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2009.07.27

アジアンドラマが熱い!? 香港のテレビドラマ事情

東洋のハリウッドともよばれ、国際的に人気の高い映画を数多く製作し、世界を股にかけ活躍する数々のスターや監督、アクション監督などを輩出している香港。香港では、映画に比べ、テレビの地位はあまり高くない。だが、それは映画で活躍する人材育成や発掘になくてはならないものにもなっている。

香港の2大テレビ局といえば、ATV(亜州電視)とTVB(無錢電視)。この2局がそれぞれ広東語チャンネルと英語および北京語チャンネルの無料で視聴できる地上波各2チャンネルのほか、デジタル、ハイビジョン、国際向け衛星放送、有料放送など数チャンネルを放送している。
視聴率の面では、常に映画会社大手のショウ・ブラザースを母体に持つ後発のTVBが圧倒的に優勢で、中国寄りの放送が多いATVはこれまでに何度も経営難が取り沙汰されており、自社製作ドラマの数や質にかなり差があるのが現状だ。
もともと、両局は俳優養成所を抱え、専属の新人俳優の発掘、育成に力を入れてきた。TVB出身のチョウ・ユンファ、アンディ・ラウ、トニー・レオン、チャウ・シンチー、イーキン・チェンやATV出身のレオン・ライ、アンソニー・ウォンなど、現在映画界で国際的に活躍しているトップスターの多くも養成所の出身だ。
両局はまた、新人女優の登竜門でもあるミス・コンテストも主催、TVBはミス香港を主催しマギー・チャン、ミッシセェル・リー、アニタ・ユンらを、ATVはミス・アジアを主催し、ニナ・リー、クリスティ・ヨン、ベロニカ・イップなどを発掘した。
TV局の養成所に入り(あるいはミスコンで優勝し)、ドラマに出演して、お茶の間で人気となった俳優たちが次に映画へと進出、国際的なスターとなっていく、というのが香港の芸能界でのサクセス・ストーリーの基本なのだ。
俳優だけではない。ジョニー・トー、ウォン・カーウァイ、アン・ホイ、ツイ・ハーク、ベニー・チャンなど、現代香港映画界を代表する監督たちの多くもテレビ・ディレクター出身だ。つまり、香港映画の底力を支えているのが、実は香港のテレビとそこで製作されるドラマの数々なのである。

香港のドラマで人気のあるジャンルは、やはり時代劇(武侠&クンフー)アクションや刑事ドラマなどのアクション系。日本にも熱狂的ファンが多い。近年、『新・少林寺』『リアル・カンフー 佛山詠春伝』『尋秦記 タイムコップB.C.250』『争覇 越王に仕えた男』『游剣江湖』など、日本でも放映やDVD発売されているシリーズが数多い時代劇アクションは、映画同様、中国や台湾との合作やスタッフ、キャストの交流なども活発化し、『霍元甲』『精武陳真』『太極』『少林僧兵』など、続々と新作が製作されている。
1990年代後半、中国のテレビドラマは一気に質を上げた。その裏には、香港の中国返還前後、香港の映画界が不況で仕事が無くなった香港の熟練スタッフ、キャストが仕事を求めて中国のテレビ界に進出してきたという事情があった。そして、急激な発展を遂げる中国市場は質の高いドラマ(特に香港市場では飽きられていた時代劇アクション)を求めていた。
そうした状況をみて素早く動いたのが、香港のヒットメイカー、バリー・ウォン監督だった。彼は新しい製作会社を作り、中国との共同製作によるテレビシリーズの製作を積極的にすすめ、日本にも紹介されている『八人の英雄』『雪山飛狐』『プライド 小魚児与花無缺』をはじめ、『プロジェクトA』『仁者黄飛鴻』などを製作して大成功を収めている。

近年のTVBのドラマの大ヒット作、話題作といえば、海産乾物問屋を経営する大家族内の内紛を描いて歴代最高視聴率を記録し、数々の賞に輝いた2007年の『溏心風暴』と、今年の上半期に大ヒットした、ヤクザ組織に潜入捜査を行う警官たちの活躍を描くドラマ版『インファナル・アフェア』ともいうべき『学警狙撃』。特に同作でマイケル・ツェーが演じ、物語の後半に殉職したキャラクター、ラフィンが大人気となり、この夏にはTVBと22年ぶりに映画製作を再開するショウ・ブラザースが共同製作するスピンオフ映画『Laughing Gor之變節』(ハーマン・ヤウ監督)が公開される。映画が芸能メディアのヒエラルキーのトップに君臨し、ヒット映画のドラマ版的作品が多い香港にあって、ドラマのヒットが映画化につながる例は極めて稀で、その動向が注目されている。
一方、新番組の製作全面中止も噂されたATVの今年のドラマには、ドラマ版『ゴッド・ギャンブラー』ともいうべきジュリアン・チャン主演の『勝者為王…争覇』、ローレンス・ン主演の法廷&犯罪ドラマ『法網群英』、ダニー・リーやウー・マなどベテランガ共演する移民を題材にしたホームドラマ『東邊西邊』などがあるが、ちょっと地味で小粒な感じは否めない。

香港でも外国ドラマの人気が高まり、製作費の高騰などで番組がバラエティ中心となるなか、香港ドラマは生き残りをかけ、今後ますます中国、台湾、シンガポールなどの中国語(北京語)圏、さらには日本、韓国、タイなどのアジア全域との合作、あるいは映画界との共同製作を積極的に行い、より国際化し、多様化していくことが予想される。ただし、市場の大きくない広東語製作による“純粋な”香港ドラマの生き残りは決して容易ではないようだ。

江戸木純

>関連特集『暑くなったら、アジアンフード!でもってテレビもアジアンドラマ!!

ライタープロフィール

江戸木純

江戸木純
「週刊現代」「キネマ旬報」等への執筆の傍ら、『ムトゥ 踊るマハラジャ』などの名作、珍作を配給。また『王様の漢方』、『丹下左膳・百万両の壺』では製作にも進出、脚本も手掛けた。著書に「地獄のシネバトル」、共著に「映画突破伝」、「バッド・ムービー・アミーゴスの日本映画最終戦争」などがある。

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