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2007.06.25

撮影現場ではいつも静かなる戦いが!

ラブシーンであろうが、悲劇のシーンであろうが、撮影中は俳優同士での戦いが繰り広げられる。皆の目的はただ一つ。相手の俳優より目立つこと。シーンの花を盗むこと。これをアップステージするという。

ドラマの役を貰った当初は、役がついたことだけで有頂天になり、撮影所内で繰り広げられる、無言の戦いがあることすら気づいていないあたしだった。新人として、いかに現場の人にラブリーに接するか、仲間内に好感をもってもらえるか気を使い、台詞を覚えるとか、シーンのモチベーションを考慮するとか、アカデミックな心配をしていた。そして、“テーク!”と言われると、安心してうちへ帰って行った。が、取り終わったテープを見ると、どうもあたしの印象が薄い。いや、それとなくだけど、横顔でシャドウが入っていたり、相手の表情に負けていたり。

「光を探せ」と、エージェントのやりてお兄が一言。どこにいても、ライトを探せ。そして、ライトが太陽のように、君の顔に降り注ぐ場所に立て。
そう、自分を印象付けるには、ほんの少しだけ撮影中に相手より後ろに下がるだけでいい。そうすると、おのずと相手が私の方を振り向くことになり、ライトが私の顔の全面を照らすことになる。そしてさんさんと光に輝くあたしの顔がカメラに捉えられる。それがアップステージ。

主役や準主役級(プリンシパルという)の人は契約で役柄を保証されている。しかし、ちょい役の役者は、うまくすればリカーリングロール(セミレギュラーぐらいに何度か登場できる役柄)として、再登場させてもらえる可能性もあるし、”ヘーあの子、今度のパイロットに使えそうじゃん”と誰かの目に留まる可能性もある。特にパイロットと呼ばれる、シーズン本契約前のドラマや、ソープオペラの場合は、ライターが現場に入って常時書き換えを行っているので、キャラの強い俳優や、アドリブで台詞を入れてしまった俳優も、面白そう!使えそう!とアボーブザライン(監督や作家など、ギャラが保証されているお偉方を指していう)に判断されると、バックグランド(エクストラ)からデイプレーヤー(台詞付きの一日契約)へ、デイプレーヤーからウイークの契約にと、とんとんと進む可能性もある。もちろん狙いはプリンシパル! それがだめなら、シーズン契約!

だが、そんな可能性も目立たなければだめ。そのため、ちょっと油断すると、撮影現場は売り出し中の俳優のショーケースに早変わり。ま、慣れてくれば、相手に花をもたせて、自分も光る芸が身につくんでしょうが、まだまだ駆け出し中の人たちですから、ストーリーラインなんておかまい無し。自己顕示欲の固まりと目立ちたがり屋達の、壮絶な戦いが繰り広げられることになるのです。撮影現場では。

あるラブシーンの撮影で、相手役は海千山千のモデルでの自己中男。カメラ目線はお手の物。で、負けるもんか、とあたしが一歩下がる。彼も負けじと一歩。キスシーンをしながらずりずりと後ろに下がったあたし達に、デイレクターの喝! おっと、両者引き分け。あるときは、ベテラン脇役が、監督が見ていない間にこっそりソファーの座り位置を変えてしまった。時間が押せ押せだったため、誰も気づく暇もなく、彼の勝ち!彼は 内心ほくそ笑み、あたしは次のシーンの戦略を巡らせる。負けるもんか!
が、そんな戦いも同等レベルの俳優の間だけ。子役から叩き上げた金髪で理知的な某大テレビ女優様と競演したとき、こっそりちょっとだけ後ろに下がった。そして、うふっとほくそ笑んだ途端、いきなり肩をつかまれた。ぐいっと前に押し出され、”あたしをアップステージしないで!” と大女優の貫禄。あたしをちらりと見ることもなく、堂々と命令されました。完敗ですね、はい。

写真提供:大塚肇子

ライタープロフィール

大塚肇子

大塚肇子
ハワイのプロダクションにて、企業向けビデオ、コマーシャル、テレビ番組、映画の制作、またライターとしても番組のスクリプトを含め、ビジネス分野からNYライフスタイル紹介といった、日本のメデイア向けの番組制作にかかわる。女優としても、“ピクチャーブライド“をはじめ、アメリカネットワークドラマ、映画、インデペンデント映画に出演。ニューヨークでは、オフブロードウエイの舞台から、フジテレビなど日本のテレビに出演。現在、NY 在住。

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