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2008.09.08

第60回エミー賞候補作品に思うこと

7月17日に受賞候補作品/俳優が発表されたが、今年はベーシック・ ケーブル局(日本でいうケーブルの基本チャンネル)の台頭が顕著で、エミー賞の歴史に新しいページが加わった。ということで、作品賞についてお話ししよう。

ドラマ・シリーズ部門作品賞候補は、地上波局から『Dr.HOUSE』『LOST』『ボストン・リーガル』の3本、ケーブル局からは『ダメージ』『Mad Men』『デクスター~警察官は殺人鬼』3本とバランスがとれている。『デクスター』(Showtime)はプレミア・ケーブル局(日本でいう有料の別途契約チャンネル)の作品で、1990年代からHBOがパイオニアとして台頭して以来の伝統だが、ベーシック・ケーブル局の『ダメージ』と『Mad Men』が作品賞にノミネートされたのはエミー史上初の快挙である。昨夏、評論家に絶賛されて登場したAMC局の『Mad Men』は1960年代、ニューヨークはマディソン・アヴェニューの広告代理店で働く男達の公私を描いた秀作。すでにゴールデン・グローブ賞やピーボディー賞を獲得した上、7月19日にはテレビ評論家協会(TCA)から3部門で表彰された実績がある。放送初年度にエミー賞14部門で16ノミネーションは、この作品がいかに秀でているかの証拠だ。同等の秀作『ダメージ』との一騎打ちとなるのか?それとも、地上波の視聴率1位の座を維持する『Dr. HOUSE』の番か?

エミー賞の選考方法から考えると、予想するのは単純な作業ではない。ATAS会員の人気投票(一次選考)で上位に挙がったのは『Dr. HOUSE』『LOST』に違いないが、昨年の私の二次選考体験では、『LOST』は最初から通しで観ていないとわかりづらいことが最大の難点。得点が低いような気がする。逆に、番組のテーマやカラーを凝縮し、数話分の予算をかけて丁寧に制作されている上、キャラクターや人間関係が明確なパイロットが提出された『ダメージ』と『Mad Men』は有利で得点が高いはず。二次選考会は一話のみで評価するので、連続ドラマで出演者が複雑に絡み合う群像劇は基本的に不利である。『ボストン・リーガル』と『デクスター』はシリーズとしての評価は他の4作に比べて、一次選考票が低いと推測するので、消去法で残るのは『ダメージ』『Mad Men』『Dr. HOUSE』となる。しかし、ベーシック・ケーブル局の2作は固定した視聴者が100万人程度、片や『Dr. HOUSE』は地上波局の視聴率最高のドラマだから、約30倍以上を記録した実績がある。一次、二次とも評価が高かった『Dr. HOUSE』が受賞すると予想する。最終審査は8月29日、二次選考と同様200~300人が各選考員に割り当てられた2話(計6話が提出される)を観て得点をつけるが、一話完結型の『Dr.HOUSE』が一番評価が高いという私の推測だ。

コメディー・シリーズ部門作品賞候補は、地上波局から『The Office』『30 Rock』『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』の3本、HBOの『ラリーのミッドライフ★クライシス』『アントラージュ★オレたちのハリウッド』2本が最終に残った。昨年、放送初年度で候補に挙がった『アグリー・ベティ』が『ラリーのミッドライフ★クライシス』と入れ替わっただけ! 07年秋に何本か面白いコメディーが登場しているのに、「またですか?」とため息が出るほど新風が入ってこないカテゴリーだ。視聴率からいえば『Two And A Half Men』の勝ちといえるが、チャーリー・シーンがプレイボーイを演じる(?)今時珍しい男尊女卑のコメディーなので、個人的に好きな番組ではない。昨年も二次選考で、私は最下位にしたのに…。『The Office』『30 Rock』はNBCの木曜日のコメディー時間帯をかろうじて支えている番組だが、いずれも視聴率は低い。『30 Rock』はTCAから最優秀コメディー賞を受賞し、バラエティー番組の内幕をおもしろおかしく描いた作品は業界人受けすることが証明された。『アントラージュ』もハリウッドの内幕を諷刺しているので、『30 Rock』との一騎打ちとなるのか?

このように分析して行くと、エミー賞候補に挙る作品は、固定ファンはついているが、視聴率は低いものが多い。視聴率は一般視聴者の支持率、エミー賞は業界人がプロの目で作品の出来映えをあらゆる局面から評価した得点といえる。ほとんどのベーシック・ケーブル局は、昨今地上波局の傘下にあり、事業本体の観点からいうと、テーマパークとキャラクター商品の売上げを比べても無意味という考えと同じだ。自分の首を絞めているのは、エミー賞授賞式の放送権を売ることで成り立っているATASなのだ。一般視聴者は、観たことのない作品がエミー賞を獲得したり、知らない俳優を画面で観ても面白くない。2003年には授賞式の18~49歳枠の視聴者数920万人を記録したが、07年には570万人と約40%減。同時間枠に視聴する選択肢が急増していることも確かだが、ケーブル局の進出で今年も授賞式の視聴率は下がると予想される。地上波局とケーブルは成立の経緯も目的も異なる上、FCC(連邦通信委員会)が定める放送基準も異なる。しかも対象とする視聴者が全く違うから、ドングリの背比べにもならない。地上波局とケーブル局の作品を分けて選考、審査、表彰するべきという意見は相変わらず根強いので、ATASが見直す時期がきたのかもしれない。

ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
Television Critics Association (TCA)プレスツアーに会員として参加する唯一の日本人。ATAS会員。心の糸に触れた作品、目からウロコを体験させてくれる放送作家、元気をくれる俳優等を紹介するのが生き甲斐のテレビ評論家。テレビのメッカでテレビへの熱い想いと畏敬の念を燃やし、「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きています。最新のモットー「Leap! And the net will appear.」は『名探偵モンク』から学びました。

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