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2008.12.08

日本人俳優は、ハリウッドの壁を打ち破れるか!

今回は、日本人俳優たちのアメリカ業界における可能性について。

ちょっと時間を遡り、思いを巡らせてみて欲しい。
近年のハリウッドでのアジア系俳優の台頭は顕著だ。もちろん、まだまだ人数は少ないが、長きハリウッドの歴史の中で眺めれば目覚ましいものがある。

90年代、圧倒的に存在感を示したのは中国系の俳優たちだった。ジャッキー・チェン、ジェット・リー、チョウ・ユンファ、チャン・ツィイーらが次々とアメリカの劇場スクリーンに登場した。
2000年代に入って、『ラスト サムライ』で渡辺謙さんがアメリカ映画界に登場し、アカデミー賞にノミネートされた成果は実に劇的だった。

「日本人俳優には繊細な演技ができる」
と印象付けた功績は大きい。アカデミー賞や米国の各主要賞ノミネートは、アクションが主流の中国系俳優たちが未だ成し得ていない快挙だ。06年には『バベル』で菊池凛子さんがこの印象をさらに強めた。

日本人俳優に対する印象は確実に変わった。

しかし<映画ビジネス>として見たらどうだろう?
年間数百本が製作されるハリウッド映画界で、この10~15年で日本人俳優が “単独で主演” したメジャー作品を思い浮かべてみて欲しい。
一体何本あるだろうか…?

たった1本…。
硫黄島からの手紙』だけである。

日本人が主要キャストを占める日本語の映画は、それだけ稀なプロジェクトだったということだ。
“日本人(主演)による映画” は、アメリカ国内ではまだビジネスとしては成り立ちにくいのが現実だ。
それでもこの1本が生まれた事実は重要である。“歴史的” 意義があったといっていい。なぜなら、業界が今後もこのような作品を製作する可能性を生んでくれたからだ。
そして『硫黄島~』や『ラスト サムライ』のようなアメリカ以外の国の文化や価値観を描写した映画は、必ずしも国内で大ヒットとならずとも海外のマーケットで大きな収益を上げられることを実証した。

<TVビジネス>における日本人俳優の展望はどうだろう。

日本人はアメリカのTVシリーズで “シーズン・レギュラー” を獲得できるか?

これは容易な挑戦ではない。
容易ではない背景には <人種> の壁がある。

映画なら海外でも売れる。しかしTVドラマを支える観客は、まず基本的には北米(アメリカ/カナダ)の視聴者である。
映画なら日本を舞台にした物語を描けるが、北米の視聴者が楽しむドラマの設定は大抵が北米のどこかの街が舞台である。日本の人気TVドラマのストーリーが、すべて日本国内でしか起こらないことを考えれば、同じことといえる。

現在、アメリカ合衆国の中のアジア系の人口は4%に満たないといわれている。
単純に比率だけでたとえれば、アジア人主演作を製作しても、アメリカでは100人のお客さんの中で4人にしか売れないという計算になる。中国系、韓国系を除いた日系のみの割合はさらに小さい。
“商品” としての日本人俳優にとってのマーケットはこんなにも脆弱なのだ。

そしてもう1つ、<言葉>の壁がある。

もちろん俳優にとって一番大切なものは演技力と存在感だ。
日本語でも韓国語でも英語でもいい。感情さえ伝われば、言葉は二の次だ。
しかしハリウッドの産業で闘う場合は違うのだ。
演技ができることはまず当たり前の条件。
その上で、北米の視聴者に観てもらう以上、彼らに通用する英語で演じる力がなければ起用される可能性は少ない。毎週、毎年視聴者が飽きずに観続け、聴き続ける連続ドラマならなおさらだ。
聴く度に違和感を感じるようなセリフの発音/リズムではまず “レギュラー” という責任ある立場は任されないだろう。

アメリカで俳優として働くということは、事実上 “彼らの言語で働く” ということであり、彼らの言語による演技で多くの観客を楽しませなければならない、ということに他ならない。
これは、ペ・ヨンジュンがどんなに日本で爆発的人気があっても、日本のTVドラマや映画で、日本語のセリフで、単独主演が務められないことと同じだ。外国で働くことの壁は、そのまま言葉の壁だといえる。それほどに厳しい。
さらに、オーディションや撮影現場の瞬間瞬間の勝負の中で、監督らの指示を確実に把握し、演技として即体現できる理解力を培わない限り、アメリカ人クルーたちと対等には仕事はできない。
英語で日常会話ができるとか、ちょっとしたセリフなら英語でも言えます、とかいった生易しいレベルでは太刀打ちできないのが現実である。

映画のキャスティングでは、日本で観客動員できるスターならハリウッド大作にも起用されるパターンが近年できつつある。
しかし単発ではなく、連続で出演し、観客に感動を与え続けられるかが今後の課題だ。
アメリカの業界に日本人俳優たちが君臨できるか…真価が問われるのはこれからだ。

光は見えている。

工藤夕貴さん(『ヒマラヤ杉に降る雪』『SAYURI』)
渡辺謙さん(『ラスト サムライ』『SAYURI』)
石橋凌さん(『ローグ・アサシン』『THE JUON 呪怨』)
真田広之さん(『ラッシュアワー3』『スピード・レーサー』)
らは、すでに “単発” 出演の壁を打ち破っている。
彼らは、誰もが知っているメジャー作品に、“英語のセリフ” で、“主要キャスト” で、“複数本” 出演した、という方程式に当てはまる。

そして TV 界では、
マシ・オカさん(日本生まれ、日本国籍保有)が2006年に『HEROES/ヒーローズ』で日本人では初めて正真正銘のシーズン・レギュラーを獲得した。彼のブレイクが意味するものは、渡辺謙さんの映画界での成功に匹敵するだろう。侍や日本兵以外の日本人の新たなイメージを全米に、世界に、浸透させたからだ。
そして彼が演じる “ヒロ・ナカムラ” というキャラクターの存在が大きくなるにつれ、他の日本人俳優にもチャンスは広がった。ヒロの友人、同僚、上司、父、姉、といった人物が次々と登場することになったのだ。

かつて大ブームを巻き起こした『SHOGUN(将軍)』(ジェームズ・クラヴェル原作、リチャード・チェンバレン、三船敏郎、島田陽子主演)という NBC 製作のシリーズがある。エンターテインメントとして秀作だったが、これはミニシリーズとして作られたもので何年にもわたって続いたいわゆる “連ドラ” ではない。舞台は完全に日本、そして時代劇だった。放送されたのは80年代に遡る。

『HEROES/ヒーローズ』は、これほど多くの日本人キャラクターが登場する作品として非常に稀なドラマである。現代劇であり、主に北米がストーリーの舞台なのだからなおさらだ。
日本人を主人公の1人に据えた全米ネットワークの長期シリーズもまた、史上この “1本だけ” であろう。
それでもまた、この1本が生まれた事実は大きな意味を持つ。大ヒットした実績が、今後のドラマ作りに確実に影響を及ぼすからである。

昔からハリウッドでは、(日本人を含む)アジア人が活躍する役柄や作品の絶対数は極端に少なかった。今後も急激な増加は見込めないだろう。
しかし、発展の兆しは確実にある。

『硫黄島からの手紙』という日本語映画の金字塔、
『バベル』の日本人女優が浴びた脚光、
『HEROES/ヒーローズ』の日本人キャラクターの活躍、
その全てが揃いも揃って2006年に発生したのは偶然のようだが、おそらく偶然ではない。
初めての流れが、今、ようやく生まれているのだ。

皆さんは、その歴史の中の “初めての流れ” を目撃しているに違いない…。

そして、我々俳優は今、その潮流をより大きく、より確かなものにしていく闘いを担っている。
僕はそう信じている。

■ 『HEROES/ヒーローズ』シーズン2 一挙放送
【放送】スーパー!ドラマTV
【二カ国語】12月20、21日12:00~
【字幕】12月20、21日22:00~ 

■ 『HEROES/ヒーローズ』シーズン2 DVD-BOX
【価格】¥9,975(税込)
【内容】6枚組(全11話)
【発売元】ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
©2007 Universal Studios.All Rights Reserved.

ライタープロフィール

尾崎英二郎

尾崎英二郎
リアリズムを追求する米国の演技手法を日本で学び、NHK『あぐり』でTVデビュー。99年のNYオフ・ブロードウェイ公演『ザ・ウインズ・オブ・ゴッド』で現地メディア批評家に演技を称賛され、その後アメリカの映画/TV業界を目指す。03年、侍のアクションメンバーとして出演した『ラストサムライ』をきっかけに人脈を広げた。06年に 主要キャストとして日本から抜擢された『硫黄島からの手紙』でハリウッドへの扉をこじ開け、ついに念願の本格渡米を実現。
初めての米TVシリーズ出演となった『HEROES/ヒーローズ』など自らの体験をもとに、ハリウッドのシステムの凄みを伝える。
尾崎英二郎 オフィシャルサイト
         公認/ファン私設応援サイト

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