07~08年のアメリカTV新番組ウォッチ!
この秋に始まるアメリカTVの新番組は、ドラマ17本、コメディ6本、リアリティ7本。コメディ番組が下火になって久しいが、秋に始まるコメディの本数は過去10年で最低、逆に下火になったはずのリアリティ番組は過去最高の本数だ。
まず、07~08年の新番組の傾向をまとめてみた。
1)新人、新人、どこをみても新人ばかり!
像劇で急騰した俳優のギャラ節約か、パイロット制作時に俳優が出払って!?いたのか、新人を主役に起用した番組が圧倒的に多い。ネームバリューがない分、内容で勝負にでるのか?とみたがそれも期待薄で「わくわく度」が低い。今年は仕事にあぶれたベテラン俳優がちまたに一杯? もったいない話だ。
2)男女の役割逆転
『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』の原作者ブッシュネルの本『Lipstick Jungle』のテレビ化と『SATC』の制作者ダーレン・スターの手になる『Cashmere Mafia』は、富も地位も手にして「ビッグ化」した21世紀の女を描く類似作品のようだ。いずれも春(ミッドシーズン)まで放送されないから、海の物とも山の物ともつかない。男性4人組の『Big Shots』は正に『デスパレートな妻たち』の男版で、結婚や恋愛に一喜一憂する女化した21世紀の男を描く。

BIG BANG THEORY, THE
3)コンピュータオタク、主役に昇格
『Chuck』はコンピュータオタクが大学時代のルームメートでCIAのエージェントから送られてきた機密文書を見たことから始る。チャックの頭が国家機密の宝庫になり、あらゆる危険が迫る。コメディータッチのスパイもの。数年前気に入っていた『Jake 2.0』と酷似しているが、あの番組は時期尚早だったのか? 『The Big Bang Theory』『The IT Crowd』は30分のコメディ。社交性ゼロの天才が社会で、どう生きていくのかが描かれる。
4)悟りを開いた21世紀の法執行官
無実の罪で長年拘禁されていた元刑事が職場復帰、「禅」的捜査が腐敗したLAPD(ロサンゼルス市警察)に波紋を投ずる『Life』。元悪徳弁護士は『Eli Stone』で、幻覚症状を体験して正義の味方になるらしい。長続きするだろうか?
題材としては特に奇抜ではないが、記憶喪失をわずらって初めて過去の自分を後悔し、善悪のバランスを試行錯誤しながら、第二の人生に踏み出した若い女性のコメディ『Sam I Am』が面白い。サム役のクリスティーナ・アップルゲイトはいつから芝居の腕を上げたのか? とにかく、明るくて、楽しくて、笑える唯一のおすすめコメディ。今年も全般的に暗いドラマが多いので、多いに歓迎。
最後に、リアリティ番組の中で、きらっと輝く『Kid Nation』の紹介を。8~15歳の子ども40人が大人の監視無しでゴーストタウンを切り盛りする様子を記録したもの。大人顔負けのパイオニア精神、民主主義を期待できそうだ。
アメリカの国家としてのムードを反映してか、今年も全般的に暗い! 現時点ではこれっ!と思うのは、『Sam I Am』(この後『Samantha Who?』に改題)『Kid Nation』
と『Big Shots』の3本と寂しい限り。しかし、パイロットを観て、唸らされた作品もあるので、まだどこかに宝が埋もれているかもしれない。
ライタープロフィール

Meg Mimura
幼い頃から、テレビっ子でした。「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きてきたら、たどりついた夢の仕事。テレビ評論家として、面白い番組を選んで紹介したり、番組の創作者、プロデューサー、放送作家、俳優などに舞台裏を語ってもらいます。作品の舞台裏を知ると、もっと番組に興味が湧くのでは? 私にとってテレビは恩師、恋人、親友です。
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