« 『セックス・アンド・ザ・シティ』 | トップページ | クーパー捜査官とチェリーパイ:みんな大好き!?アメリカン定番スウィーツ »

2007.07.09

アメリカテレビ業界の視聴率争い

以前のコラム『アメリカのテレビ界は、三つ巴の闘いからドングリの背比べへ』にも記したが、06年末のアメリカにおけるテレビ所有世帯は1億1千万強、ケーブル加入世帯は65%強。この浸透率と多数の話題作を制作するケーブル局を名指して、日本では地上波局がケーブルに大敗したかのように伝えられている。
しかし、視聴率を比較すると地上波局の人気番組が3000万人以上の視聴者を獲得できるのに対し、最高視聴率を稼ぐESPNのフットボール中継でさえ1600万人、HBOのヒット作『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』の最高視聴者数は1340万、『セックス・アンド・ザ・シティ』は690万で、地上波局の20位、30位に当たる程度の数字にしか満たない。

ニールセン・メディア・リサーチ社が様々な角度から割り出す視聴率は、日記式アンケート調査で出す個人視聴率と、モニター世帯のテレビに取り付けた機器でデータを集計する世帯視聴率の2種類に大きく分けられる。しかし、通常視聴率は世帯視聴率である。
従来、地上波局は番組制作や放送コストを広告収入で賄い、広告料を定めるベースに視聴率を使う。毎朝発表される前日の視聴率は、局の制作や編成管理職には一喜一憂の材料だ。しかし、視聴率は番組の死活問題を決めるので、視聴者にも正体不明の気になる数字。

06年9月からCBSのドル箱番組『CSI:科学捜査班』の新鮮味が薄れて視聴率が落ちてきたため、視聴率を盗れると踏んだABCが人気ドラマ『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』で一騎討ちに出た。
ちなみに去る5月10日の視聴率争いの結果を例にとって説明しよう。
『CSI』 12.6%(1388万5200世帯)/19シェア
『グレイズ』 13.3%(1465万6600世帯)/20シェア

1%=110万2千世帯なので、『CSI』にチャンネルを合わせていた世帯数は1388万5200。さらに1世帯には平均2.7人が住んでいると計算されるので、世帯数の3倍弱が視聴者数となる。シェアは番組視聴占拠率で、木曜日午後9時~10時にテレビをつけていた全世帯に占める『CSI』と『グレイズ』の割合を示す。高ければ高いほど、他の番組の追随を許さないという解釈になる。
従って、『CSI』と『グレイズ』はシェアでは1%の差しかないが、『グレイズ』を観ていた世帯が77万強多かったことになり、この日は『グレイズ』の勝利だった。

ただし、視聴率は正確な統計とはいえない。テレビはついていたが、誰がどの程度真剣に観ていたかは個人視聴率を分析するしかない。しかも、日記式は記録漏れや人目を気にして教育番組を観る等、様々なエラーが発生する。
さらに、地上波局編成部の使命は、視聴者に早朝から深夜まで、自局のみを観てもらうことなので、視聴者維持率が鍵。午後8時に放送した番組の視聴率が16%の好成績だった場合、午後9時からの後続番組が16%の視聴率をどこまで維持できるかに注目する。従って視聴率がよくても、維持率が低い番組より、視聴率はそこそこでも、維持率の高い番組の方が局にとっては価値がある。
気に入った番組の放送枠が何度も変わったり、一時放送中止になり、ある日気が付いたら闇に葬り去られていたと嘆く友達にこのからくりを説明するのは辛い。視聴者からみれば、「維持率」など番組の善し悪しとは全く無関係である。

三大ネットワーク(ABC、CBS、 NBC)しかなかった昔と違って、ケーブル、インターネットなど視聴の選択肢が急増し、地上波局は昔のように番組を「育てる」余裕がない。
1話で打ち切られたABCの『Emily’s Reasons Why Not』、3話で跡形もなく消えてしまったデビッド・E・ケリー(『アリーmyラブ』の創作者)の『Girls Club』が記憶に新しい。逆に、秀作で視聴率も高かったので安泰と思っていたら、呆気なく切られてしまった、女性大統領のホワイトハウス生活を描いた『Commander in Chief』、裏番組に視聴率をとられ、秀作だったのに打ち切られた『Jack & Bobby』の例もある。

昨年あたりから、配信方法の急激な多様化に視聴率統計が追いつけず、スポンサーと局側が真っ向から対立している。しかも、昨年にはディズニーで制作した『LOST』や『デスパレートな妻たち』のエピソードを放送日の翌日にはコマーシャルなしの映像として、1話につき1ドル料金で試験的にダウンロード販売し、これが大成功。広告料なしで番組制作することも夢ではなくなり、テレビ番組制作を根本から覆す時が刻々と近づいている。この歴史的変遷を生きられるとは、ラッキーとしかいいようがない。

 

 

ライタープロフィール

Meg Mimura

Meg Mimura
幼い頃から、テレビっ子でした。「わくわく、いきいき、にこにこ」と生きてきたら、たどりついた夢の仕事。テレビ評論家として、面白い番組を選んで紹介したり、番組の創作者、プロデューサー、放送作家、俳優などに舞台裏を語ってもらいます。作品の舞台裏を知ると、もっと番組に興味が湧くのでは? 私にとってテレビは恩師、恋人、親友です。

« 『セックス・アンド・ザ・シティ』 | トップページ | クーパー捜査官とチェリーパイ:みんな大好き!?アメリカン定番スウィーツ »

海外ドラマを100倍楽しもう!」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: アメリカテレビ業界の視聴率争い:

» 海外 俳優 [海外 俳優]
海外 俳優の話題海外製 新作DVDの再生方法 [続きを読む]

» 2007夏 ドラマ 視聴率 [気になるドラマを速攻チェック]
スエ主演『9回裏2アウト』、ヒトケタ視聴率でスタートinnolife.net視聴率調査機関AGBニールスンメディアリサーチによると、14日放送開始された『9回裏 2アウト』の全国視聴率は、7.8%という結果だった。 同時間帯に放送されたSBS特別企画『不良カップル』は16.1%、KBS第1大河ドラマ『大祚榮』は、...... [続きを読む]

« 『セックス・アンド・ザ・シティ』 | トップページ | クーパー捜査官とチェリーパイ:みんな大好き!?アメリカン定番スウィーツ »

DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』