐々に進出を果たし、様々な作品に名を連ね、評価される将来が訪れたら、果たして日本の視聴者は、国内のテレビ局のドラマコンテンツを今までのように見続けるだろうか?

日本のドラマ番組に、日本人が注目しない時代が来るかもしれない…。
絵空事のようだが、そうではない。

スポーツ界に起きたことなら、テレビ(ドラマ)界に起きてもなんらおかしくないのだ。

2008年、世界中の音楽ファンが愛して止まないマドンナのステージでは3人の日本人ダンサーが抜擢され大活躍したをご存知だろうか?
その内2人のユニット『はむつんサーブ』はマドンナがYOUTUBEでその技量を眼にし、直接オファーした。もう1人の KENTO MORI は、マイケル・ジャクソンの今年の最後のロンドン興行のダンサーとして世界規模で行われたオーディションで合格していたが、マドンナが手放さなかったという逸材だ。
10年前、20年前ならば、我々日本人の誰も想像もしていなかったことが起きている。
ダンサーの世界では、日本はもはや “輸出国” に転じているのだ。
しかも世界最高峰の舞台へ!

ドラマの世界、俳優の世界にも、5年後、10年後、20年後、想像もしていなかった流れが生まれているはずだ。日本がドラマの(そして映画の)100%輸入国にならないためには、クオリティーが高い脚本と映像で、世界の観客を魅了する人材をキャストした、良質なコンテンツを、配信していくことが不可欠だ。そのための手をなんら打たず、何年も国内市場だけのビジネスとルールに終始すれば、テレビ界、テレビドラマはネットの波にのまれて沈んでいくだろう。
まだ掘り起こされていない、世界市場にいるであろう未知の日本ドラマファンに向けて作ること、そして配信すること。

日本のドラマの発展と成長を真に求めるなら、それしかない。

ライタープロフィール

尾崎英二郎

尾崎英二郎
リアリズムを追求する米国の演技手法を日本で学び、NHK『あぐり』でTVデビュー。99年のNYオフ・ブロード ウェイ公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』で現地メディア批評家に演技を称賛され、その後アメリカの映画/TV業界を目指す。03年、侍のアクションメン バーとして出演した『ラストサムライ』をきっかけに人脈を広げた。06年に 主要キャストとして日本から抜擢された『硫黄島からの手紙』でハリウッドへの扉をこじ開け、ついに念願の本格渡米を実現。
初めての米TVシリーズ出演となった『HEROES/ヒーローズ』など自らの体験をもとに、ハリウッドのシステムの凄みを伝える。
尾崎英二郎 オフィシャルサイト
         公認/ファン私設応援サイト

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