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2009.06.01

ここがヘンだよ、海外ドラマ、映画の中のヘンテコ日本!

国際色豊かな『LOST』が爆発的人気を博し、字幕が大嫌いな米視聴者の抵抗が薄れた2006年の夏。恒例の夏のTCAプレスツアーに先駆けて『HEROES/ヒーローズ』のパイロットが送られてきた。
しばらくして、NBC広報から感想を聞きたい、撮影現場にご招待したい、といったメールが次々と入ってきた。私はパイロットを観て、相変わらず“ヘンテコ日本”が描かれているし、アンドウの日本語が聞き取れず、英語字幕から日本語を想像する手間が煩わしく、感想と言われてもねーとお茶を濁していた。しかし、何度も聞いてくるので、日本語をまともに発音できる俳優を配役して欲しかったと言ったが最後、メールはぷっつり途絶えた。
プレスツアーで、キャストに会ってこっそり尋ねたところ、アンドウ役は日本人ではないと認めたうえ、役者には権限がないので黙っているが、テレビ評論家としてプロデューサーに文句を言ってくれ、と頼まれたほどだ。それにしても、稚拙な漢字「一~十二」の並んだ時計のシーンがすべてを物語っているように思えてならない。

一方、2008年ABC Familyからは『Samurai Girl』を記事にしてくれと何度も連絡があった。原作は日系人らしいが、テレビ化する際に配役されたレギュラーは見事に日本人/日系人以外のアジア人で、着物の着付けから、仏壇や神棚までヘンテコ日本が満載。推薦などしたら私の沽券に関わるので、いつも丁重に辞退している。
制作に携わっている人たちは、どれほど奇妙かまったく気付いていないようだ。映画は上映された時点では何を言っても遅いが、テレビシリーズは方向修正が可能なだけに、つい建設的な意見なら・・・と思うのだが、噛みつかれるのが落ちだ。『HEROES』で懲りたので、何も言わないのが得策か、とだんまりを決め込んでいる。

ハリウッドのテレビや映画制作に携わる10年前までは、「情報不足か、日本に関する知識がないのか?」と思っていた。しかし、自動車メーカー米国人労働者と、日本から派遣された管理職との働きぶりを面白おかしく比較した映画『Gung Ho』(1986年、ロン・ハワード監督)は、数カ所「ちょっと違うけど、まー良いか!」と見逃せるほどの作品だった。経営コンサルタントをしていた昔、日米の文化の違いを説明するのに、この映画を使ったほどだ。機会があったら、いかに制作したかを聞いてみたいと思っている。従って、全部が全部お話にならない!というワケではないのだ。日本で上映が禁止されたのは何故か?の方が、興味津々だ。

日本語会話という点からみると、日本では今夏、放送開始の『プッシング・デイジー/恋するパイメーカー』の第2話『ダミー』がテレビ番組の好例。主人公チャックとマーク・チェイスが日本語で対話するシーンがある。大学で日本語を勉強した放送作家が、書き込んだ思い入れのシーンだ。しかし、1学期のみの初歩的な日本語ではおぼつかず、台詞を書くことができないうえ、話し方の指導もできないので、私がお手伝いすることとなった。
テレビの1話のみに、このような言語コーチが雇われることは稀だ。予算と時間の関係上、雇えないというのが実情かもしれない。映画では日常茶飯事で、実はこの仕事も映画『SAYURI』で桃井かおりの英語指導をしていたコーチが、英国人アナ・フリールに米国語指導していた関係上、日本語ならと推薦された。
お伽話的要素が強い作品なので、背景の文化考証などする必要が全くなく、和訳した台詞を間違いなく発音してもらえば良い仕事だった。それでも、12時間余りの仕事で、一言も聞き漏らさないように緊張していなければならない。発音しにくい言葉を現場で何度も練習して、本番に挑んだ。私はフリールとパトリック・フェイビアンのみ指導したが、日本人サラリーマン役のエキストラの大半が日本語をしゃべれたので、アドリブだった。準備期間も充分にあったし、放送作家も台詞の言い回しなどは私に一任してくれた楽しい仕事だった。

それにしても、何故、いまだに“ヘンテコ日本”がまかり通るのか? 根本的には、制作の土台となるプロデューサーや監督、テレビの場合は放送作家が頭に描いている日本像の問題だ。『SAYURI』はロブ・マーシャル監督が2週間京都に滞在して、目に焼きついたスナップショットを繋ぎ合わせ、さらにアメリカの中年男性がいまだに“日本”だと信じて止まない“蝶々夫人”のイメージをふりかけた世界だった。提灯、白塗りの女性、着物が必須アイテムなのだ。
さらに、配役にも難がある。米国人のレンズを通して、“日本人”に見える俳優やエキストラを選ぶため、日本文化を知らないのみでなく、日本語を正しく発音することもできない人が配役される。撮影現場で「これはおかしい」「あれは間違い」と指摘されるのが鬱陶しくて、あえて日本/日系人を避けたからだと聞いた。
また、アカデミー賞受賞者などのいわゆる「権威」とよばれる、セットデザインや衣装、小道具担当者のプロ意識の問題でもある。歴史や事実に忠実にではなく、独創性をどう表現するかが命、人と同じことをやっていてはアカデミー賞等受賞できない。奇抜な発想の言い訳は「ドキュメンタリーではない」か「写真があるから間違いない」だ。普通ではないから、珍しいからシャッターを切ったと思われる、万に一つの写真を楯に取られると“ぐうの音”も出ない。

『硫黄島からの手紙』の硫黄島の街並は、設計図では当時の日本家屋になっていたが、普請時に知識のない人が勝手に洋風に替えてしまった。気がついたときは、すでに時遅く、やり直す時間もなかった。映画はとくに関係者が多いうえ、同時進行で複数のシーンを撮影することも多いので、監視の目が行き届かないのが現状だ。

こうしてみていくと、チームワークで成り立つ映画やテレビ制作だが、自分の持ち場を死守するハリウッド方式では、監督以下各部署が独自に“ヘンテコ日本”に貢献している。「おかしいよ!」と言う人を閉め出し、聞く耳持たない閉鎖的業界である。とくに、やったらやりっぱなしの映画は、間違いを学び、反省して改善するサイクルがないから、“ヘンテコ日本”は今後もずっと続くに違いない。
日本人の、日本人による、日本人のための作品作りをするしか、解決策は見当たらない。


■『プッシング・デイジー~恋するパイメーカー』シーズン1 (全9話)

    AXN Sunday Prime にて独占日本初放送!

【字幕版】2009年7月5日(日)スタート 毎週日曜9:00pm
      (再放送:月曜10:00am、日曜1:00pm)
【吹替版(二カ国語)】2009年7月6日(月)スタート 毎週月曜10:55pm
     (再放送:火曜10:55am、土曜8:00pm)

TM& (C) Warner Bros. Entertainment Inc.

ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに会員として参加する唯一の日本人。ATAS会員。心の糸に触れた作品、目からウロコを体験させてくれる放送作家、元気をくれる俳優等を紹介するのが生き甲斐のテレビ評論家。テレビのメッカでテレビへの熱い想いと畏敬の念を燃やし、「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きています。最新のモットー「Leap! And the net will appear.」は『名探偵モンク』から学びました。

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