2010.10.13

2010年秋の新ドラマ 宣伝広告と批評の影響力

<ニューヨークを席巻する宣伝ポスター>

今年も新作ドラマの季節がやってきた。新しいドラマシリーズのプレミア(パイロット版放映)は9月の第2週から始まり、大半が4週目に集中した。ニューヨークでは毎年、この季節を目前に8月下旬くらいから、街の至るところに新作ドラマの宣伝ポスターが貼られる。多くは公共交通機関の地下鉄やバス、ストリートの公衆電話ボックス、数ブロックごとにあるニューススタンド(キオスク)で見られ、ビルの壁面や屋上の巨大なビルボードも出現する。
この秋一番目についたのが、リュック・ベッソン監督の仏映画『ニキータ』(1990年)を下敷きにしたドラマシリーズ、CWの『Nikita』のポスター。赤いドレスをまとった主演のマギーQが機関銃を手に、挑発的な視線を投げかけている艶やかな画面には、いやでも目がいってしまう。これらのアイキャッチングなポスターで、マギーQに釘付けになったメンズも多いはず。

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CWが一押しする『Nikita』のポスター。(左から)ロックフェラーセンター駅の地下鉄の出入り口。アッパーウェストサイドのビルの壁にも。グランドセントラル駅近くの公衆電話の壁。バスにアンニュイに横たわる『Nikita』

次によく見かけたのは、ディズニー製作の超能力を持った家族のドラメディ『No Ordinary Family』(ABC)のものだ。バス停や地下鉄構内はもとより、地下鉄の車両の一面を飾ったり、タイムズスクエアのトイザラスのビルの壁全面を覆ったりして観光客にもしっかりアピール。道行く人の目をひき、ヒットを予感させた。

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(左から)バス停。地下鉄の1車両の一面が『No Ordinary Family』に。タイムズスクエアのトイザラスのビル壁面を覆う『No Ordinary Family』の巨大広告

 

CBS一押しのリメイク刑事ドラマ『Hawaii Five-O』の広告もさすがに多かった。ニューススタンドの壁や地下鉄構内で、主役の4人が波しぶきの中で横に並んだバージョン違いのものもよく目にした。
インパクトという点では、ウィリアム・シャトナー(『ボストン・リーガル』『スタートレック』)のシットコム『$#*! My Dad Says』(CBS)の広告が『Nikita』に次いで目立った。初老のオッサンの顔がバーンとクローズアップされ、しかも口の部分をタイトルロゴで隠されている図は、『Nikita』とは逆の意味でインパクト大だ。広告の扱いの大きさから、ネットワークのそれぞれの局の自信作が見えてきて、興味深い。

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ペンステーション近くのキオスクの壁面には、『Hawaii-Five-O』の宣伝ポスター。中には壁画になっている広告も。キャンセルが決定した『My Generation』。『$*! My Dad Says』のポスターは、公衆電話ボックスのほか、地下鉄のホームでもよく見かけた。地下鉄の改札近くに貼られた、ケリー・ラッセルのシットコム『Running Wild』の広告

<新ドラマのニューヨークでの評判>

さて、新ドラマシーズンのふたを開けてみると、今年はどの局も視聴率的に苦戦しているようで、既存の人気ドラマやシットコム、リアルティショーをしのぐほどの視聴者は獲得していない。Foxの詐欺師を主人公にしたドラマ『Lone Star』は、批評家の評価は高く、『エンタテイメント・ウィークリー』誌では新ドラマの注目作のベスト5に入っていたにも関わらず、パイロット版の視聴率の低さから早々と打ち切られた。パイロットの出来がよかっただけに残念でならない。ABCの高校の同窓生の10年後を追うという設定のドキュメンタリー風ドラマ『My Generation』もエピソード2でキャンセルの憂き目に。また、NBCの法廷ドラマ『Outlaw』も第8エピソードで打ち切りが決定し、ほかにも短命に終わりそうなドラマ/シットコムがいくつかある。

そんな中で、唯一視聴率が悪くないのが、CBSの新作たちだ。9月27日~10月3日の期間では、パイロットから2週目の『Hawaii Five-O』が15位、トム・セレック主演のニューヨークを舞台にした警察官ファミリードラマ『Blue Bloods』が21位、チャック・ロリー製作のシットコム『Mike & Molly』が22位と健闘。オリジナルの知名度から前評判の高かった『Hawaii Five-O』は、早くも多くの若い層のファンを獲得している。10月11日付けの『NYタイムズ』のビジネスセクションの記事でもCBSの一人勝ちは、番組のラインナップはもちろんのこと、その編成によるとしていたが、確かに月曜の夜9時からの高視聴率常連の『チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ』のあとに『Mike & Molly』をもってきて、木曜夜8時に時間を移動した、これまた大人気の『ビッグバン★セオリー』のあとに『$#*! My Dad Says』を続けるのは、前の番組が終わってから間髪いれずに次の番組が始まるアメリカのテレビでは、とても賢いやり方だと言える。ただ、『$#*! My Dad Says』に関しては、批評家の評価はかなり低め、視聴者の評判も賛否両論で中には「ウィリアム・シャトナーの才能を無駄にしている」という声もきこえる。視聴率がガタ落ちして打ち切りなんてことにならないといいが......。

9月第4週のプレミアラッシュよりも1週間早く始まった『Nikita』は、プレミア当日に『NYタイムズ』から「驚くほど洗練されていて満足できる脚色」と好評を得て、前宣伝効果もあってか、パイロット版は視聴率ベスト20にランクイン。第2エピソード以降の視聴率の落ち込みは否めないが、映画『ニキータ』ファンからも新鮮だという好意的な声も少なくない。
さらに前宣伝がハデで批評家受けも良かった『No Ordinary Family』は、パイロット版が視聴率24位になり、なんとか面目を保った。どこかで見たような感がしなくもない設定だが、これからどんどん面白くなりそうな期待も高い。

その一方で、J.J.エイブラムス(『LOST』『フリンジ』)製作の国際スパイの夫婦のドラマ『Undercovers』は、批評家受けは悪くないが、視聴率はそれほどのびていない。街でも広告をあまり見かけない。でもアフリカ系アメリカ人(黒人)層に人気があり、9月27日から10月3日までの期間では、同層のみの視聴率で8位となっている。ネットワークのプライムタイムのドラマでは珍しく黒人の美男美女カップルが主人公だからなのか(とはいえ、中味は非常に白人っぽいキャラなのだが)、今後もこの動向を追っていきたい。

このほか、ケーブルのHBOのスティーブ・ブシェミ主演、マーティン・スコセッシがパイロットを監督した1920年代の時代ドラマ『Boardwalk Empire』の批評家の評価は、新ドラマの中でダントツ。プレミアムチャンネルなのでネットワークのような多くの視聴者を獲得できないものの、視聴者の評判もすこぶる良い。また、8月16 日から始まったShowtimeのローラ・リニー主演のドラメディ『The Big C』も好評で、パイロット版では同局のオリジナルシリーズで8年ぶりの最高視聴率を記録した。

前々から言われていることだが、批評家の評価は実際の視聴率にはあまり影響がない。むしろ前宣伝で視聴者の興味や期待を集めたドラマ/シットコムが、パイロット版に関していえば、高い視聴率を獲得している。つまり視聴者は、活字の批評よりも視覚にうったえる予告編やポスターなどの広告により影響されているということ。ただ、パイロット版の視聴率が高かったとしても、評価の低い作品は第2エピソードからガクンと視聴者が減る傾向がある。秋も深まりつつあるこの頃、既存のお気に入り番組に加えて上記のドラマたちと、批評家受けも視聴率も今ひとつだが個人的に気に入っているNBCのインドのムンバイを舞台にした新シットコム『Outsourced』(『The Office』と同じ製作者)を見なければならないので忙しい。
(文中の視聴率は、Nielsen Media Research調べ)

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2010.10.06

空前の大流行!「ヴァンパイアもの」分析します!そして、『トゥルーブラッド』は面白い!

干からびそうだった猛暑も終わりを遂げ、首筋も涼しい季節がやってきましたね。
みなさん如何お過ごしですか? 私はこの初夏に17年間を過ごしたアメリカ生活に終止符を打ち、東京に移住を決め帰ってきたところです。思えば長かったアメリカ生活、実はもうお腹いっぱい、少し飽きたぞ!という心中ではあるのですが心残りがいくつかあるのです・・・。

ひとつめ。帰国が『トゥルーブラッド』のシーズン2のDVD発売日直前だったこと。
ふたつめは6月から始まったシーズン3も見逃していること。

無念です・・・。友よ、餞別にはDVDセットを送っておくれ。

というわけで私の帰国前、海のむこうの世間では新作『トゥルーブラッド』シーズン3のスタート&シーズン2のDVD発売ニュースで持ちきりでした。それで日本に帰ってきたら「HBOが放つ『SATC』、『ザ・ソプラノズ』に続く大人気シリーズが上陸!」なんてコピーを見たりして、「あ~そうだったのぉ。」なんて認識してみたり。実はもっとコアなファンがついている地味なアート系カルトドラマだと思っていたの。だってあっちでは批判大好きなクリエイターやアート系の子達の中で流行ってた感じがあったからね。

ここ過去数年、映画界、ドラマ界で空前の大流行りだった吸血鬼ネタ、わたし的には大きく分けて二種類に分かれたと思っていました。ひとつは定番のゴシックファンタジー系。『バフィー ~恋する十字架』、『トワイライト』、『The Vampire Diaries』にみられるロマンス重視の学園ものドラマ。ゴシックに陶酔する反抗期ティーンはいつの時代も吸血鬼に妄想の恋心を抱くのかなぁ・・・? そして実はここにもれなく家庭に飽きた夢見る主婦層も入ることになるから(←韓流ドラマにはまるおばさまとかね)、日本で言えばゴールデンタイムを飾れるメジャードラマ、アンコールで昼過ぎ放映となりうる作品たちということになるでしょう。

そしてふたつめ、2000年代新しく広まったと思われるのが(私が勝手にそう思ってる)リアリズムヴァンパイア系。そう、ヴァンパイア=空想の産物(ファンタジー)なのにリアル?って、矛盾を感じるかもしれないけど、「現世にリアルに存在しそう・・・」を設定とするヴァンパイアドラマのカテゴリー。これは2008年、アメリカのアート系シアターで密かな人気を呼びロングランとなっていたスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(原題『Let The Right One In』)からはじまったと私は思っている。

暗く寂しく豊かでない北欧の都心の生活の中で起こる現代版『小さな恋のメロディー』といったこの映画、主人公が実は吸血鬼であることは「主人公は実は孤児でした」くらいの事実としてそこにあった。要するにストーリー重視のドラマであって、ヴァンパイアであることっていうのは登場人物の性格でしかないって感じがした。その結果、吸血鬼にまったく興味を抱かないジャンルの人たち、そして男性層だって心に残してしまった作品となったのではないかと思う。

ながーい前置きになりましたが、私にとって『トゥルーブラッド』は、このリアリズムヴァンパイア系に属する作品。ちょっとトーンは違うものの、だって「人口の血液が開発されて、それがジュースのようにコンビニやバーで売られる世の中。結果吸血鬼は人畜無害となり、市民権を取得しようとしているが、受け入れることのできないアメリカ南部地方」なんてセッティング、すっごくリアル。奴隷解放、初の黒人大統領就任、そしてイスラム教徒とひと悶着あって、晴れて吸血鬼も受け入れられるのか?なんて、いつでもそしてこれからもアメリカの人種差別問題は形を変えて持ち上がるのですよきっと・・・ってそんな暗示みたい。

さすが総指揮監督がアラン・ボールです。映画「アメリカンビューティー」、ドラマ「シックス・フィート・アンダー」を手がけた名脚本家そして監督。彼の得意とするアメリカンファミリーの裏の素顔を暴く感じが私は大好き(うふ)。そんな彼が普通の“ラブストーリー”を見せるはずがないのです。この作品においてラブストーリーはあくまで“人間と吸血鬼”を混ざらせる演出上不可欠なエレメントであって、人種差別のネタなわけであります。実際に見せたいのは彼の普遍的なテーマ、「一見綺麗に整備されたようにみえるアメリカって実はこんなにファックトアップしています(アランにんまり)」みたいな気がしてならない。

『トゥルーブラッド』の設定はアメリカ南部の小さな街、ボンタン。北米内で南部地方といえばKKKにみられる人種差別感が色濃く残っちゃっていたり、ブードゥーみたいな民間宗教(カルト)やシャーマニズムが色濃く根付いていたり、低所得者層人口が高いためにアルコール、麻薬依存問題も相当ひどかったりする、ある意味アメリカの発展からすごく取り残された荒れ放題地帯。アラン氏はこの場所をお得意のブラックユーモア踏まえて風刺っているのです。ということは実はこの吸血鬼ドラマ、単なるファンタジーではない、現代のアメリカの問題を直視した社会派ドラマなのか!? 少なくともわたしはそういう目線でこのドラマにはまっています。別に良し悪しの判断をしようとはしていなんです。ちょっと離れたところから見て笑っているブラックな感じ。そこが面白い。

この視線で『トゥルーブラッド』を見てみると、スーパーキャラとそのスーパーパワーの箇所は置いといて(そこはそこでばかげてて面白く出来ているとも思うんです)、残りの全てのボンタンでの出来事や事件が、リアルに現実味を帯びてくること請け合いです。人種差別に暴力問題、DVしかり、悪魔祓い、ドラッグ依存とセックス依存などなどなど・・・そこがずばり見所。「やっぱりアメリカって変な国だよな~」って思ってほしい、そこがアランさんの目論見なのではないのかなぁ?

最後にしかし、主演女優にどんくさ~いのを持ってくるところって確信犯的ですよね? 誰かなーこの垢抜けないうざめ女子は、と思ったらなんと、映画『ピアノレッスン』の子役で、わずか11歳でアカデミー賞助演女優賞を獲得したアンナ・パキン。子役から芸能界にいるわりにすれなかったことをほめてあげるべきなのか、あの処女キャラはアメリカではまれに見るかも?そのわりに広告ではセクシー路線狙ったポーズ決めているし、ポロリもありで・・・イメージ戦略ちぐはぐで惑わされます。さて、みなさんの感想はどうでしょう?

■『トゥルーブラッド』

【放送】LaLa TV
【放送日時】毎週月曜 22:00~他

(c)2010 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO(R) and all related programs are the property of Home Box Office, Inc. (c)2010 Home Box Office,Inc

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2010.09.29

海外ドラマ、初回の翻訳は難しい

CS放送が始まって以来、質の高い海外ドラマが次々と日本に上陸している。実は海外ドラマの翻訳では、初回(第1話)の翻訳が最も難しい。それはなぜか。この夏に新しくWOWOWで放送が始まった『救命医ハンク』を例にみてみよう。

●言葉遣い/トーン:
第1話の翻訳で難しいのは、何と言っても登場人物の言葉遣いを決めること。20100929_01_3 オリジナルの面白さを伝えるためにはどんな口調が最適か? 原音のニュアンス・各キャラクターの話し 方・性格・仕草・立場などから「常体/敬体」「重厚/軽薄」など基本の言葉遣いを決める。十数話に及ぶシリーズの軸とも言える作業のため、翻訳者は大いに悩む。
そのときポイントとなるのが一人称の処理だ。英語の“I”で表される一人称には「僕/オレ/私/あたし」など様々な日本語が考えられる。
例えば『救命医ハンク』の主人公ハンク・ローソンは、職場では几帳面かつ大胆な医師として一目置かれている。でもプライベートでは正反対。キッチンを汚し、洗濯物を床に脱ぎ捨てるほどだらしがない。一方で弟エヴァンに対して常に兄らしく振る舞おうとする一面がある。このため吹替版のハンクは基本的に自分を「僕」と呼び、弟エヴァンに対しては「オレ」を使っている。字幕版では字数や文字面の分かりやすさから「僕」に統一されている。

●初回ならではの派手な演出:
アメリカの新作ドラマではシーズン序盤の出来によって、放送エピソード数やシーズン続投20100929_04_15 などが決まる。このため初回では特に派手な演出が用意されていることがあり、翻訳者にとっては踏ん張りどころとなる。
『救命医ハンク』には初回のみ、ERのシーンが登場する。優秀なERドクターのハンクが急患を立て続けに処置する見せ場で、医学の専門用語が飛び交う緊迫したシーンだ。このようなシーンでは専門的な内容に加え、医師独特の略語が多いため、内容の把握だけで数時間が経ってしまうこともある。

●たいせつな訳語:
シリーズ全体に関わる言葉の訳語を決めるのも、初回翻訳での大切な仕事。
『救命医ハンク』には"concierge doctor"という単語が繰り返し登場する。これはセレブ相手の個人医を指す、ドラマでも特に重要な言葉。尺がある吹替版では「コンシェルジュ・ドクター」、字数制限の厳しい字幕版では「専属医」と訳されている。

●訳語の統一:
海外ドラマを放送する各局では、字幕版・吹替版の同時放送が増えている。このような場合は必要に応じて両者のニュアンスをそろえる。もちろん、視覚重視の字幕と聴覚重視の吹替版とでは根本的に作り方が違うため、完全に一致させることはできない。このため、いかに両者の特徴をふまえ、訳語に統一感を持たせるかも初回翻訳のポイントとなる。翻訳者は字幕版・吹替版の付き合わせ※1)をもとに、必要に応じて代案を提出し、ニュアンスの統一に努める。

※1)字幕版・吹替版の付き合わせ:
字幕版・吹替版の訳文にニュアンスや訳出ポイントのズレがないか、制作担当者が全てのセリフをチェックする。さらに洗い出された相違点について演出家や放送局の担当者が確認する。

【番外編】
第1話に限らず、海外ドラマ翻訳には以下のようなポイントもある。

●兄弟/姉妹の関係:
海外ドラマの翻訳で悩ましいのが“brother”や“sister”の処理。20100929_03_4 なぜか北米のドラマでは年上・年下の記述がないことがある。“brother”“sister”だけでは兄弟・姉妹の区別がつかないため、出てきたときは要注意。海外ドラマでは忘れたころに、兄弟・姉妹が登場する場合があるのだ。
『救命医ハンク』のローソン兄弟のように区別できれば問題ない。しかし対象となる肉親が映像に現れないときは「兄弟/姉妹」のほか、文脈によっては「家族/身内」などボカすこともある。

●展開と構成:
海外ドラマには作品特有の展開がある。リアルな夢と現実が登場する『ミディアム』、過去と現在、未来が交錯する『LOST』、キャッチーな音楽にのせて迷宮事件を描く『コールドケース』などパターンはさまざまだ。
『救命医ハンク』の初回はハンクが失業し、コンシェルジュ・ドクターとなるまでが描かれている。一方、第2話以降は主な登場人物たちと患者の人間模ドラマが中心だ。このように作品特有のパターンを把握するのも、ドラマ翻訳のポイントだ。

●サブタイトル案:
海外ドラマに欠かせないのがエピソード毎のサブタイトル。実は放送局の担当者や演出家・制作担当者のほか、翻訳者も考えている。視聴者の興味を惹くべきサブタイトルは、なかなか難しい。エピソード数が増えるごとに、使える言葉が減るのも悩みどころ。

いかがでしたか?
ようやく猛暑が去り、いよいよ秋本番です。海外ドラマの世界でも秋のラインナップが出そろいました。今年は『ナース・ジャッキー』『私はラブ・リーガル』『ウォーキング・デッド』『グッド・ワイフ』『ホームタウン ~僕らの再会~』といった話題作・注目作が登場します。
いろいろと書き連ねましたが「初回翻訳が難しい」のは翻訳者の事情。初回放送からシーズンラストまで、字幕版・吹替版ともにお楽しみいただけることこそ、映像翻訳者の願いです。

【秋の注目ラインナップ】
●『ナース・ジャッキー(WOWOW)
ニューヨークの病院に勤務するベテラン看護師ジャッキーを描いた、ちょっと型破りな医療ドラマ。
ジャッキーは仕事の合間に鎮静剤を打ち、病院内で不倫をするという、ある意味とんでもない看護師。そんな「白衣の天使」とは程遠い彼女が、アクの強い人々を相手に奮闘する。
主演はイーディ・ファルコ。そしてピーター・ファシネリ、グロリア・アカライタス、イヴ・ベスト、ドミニク・フムザが脇を固める。10月9日(土)よる11:50スタート。

●『私はラブ・リーガル(WOWOW)
知的でぽっちゃり体型の弁護士ジェーンとブロンド美女のモデル、デビー。別々の場所にいた2人は、偶然にも同じ日に命を落とす。しかし死にきれないデビーは強引に地上へ戻り、気づけばジェーンの体に入っている。
「他者の体に別人の心が宿る」という、日本でもお馴染みの設定を軸に法廷ドラマが展開。ブルック・エリオット主演、ブルック・ドーセイ、マーガレット・チョー、ジャクソン・ハースト、ケイト・レヴァリングほか出演。10月12日(火)よる11:00スタート。

●『ウォーキング・デッド(FOX ムービー)
今年7月、サンディエゴのコミコンで予告編が流れ、期待の高まる『ウォーキング・デッド』。本国アメリカで10月31日放送の話題作が早くも日本に上陸! 大人気のアメコミをもとに人類対ゾンビの闘いを描いたサバイバル・ホラー。
主演はアンドリュー・リンカーン。またジェフリー・デマン、ブランドン・ラウス、サラ・ウェイン・キャリーズといった豪華キャストに加え、カルト・ムービー「処刑人」シリーズのノーマン・リーダスも出演。プレミア放送は11月5日(金)午前1:00より。11月7日よる8:00スタート。

 

■『救命医ハンク セレブ診療ファイル
【放送】WOWOW
【吹替版】毎週火曜 23:00~
【字幕版】毎週土曜 11:00~
(c) 2009 Open 4 Business Productions, LLC. All Rights Reserved.

 

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2010.09.16

スティーヴン・キング原作新ドラマ『ヘイヴン-謎の潜む町-』現場取材レポート。超自然現象ぼっ発中!世界遺産の町をドラマナビ取材班が行く!(後編)

  

 

 

 

 

 

←前編 

★さすがカナダ! 撮影スタジオは、アイスホッケー&カーリング場

Nup_139856_0109_lowres 再びバスに乗って向かった先は、チェスターにあるサウンドステージ。日本でいうところの撮影スタジオでしょうか。ロケーションマネージャーと話したとき、このハリファックス地区での撮影の唯一の難点は、サウンドステージがないことだと聞きました。このため、大きな映画やドラマの撮影を呼びにくい。『ヘイヴン-謎の潜む町-』でも、ロケばっかりで撮影するわけにいかないので、対応策として、なんとスケート&カーリングのリンクをサウンドステージに作り変えています。壁には地元アイスホッケー・チーム「チェスター・クリッパーズ」の垂れ幕がかかっていました。こんな小さな町にも立派なホッケー場とチームがあるなんて、さすがカナダ!

このサウンドステージには、ホッケーリンクに2つのセットが組まれています。1つはデューク(エリック・バルフォー)の所有するボートの内部で、もう1つはヘイヴン警察署内部です。カーリングリンクは、その回によってセットが組み替わるようです。

セットは、外側は木材がむき出しですが、一歩中に入ると、そこはもうたとえば海上のボートだったり、床がみしみし鳴るような古い警察署だったり、そんなイマジネーションが沸いてくるように、しっかり細部まで本物を表現しています。さらにエリックは、自分のキャラ(=デューク)をボートになじませたいという思いなのか、自身の小物や写真を置いて自分らしさをセルフ演出しているそうです。

そこへ1人の男性が接近してきました。D取材班がよほど挙動不審に見えたのか何なのか、「ちょっとおいで」と男性。身構える歳でもないので素直についていくと、そこにはなんと…大玉が! “大玉”って何よ?と思われるでしょうが、D取材班の筆力では描写しきれませんので写真をご覧ください。

Oodama まだ分かんないよ、という方は第2話「蝶の前触れ」(原題:Butterfly)を見るしかない。このエピではルーネンバーグのかわいい町並みもいっぱい出てくるし、大玉も転がる転がる。怖いんだか、ユーモラスなんだかね。
※誰も気にしてないと思いますが、声をかけてきた男性は現場で働くスタッフの人でした。よほど自慢の大玉だったのでしょう、その目論見はまんまと当たりD取材班は1人大喜び。ただ、大玉を見ると転がしたくなる日本人の願望は達成されることなく終わりました。

 

★『ヘイヴン-謎の潜む町-』一番のモテ男からメッセージ

Nup_139856_0040_lowres そんなこんなのD取材班もなんとか無事に『ヘイヴン-謎の潜む町-』取材を終えました。思い返せば、女性記者団(及び一部男性)から、一番人気だったのがショーン・ピラー。弁が立つっていうのかな、よくしゃべるだけじゃない、話もおもしろいですから。余談ですが、ピラーの元の奥さんはリンゼイ・プライス(『ビバリーヒルズ青春白書』)だったらしい、それも納得…。

そのピラーは、このドラマについて「僕らの番組は“連続ドラマ”にはならないよ、視聴者みんなが全部のエピソードを見るわけじゃないから。第6話から次は第16話を見る人にも楽しんでもらいたいと思ってる。『Dr.HOUSE』のハウス医師が毎回病気を治してしまうように」と説明してくれました。毎回、超自然現象に挑むオードリーとネイサンは、さしずめハウスとカディでしょうか? ピラーはさらにこのドラマの「ユーモアとハートを見てよ!」とPR。なんでも「『Northern Exposure(邦題:たどりつけばアラスカ)』と『デッド・ゾーン』を足して2で割った感じ」(超意訳)らしいです。D取材班はここで「オー、イエース」などと満面の笑みで相槌を打ちましたが、ほんとは『Northern Exposure』、見てません。ウソをついてしまいました、ピラーさん、ごめんなさい。ドラマナビ読者の中には、きっとイメージの沸く方もいらっしゃるだろうなあと、代弁した気持ちでおります。

 

★最後に主要3キャストのコメント紹介

◎エミリー・ローズ(オードリー・パーカーFBI捜査官役)
Nup_139856_0339_lowres_3 『ブラザーズ・アンド・シスターズ』『ER』等、TVドラマファンにはおなじみの顔。これが初主役。

 
「刑事役も主役もこれが初めてよ。クールだけど、確かに少し怖いわね! スティーヴン・キングの小説は読んだことがなかったけれど、考えてみれば映画『ショーンシャンクの空に』や『スタンド・バイ・ミー』『グリーンマイル』も彼の原作なのよね。とってもファンタスティックな作家だと思うわ。今となっては大ファンよ」

 

 

 

◎ルーカス・ブライアント(ネイサン・ウォーノス刑事役)
Nup_139858_0333_lowres カナダ出身の俳優。本国のドラマには準主演級で出演しているようだが、はて、誰この人?と思う人も多いはず。だけど話してみたらとっても素敵な人でした。

 
「僕の役は小さな町の刑事で、内にこもるタイプの人間だ。ところがオードリーが町にやってきて、彼は隠していた一面を見せるようになる。まあ、男っていつもそうだよね。女性が男性の新しい一面を引き出したり、才能を高めたりする。そういうもんだろ?」

 

 

 

◎エリック・バルフォー(デューク・クロッカー役)
Nup_139841_0398_lowres 『シックス・フィート・アンダー』、『24』から『The O.C.』まで、長身のチョイ悪キャラがおはこ。ロサンゼルス育ち、都会派のイメージだが、この地方暮らしは大丈夫?

 
「もう大変さ! きれいな町だと思うけど、僕には少し静か過ぎるんだ。だけど興味深い経験をしているね。今までこんなに1人で過ごすことはなかったから、1人で楽しみを見つけることを覚えたよ。(シーズン1の撮影が終わったら?)インドネシアでサーフィンをやるよ。それから今度は僕が脚本・製作する番組にも取り掛かるんだ。僕はいつも働いているのが好きなのさ」

 

←前編 

■『ヘイヴン-謎の潜む町-』(原題:HAVEN)
【放送日時】10月18日(月)スタート 毎週月曜22:55~
        <再放送>火曜10:30~、17:30~他
【放送】>ユニバーサル チャンネル

2010.09.15

スティーヴン・キング原作新ドラマ『ヘイヴン-謎の潜む町-』現場取材レポート。超自然現象ぼっ発中!世界遺産の町をドラマナビ取材班が行く!(前編)

世界で最も熱狂的なファンを持つ作家の1人、スティーヴン・キング原作の最新作となるTVドラマシリーズ『ヘイヴン-謎の潜む町-』が、米SyFy(サイファイ)で7月からスタートし、話題を呼んでいます。
日本でも10月からユニバーサル チャンネルでの放送が決定しました。放送に先立ち、なんと海外ドラマNAVIは、撮影現場の取材を敢行。超自然現象が飛び出す、摩訶不思議な新ドラマの舞台裏をちょっとだけ見てきました。

 

 

 

Nup_139841_0348_lowres レポートをお伝えする前に、『ヘイヴン-謎の潜む町-』について少し説明しておきましょう。
『ヘイヴン-謎の潜む町-』は、同じくキング原作のTVドラマシリーズ『デッド・ゾーン』製作陣のショーン・ピラーやスコット・シェパードが、キングの小説『コロラド・キッド』を元にイマジネーションを膨らませた新TVドラマシリーズです。FBI捜査官オードリー(エミリー・ローズ)、地元の刑事ネイサン(ルーカス・ブライアント)が、一見平和そうで実は謎に満ちた小さな町ヘイヴンを舞台に、超自然現象が引き起こす事件の解明に取り組みます。天涯孤独のオードリーの生誕にまつわるサイドストーリーも気になるところで、芯の強い女性ヒロインに『フリンジ』を重ねる声もあります。

海外ドラマNAVI取材班(といっても私1人、長たらしいので以下D取材班)が行ってきたのは、カナダ・ハリファックス空港から車で2時間のノバスコシア州ルーネンバーグ。米ボストンのちょっと北にあたるエリアで、6月末とはいえ、少々肌寒い。『ヘイヴン-謎の潜む町-』の撮影は、この大西洋を臨む風光明媚な小さな町ルーネンバーグと、近くの町チェスター一帯で行われているのです。

Nup_139857_0059_lowres キング・ファンなら、小説の舞台はカナダではなく米メイン州のはず、と思われるでしょう。キングの小説は彼の故郷メイン州を舞台に書かれることが多く、『ヘイヴン-謎の潜む町-』も、その名の通り、メイン州ヘイヴンが舞台となっています(ただし、メイン州に実在するのはノース・ヘイヴン)。ところがメイン州でのロケが処々の事情で難しく、より制約がなく、税制面での控除のあるカナダ・ノバスコシア州で撮影が行われることになったのです。また、このルーネンバーグという町は、メイン州の湾岸の町と町並みが似ているのだそうです。

 

★ルーネンバーグに到着 『ヘイヴン-謎の潜む町-』は全米&インターナショナル向けドラマ

Nup_139857_0033_lowres 現地で世界各国からやって来たTV記者たちと合流しました。メンツはヨーロッパの国々、メキシコ、中国、シンガポール、そして日本です。どうして米での放送前にインターナショナルな記者による『ヘイヴン-謎の潜む町-』の撮影現場取材が行われることになったかと言えば、『ヘイヴン-謎の潜む町-』は全米だけでなく、全世界で放送が決定した上で、資金を調達、製作されているドラマだから。最近こういうインターナショナル資本が入ったドラマが増えています。通常のドラマはパイロット版を製作してから、米の放送局にお伺いを立て、オンエアされるか否かが決定します。一方、この番組はパイロット版の製作前から、全米及び全世界のユニバーサル傘下チャンネルでの独占放送権が購入されたという珍しいパターン。それだけ成功が期待されているということでしょうか、キャスティングを始める前から1シーズン13話分の製作費が確保されていたわけで、エグゼクティブ・プロデューサーのショーン・ピラーは、「おかげでエミリーやエリック(・バルフォー)のような才能あるアクターをキャストできた」と話していました。
売れっ子俳優の彼らにとっても、1シーズン分の仕事が確保できるのはありがたいことでしょうね。

時間があったので、数人の記者と一緒に世界遺産に指定されているルーネンバーグの町を散歩することにしました。おとぎの国にやって来たようなロマンチックな町並み。D取材班も柄にもなく感傷的な気分になってしまいます。オランダ記者によれば、こういう建築を“ビクトリアン”と呼ぶのだそうです。ルーネンバーグの家々はビクトリアンの建築様式に加え、外壁はピンクや赤、水色などカラフルなんです。外観を完ぺきに手入れした家もあれば、要ペンキ&要修理な家もある。庭には洗濯物も干してあります。世界遺産だけど、ここにはちゃんと生活の息遣いがあるんですね~。

こんな贅沢な環境の中、『ヘイヴン-謎の潜む町-』は撮影されているわけです。これまで、ルーネンバーグでカナダ製ドラマのロケが行われたことはあるらしいのですが、『ヘイヴン-謎の潜む町-』のような大きな製作費のTVドラマで使われるのは初めてだとか。『ヘイヴン-謎の潜む町-』でこの町を見たら、きっと一度旅してみたくなるんじゃないかと思います。

 

★現場訪問当日はあいにくの雨 じゃじゃ降りの中にプロ根性を見た

撮影現場訪問の当日、空はあいにくの雨模様。この日は、ルーネンバーグの町から40分離れたボート乗り場でロケ撮影。移動中、激しくなる一方の雨。記者たちには雨カッパが支給されました。こんなじゃじゃ降りの中で撮影があるのか?といぶかしがるD取材班は甘かった。ボート乗り場に到着すると、完全防備の雨具を身に着けたスタッフたちが忙しく働いています。「あーあ、もっといい日に来てほしかったよね、ここの景色は最高なのに」とスタッフの1人。たしかにボート乗り場から見渡す海は晴れていれば絶景でしょう。空を恨んでも仕方ない、晴れの景色はオンエアで確認します。

Nup_139857_0217_lowres 雨宿りに、記者たちもキャストやスタッフたちの控え小屋?に通されました。
中は混みあっていて、梅雨時の通勤電車を思い出しましたが、エミリーは快く「私の世界へようこそ」と迎えてくれました(主役なのでもちろん座席確保)。エミリーとは、この日の午前中にインタビューで顔を合わせたばかり。私たち記者十数人一人一人の質問に答えるだけでも一仕事だったと思いますが、涼しい顔をして、小型ビデオカメラで私たちを逆取材し始めました。
なんでもSyFy(サイファイ)から撮影の合間に使うように渡されたらしく、番組のウェブサイトに使うようです(だけど撮るに耐えない被写体と思ったのか、さっさと引っ込めてしまいました…あれれ?)。

いよいよエミリーとルーカスに声がかかり、撮影スタンバイです。私たちも外に出るように指示がありましたが、D取材班は根性がないので最後尾で退場。だって本当に凄い雨だったんです。

ピラーからこのシーンについての説明がありました。このボート乗り場で事件があり、救急車で怪我人が運ばれるというシーンのようです。その怪我とは特殊能力が引き起こしたものだったんですねえ~。このシーンは第7話で放送されます。

リハーサルが始まりました。エミリーとルーカスがボート乗り場にやって来るところから始まりましたが、2人は傘をさして登場。リハーサルをした後、エミリーたちは監督とピラーと話をしています。自分の演技プランについて話をしているのでしょう。短いシーン(20秒ほど)でも、監督やキャストたちの意見はそれぞれなわけです。この雨の中で今さら何を?と思ったりしますが、こういうハタ目には理解できないことを一生懸命やるのがプロの仕事なのかもしれません。このシーンを何度か繰り返したところで、記者たちは引き上げることになりました。エミリーたちが車の中で待機しているのが見えたので、本番はこれから始まるようです。

後編→

■『ヘイヴン-謎の潜む町-』(原題:HAVEN)
【放送日時】10月18日(月)スタート 毎週月曜22:55~
        <再放送>火曜10:30~、17:30~他
【放送】ユニバーサル チャンネル

2010.09.01

『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』のキャストが明かす、自身の“嘘の瞬間”。

’09年1月に全米で放送がスタートし、今年11月にはシーズン3に突入する『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』は、表情分析学のスペシャリストが表情や仕草から嘘を暴き、凶悪犯罪を解決していくサスペンス・ドラマ。本作が画期的なのは、犯人探しや事件の謎解きの面白さと同時に、現実世界での裏付けを追求していること。

ティム・ロス扮するカル・ライトマン博士は、TIME誌で“最も影響力のある100人”に選ばれた表情分析アナリストのポール・エクマンがモデル。また、分析対象者の心理を解説するシーンでは、オバマ大統領やマイク・タイソンといった実在の有名人のニュース映像や画像を挿入する斬新な演出が登場。観終わった後、ドラマで学んだ表情分析のテクニックを思わず試したくなるほど、リアリティあふれるドラマに仕上がっています。筆者はLAの20世紀FOXスタジオで撮影中のレギュラー・キャスト4人を直撃取材!
ドラマの日本タイトルにちなんで、実生活の“嘘の瞬間”にまつわるエピソードをこっそりと(?)教えてもらいました。

 

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カル・ライトマン役/ティム・ロス
「まばたきの多さや目線を落としたりそらしたりなど、いろんな嘘の見破り方を知ったけど、いざ子供たちに使おうとすると、責められちゃうんだ。彼らが何か悪さをしでかした時には、“そんな風に見ないでよ。ドラマじゃないんだから!”って逆に怒られる(笑)。でも自分の子供たちが嘘をついている時は、自然と分かるもんだよ。スペシャリストじゃなくてもね」

 

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ジリアン・フォスター役/ケリー・ウィリアムズ
「役作りのために勉強した結果、人は自分の知り合いよりも赤の他人のつく嘘のほうに敏感になる、ということに気付いたわ。私の子供たちったらとんでもなく嘘が下手なの。でも感情的なつながりが深いほど、嘘をついているなんて思いたくないという気持ちも芽生えるから、相手の嘘を暴こうなんて思わなくなるのよ」

 

 

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イーライ・ローカー役/ブレンダン・ハインズ
「このドラマに出演して、僕は嘘が下手だって分かったな。嘘をつく時に、アイコンタクトが多くなるんだ。気を付けているんだけどね。だから、あまり嘘はつかないようにしている(笑)。僕自身、嘘よりも本当のことを聞きたいタイプだし。真実を知って傷ついたり、恥をかいたりしても、すぐに立ち直ることができるよ!」

 

 

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リア・トーレス役/モニカ・レイマンド
「私が嘘をつく時の癖は、身体の動きが止まっちゃうこと。本当にこんな風に(身体を固まらせる動作をして)ロボットみたいになっちゃう(爆笑)。きっと、あらゆる表情を顔に出すまいとしてそうなるのね。普段はとても表情豊かな人間だから、すぐバレちゃうの。私は女優なのに、嘘をつくのがものすごく下手で。私の母も、私の嘘はすぐ見抜けると言っているわ」

 

どうやら、本作に出演することによって、キャストたちも嘘に上手く向き合うことができるようになった様子。観ているだけでも嘘が見抜けるようになっちゃうかもしれない『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』。海外ドラマ・ファンでなくとも必見です!

■『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』
【発売日】<レンタル>9月2日(木)(Vol.1-4) 10月2日(土)(Vol.5-7)
              <セル>DVDコレクターズBOX 10月2日(土)発売
【価格】10,920円(税込)
【発売元】20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

(c)2010 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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2010.08.25

『ドールハウス』エリザ・ドゥシュク初来日インタビュー!七変化の秘密に迫る!?

今春、4月14日からFOXで放送開始になった『ドールハウス』。スタート前から興味津々!絶対見てみたいと思っていたその理由はというと、なんて言ったってFOXから届いた主演のエリザ・ドゥシュクのプレス写真。スタイル抜群のドゥシュクがセクシーな衣装に身を包み、なんとも言えない表情で私を見ているではありませんか。
『トゥルー・コーリング』で日本でも絶大な人気を集めたドゥシュクだが、『トゥルー・コーリング』とはまた違った雰囲気。『ドールハウス』も放送前からかなり話題を呼んでいたこともあって、早速ミーハー根性丸出しで見始めてみたのだった。

1話、2話と「えっ?なに?何?なに??」と心臓をバクバクさせながら見ているうちに話はどんどん進んでいった。“ドールハウス”とは人間の記憶をそっくり取り出し、ブランクになった脳にクライアントの望む人格を刷り込むことで、莫大な利益を上げている闇の地下組織のこと。そこにはドールハウスと秘密の契約をした“アクティブ” と呼ばれるドールたちが存在する。任務の度に違う人格を刷り込まれるドールの1人、エコーを演じるエリザ・ドゥシュク。ドラマの中でいろいろな表情を見せるドゥシュクだが、一体どれが本当の彼女の顔なのだろうか? “理想の恋人” “凄腕ネゴシエーター” “スターを夢見るシンガー” と毎回全く違った役を演じているドゥシュクだが、人格を刷り込まれる前のエコーの表情といい、全てが別人のように見える。
そのドゥシュクが8月初旬にドラマのPRを兼ねて初来日することが決定した。一度でいいから “生ドゥシュク” の本当の表情を見てみたいと思っていた私の願いが届いたのか、海外ドラマNAVIでもドゥシュクにインタビューする機会が舞い込んだ!

Img_5609 取材当日は70媒体以上の取材を受けていたドゥシュク。さぞかし疲れていることだろうと思っていたのだが、そんなことは感じさせない笑顔を見せながら、濃いサーモンピンクのミニのキュロットワンピースで登場。そもそも自分と比べること自体、お門違いでドゥシュクに大変失礼なことだとは重々承知しているのだが、同じ女性という大きな枠でくくったとしても違いすぎるその雰囲気・・・。色気というかフェロモンというか・・・とにかく女らしさのオーラをガンガンに醸し出している。でも、お高くとまっているわけではなく、すごく気さくでお茶目で、写真を撮らせてもらっている間も私達のリクエストに応え、いろいろなポーズをとってくれたり、ジョークを言ったり・・・彼女と目が合ってしまった時にゃもう私はほぼノックアウト状態だった。

ドラマの中では見事なスタイルとアクションを見せているドゥシュク。アクションを得意とする彼女はドラマの中でほとんど全てのアクションをスタントなしに演じ、その才能を遺憾なく発揮している。
「スタントコーディネーターの言うことをきちんと聞くことが重要。なぜならば、1つ1つのパンチは計算されているものなので、正確にやらなければならないの。結構、暴力的な動きをするから、もちろん体調も整えなければならないし。
週に5回は撮影があるけど、週末はトレーニングをしているわ。月曜日から金曜日まで撮影をして、日曜日にトライアスロンに出て3位に入賞したこともあるのよ。きちんとトレーニングしていれば、自分自身のことを力強いと思えるし、身体を鍛えることは大切よね。
食べることも大好きよ。でも、コーヒーを飲み過ぎたり、砂糖をとりすぎたりしないようにいつも気をつけるようにもしているわ。ただ、1週間に1度は何を食べてもいい日にしているの。今回は、日本のお菓子を集めて最終日に食べようかと思っているわ」

Img_5601 やはり第一線で活躍する女優だけあってストイックに体調、体型管理をしているよう。もし、女優をやっていなければ、どんな職業についていましたか?の質問には、「母がボストン大学で授業を教えているの。もうすぐ70歳になるんだけど、2週間ウガンダへ行って少年兵のために小屋を建てるボランティアをやったりもしている。素晴らしい女性なので、母のようになりたいといつも思っているわ。
今、私はUCLAで授業を受けていて、先週は “A” を取ったのよ」。ドラマの撮影の合間をぬって大学にも通い何事にも貪欲なドゥシュク。彼女から出ているオーラは見た目の美しさだけではなく、内からにじみ出ている彼女の自信なんだろうと感じた。

常にセクシースターランキングの常連であるドゥシュクに、“セクシーで美しいと言われること”について聞くと「もちろん嬉しいし、ありがたいと思うわ。でも自分の中ではおてんば娘のイメージがあるの。母はいつも“あなたは美しい”と言ってくれていたけど・・・。人々にそう認識されるのは嬉しい。でもセックスシンボルとか言われることは私の兄たちは嫌みたいね(笑)。
自分自身の中であまり競争心みたいなものは持たないようにしているの。何かになりたい、誰かになりたいではなく自分を誇りに思って、私にできる最高の自分になりたいわ」

『ドールハウス』のみどころでもあるドゥシュクが見せる7変化はしっかり持った芯の強いドゥシュクだからこそできる演技なんだと思った。

最後に、日本のファンへ「『ドールハウス』を見てもらって、それが刺激になって、日々人と人の交わりの中でに新しい考え方を皆さんの中でもってもらえたら、嬉しいわ」とメッセージを残してくれた。
どんな質問に対しても笑顔で気さくに応えてくれたエリザ・ドゥシュク。これからもまだまだ活躍の幅は拡がっていくだろうと確信した。これかも彼女から目が離せない!

■『ドールハウス』VOL1-4 絶賛レンタル中!
【レンタル】VOL5-7 9月2日~レンタルスタート
【セル】DVDコレクターズBOX 9月2日発売開始
   ※価格:\10920(税込)
発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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2010.08.18

残暑お見舞い 酷暑の夜を海外ドラマでヒヤッと乗り切ろう

ロサンゼルスから残暑お見舞い申し上げます。

今年、日本の夏はとりわけ暑いと聞きます。寝苦しい夜をお過ごしの海外ドラマファンの皆さんに、気分だけでもヒヤッとなれる海外ドラマをご紹介しましょう。

まずは、夏の風物詩ともいえる“お化け”ものといえば、『ゴースト~天国からのささやき』。え、ちっとも怖くない? シチュエーション的には、お化けが家の中までやって来て大暴れするとんでもない事態発生なのですが、肝心なジェニファー(・ラブ・ヒューイット)があまり驚かない役なので、たしかに煽り不足でそんなにヒヤッとしない。
他に心霊が出てくるホラー・ファンタジードラマで有名どころといえば『スーパーナチュラル』や『Xファイル』はご覧になったことがあるでしょうけど、ドラマナビ読者にはもっとマイナーなドラマも見てほしい。たとえば、『Xファイル』のヒントになったといわれている『事件記者コルチャック』。事件といっても、“怪奇”事件がコルチャックの得意分野。コルチャック=モルダーと考えてもらえばよいのですが、やはりどんなに熱心に仕事をしても、周囲にはあんまり認められません(手柄も立ててません)。最近、スチュアート・タウンゼント主演で『ナイト・ストーカー』としてリメイクされています。
もう一つ、『アメリカン・ゴシック』もカルトファンには忘れられないドラマ。アメリカの田舎町に潜む悪魔の化身の保安官と数々の怪奇&心霊現象を描いた、サム・ライミ製作の正統派ホラー・ドラマです。

そして、ホラーの元祖的番組と言えば『ミステリー・ゾーン(トワイライト・ゾーン)』でしょう。アンソロジー(作品集)ものとして、その後は『アウター・リミッツ』、『Night Gallery』(邦題:『四次元への招待』)、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』など、幾多の亜流を生んでいます。
アンソロジーで最もホラー度が高いと思うのが『Tales from the Crypt』(邦題:『ハリウッド・ナイトメア』)。映画『悪魔のいけにえ』のトビー・フーパー製作で、米で放送規制のほとんどないHBOでオンエアされていたため、怪奇からグロ、エロまでなんでもコイ。冒頭に出てくる案内人(=ミイラ)からして恐ろしい。
アンソロジーと呼んでいいのか分かりませんが、ホラー映画の巨匠たちによるTV映画シリーズ『マスターズ・オブ・ホラー』もあります。シーズン1の第13話は日本の三池崇史がメガホンを取っているほか、トビー・フーパー、ラリー・コーエンなどゲテ物好き?なホラーファンに愛される監督が大集合。ホラー好きは必見のシリーズです。
あ、ちょっとヘビーなホラーに傾倒してしまいましたね…。『ハリウッド・ナイトメア』と『マスターズ・オブ・ホラー』は大人向けのホラーですが、子どもでも楽しめるホラー・アンソロジーといえば『グースバンプス』。米の子どもたちに大人気で、日本ではNHK教育で放送されていたというからビックリです。子ども向けだからといって、あなどることなかれ。日本人にも怖い、ゾクゾクするホラーシーンも出てきます。日本ではDVDが発売されていないのが残念。

「お化けより、生きた人間の方が怖い」なんて思ってるアナタ。そんな現実派のアナタには『ハーパーズ・アイランド 惨劇の島』はいかが? 1人1人死んでいく“横溝正史”ワールドなサスペンス物ですが、何より殺され方が怖い。なにも人体をそんなメタメタにしなくても…と言いたくなる残虐さ。ヒヤッとというより、ビビってしまうと言うべきか?

最後に、もし見たことがなかったら、『V』(オリジナルのミニシリーズ)のアノ名物シーンをおすすめしておきましょう。地球にやって来た宇宙人の食事は、なんとネ○ミ。半端じゃなくデカいネ○ミもいただきます。しかも、マナーを忘れた豪快食い。ああ、こちらはビビってしまうというより、あ然。

ヒヤッとからあ然まで、一瞬でも暑さを忘れさせてくれるホラー(サスペンス、SF)を紹介してみました。ドラマナビ読者の皆さんも、私はコレが怖い…というTVドラマ(の1シーンでも可)をご存知でしたら、ぜひみんなで共有しましょう。ご意見お待ちしてま~す。

(※『グースバンプス』を除く上記のドラマは、全てDVD(VHS)で発売・レンタルされています)

■『ハーパーズ・アイランド Vol.1』
【発売日】
6月4日レンタル開始 (TSUTAYA先行)
      他流通ルート 11月26日セル・レンタル同時リリース
TM & (c) 2010 CBS Studios Inc. CBS and related marks are trademarks of CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved. TM, (r) & (c) by Paramount Pictures.
All Rights Reserved.

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2010.08.04

TVドラマ・ファン垂涎の毎日!! コミコンとは!?

7月22日から25日まで、カリフォルニア州サンディエゴで、コミコン・インターナショナルが開催された。このイベントは、毎年夏にサンディエゴのコンベンションセンターで開催されている、今年で41回目を迎えたコミックとSFのコンベンションだ。

このコミコン、当初は「Comic Book Convention(コミックブック・コンベンション)」というその名の通り、スーパーマンなどでお馴染みのアメコミや『スタートレック』などのSFものの漫画や映画のグッズ販売やパネルディスカッション(以下パネル)、上映会などが行われていた。やがて家庭用ゲーム機器の発展により、ゲーム業界からも参加。そして近年、各映画会社が新作映画のPRの場として活用し出すと、その流れを受けTVドラマも進出するようになった。秋から始まる新シリーズ&新シーズンのパイロット版の上映会やパネル、サイン会なども行われ、ファン垂涎のPRグッズのバッグや小物などを配っている。しかも、映画・TVともに、イベントを行う作品ジャンルもバラエティーに富むようになり、SF、オタクのイメージが強いコミコンにあって、「え、そんな作品もやるの?」というようなものさえ出てきた。今年のその最たるモノがミュージカル・コメディドラマ『Glee』だった。

Comicom アメコミジャンルのファン層の拡大に合わせ、映画やTVドラマのPRの場と化したことにより、入場者数も激増したコミコン。今年は、12万5000人の人出になっていると報じられた。会場内は日曜の竹下通りか武道館コンサート後の九段下駅よろしく、歩くのもかなり大変。しかも、パネルが見たいなら、早朝から並ばなければいけない。場合によっては、前日から泊まり込みをするファンもいるほどだ 。例えば、午前中は大ホールでのパネルを見て、午後は中ホールでのパネルを見たい場合、早朝から並んで大ホールに入り、中ホールの見たいイベントが始まる2~3時間前に入場者用の列に並ばないとホール内に入れない!な状態。
基本はファンの集いなので、プレス用に特別アクセスはなく、「これ、記事に書いたら面白そう」なパネルも、2~3時間待ちとなると並ぶことができなければ完全にムリ!なのである。

Trueblood_2 そんなプレスとしての愚痴はさておき、今年もTVドラマのPRの場と化したコミコン。昨年は、『24-TWENTY FOUR-』や『LOST』で盛り上がったが、今年は、大ヒット映画&ドラマのリメイク『Nikita』のパイロット版のプレミア上映とパネル、今やアメリカNo.1人気ドラマ『True Blood』のパネル、そして、勢いを増すケーブル局Showtimeの人気4作品(『デクスター~警察官は殺人鬼』『Weeds~ママの秘密』『Californication』『Nurse Jackie』)の出演者とクリエイターが一堂に会した「アンチヒーローたちとのおしゃべり」と題したパネルなどが注目を集めた。

弁当持参で強硬時間割の取材をこなさなければいけないコミコンは、我々ジャーナリストにとっては地獄の日々だが、出演者とファンは違うようだ。ファンと直接交流でき、彼らの熱い気持ちを直に感じることができる出演者は、仕事への意欲をさらに高めるようだし、お気に入りの俳優の素顔がのぞけるファンは、作品への愛をさらに募らせる。きっと来年も、さまざまなTVドラマのイベントが行われるだろう。日本からも繰り出してみる?

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2010.07.14

『ザ・パシフィック/The Pacific』で考える 米TVドラマが描く戦争

日本でも『The Pacific』の放送が7月18日から始まる。米では今年3~4月に放送されたばかりの、太平洋における日米の激戦(ホントのホントに激しい戦い)を描いた全10話のミニシリーズだ。映画『硫黄島からの手紙』と同じテーマなので、見てみたいと思う日本人も多いと思う。それに、沖縄での日米決戦を描いている数少ない米作品でもある。

『The Pacific』は第二次世界大戦の話だけれど、それ以降もずっとアメリカは世界のどこかで戦争を続けている。そんな国だから、TVドラマにも頻繁に戦争、軍隊が登場する。

古くは『M*A*S*H』(最終回は米TV史上最高の視聴率)、『コンバット!』(ヨーロッパ戦線が舞台)、『チャイナ・ビーチ』(ダナ・デラニー、マージ・ヘルゲンバーガーをスターに押し上げた)などがある。とはいっても、連続ドラマでは戦争がテーマというのは少なくて、これらの作品もむしろ戦場がテーマと言った方が良いかもしれない。ミニシリーズなら、戦争そのものを描いた『バンド・オブ・ブラザース』や『ジェネレーション・キル 兵士たちのイラク戦争』がある。傑作と言われるこの2作でも、ドンパチに興奮しない女性の中には、戦闘シーンは苦手に思う人もいるだろう。戦争そのものを描くのは、製作費がかかるわりに、爆発的な人気とはなりにくいのだ。むしろ『バンド~』のように、最初に放送されてから10年たった今も色あせることなく、繰り返し再放送されるのが特徴。過去の戦争を風化させないという意識もあるのだろう、『The Pacific』も同じ運命をたどるのではないかと思う。

戦場が舞台になり損ねた(!)連続ドラマには、『グレイズ・アナトミー』の脚本と製作総指揮を務めるションダ・ライムズの作品がある。ライムズは『グレイズ~』を書く前に、戦争の女性従軍記者たちのドラマを書いていたそうだ。結局、日の目を見ることはなかったけれど、これが評価されて『グレイズ~』を書くことになった。戦場といい、病院といい、つくづくライムズは、生死をかけた極限の状態での人間模様、恋模様が好きなんだと思う。

その『グレイズ~』にイラク帰りのオーウェン(ケビン・マッキッド)が登場しているように、今のアメリカのTVドラマにはたくさんの戦争帰りが登場する。同じく病院ものでは『Mercy』の主人公もイラク帰りの衛生兵だったし、『ブラザーズ&シスターズ』のジャスティン(デイブ・アナブル)はアフガニスタン帰りだ。彼らは戦争のトラウマから、社会に適合することに苦労しており、戦争がいかに人格にダメージを与えるかを示唆しているのだろう。ハリウッドは、「戦場の兵士たちには最大限のリスペクトを送るが、戦争には反対」という姿勢でほぼ一致するのではないかと思う。

元兵士たちが主人公のドラマも人気がある。全米視聴率ナンバーワン・ドラマ『NCIS~ネイビー犯罪捜査班』、そのスピンオフ『NCIS:Los Angeles』も米で特に高い年齢層に人気だ。この2つのドラマは戦争や軍隊というよりも、むしろ犯罪解決ドラマ。主人公たちが規律厳しい軍人生活を送ってきたことで、身体だけでなく精神面も鍛え上げられたキャラに描かれていることも、歳を取った視聴者に愛される理由の一つであろう。

鍛えられた軍人と言えば、『ザ・ユニット 米軍極秘部隊』を忘れてはならない。戦争シーンはなかったけれど、奥さんや子どもも含めて“軍人たるもの”を描いたドラマだった。2006年3月からの放送だったけれど、2001年の米同時多発テロ(セプテンバー・イレブンス)後の愛国心の高揚、そして2003年のジェシカ・リンチ救出作戦など特殊部隊の活躍が企画の背景にあったことは間違いない。“ザ・ユニット”は軍隊というより、テロ対策のスパイ/暗殺部隊といった感じ。やはり米のTV界にとって、戦争を好意的に描くのは難しくても、軍人たち(特にエリートの)は今も好ましいキャラクターなのだ。

最後に『The Pacific』についてもう一度。主人公を含め、登場人物はほぼ若い兵士たち。描かれている言動や発言に身勝手と思えるところがあるかもしれない。けれど身勝手は兵士じゃなくても、若さの特権。明日があるかも分からない戦場でその時を懸命に生きていた、彼らへの愛情あふれる弁護が感じられる。

では日本兵に対してはどうだろう? 『The Pacific』は主人公の米軍兵士たちの回想記を元にしているのだから、最初から敵国日本にポジティブな感情を持てということ自体無理な話だ(持っていたら、ウソっぱちの作品になっていたはず)。だから最初だけ見て感想を語ることはやめた方がいいかもしれない。なぜなら、全10話を通した主人公たちの心の変化こそが、このドラマの最も描きたかった部分だからだ。私は最後までこの作品を見て、製作陣が日本兵にも軍人としての敬意を払ってくれたと感じ感謝している。

思いつく限りの戦争・軍人ドラマを挙げてみたけれど、『The Pacific』が日本人にとって、戦争を描いたもっとも重要なTV作品になることは間違いない。アメリカでしか描けない超大作。そのアメリカでも、このスケールで太平洋戦争が描かれることは二度とはないだろう。


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DVDリスト

  • 『24 -TWENTY FOUR- ファイナル・シーズン』
  • 『フレンズ<ファースト・シーズン>』
  • 『プリズン・ブレイク シーズン1』
  • 『BONES -骨は語る- シ-ズン3』
  • 『Dr. HOUSE/ドクター・ハウス シーズン4』